品質管理の世界には、いくつかの国際規格がありますが、特に有名なのが「ISO9001」と「ISO13485」です。この二つの規格は、どちらも製品やサービスの品質を高めるためのものですが、実はそれぞれ得意な分野が違います。今回は、この「iso9001 と iso13485 の 違い」を分かりやすく、そしてなぜその違いが重要なのかを、皆さんと一緒に探っていきましょう。
根本的な目的と対象領域における iso9001 と iso13485 の 違い
まず、一番の違いは、それぞれの規格が目指す「何」と「誰」に向けられているか、という点です。ISO9001は、どんな業界のどんな企業でも使える、いわば「品質管理の基本のキ」のような規格です。お客様に満足してもらえる製品やサービスを、継続的に提供できるようにするための仕組みを作ることが目的です。
一方、ISO13485は、医療機器に特化した品質管理規格です。医療機器は、人の命や健康に関わるものなので、その品質には極めて高いレベルが求められます。そのため、ISO9001よりもさらに厳格で、安全性を重視した要求事項が含まれています。つまり、 ISO13485の取得は、医療機器メーカーにとって、製品の安全性と信頼性を証明する重要なステップ となるのです。
具体的に、ISO9001がカバーする範囲とISO13485がカバーする範囲を比較すると、以下のようになります。
- ISO9001: あらゆる産業、あらゆる製品・サービス
- ISO13485: 医療機器の設計、製造、販売、保守など、医療機器に関連する全てのプロセス
リスク管理における iso9001 と iso13485 の 違い
品質管理において、リスク管理はとても大切です。問題が起きる前に、そうならないように手を打っておくことですよね。ISO9001でもリスク管理は重視されていますが、ISO13485では、その重要性がさらに高まっています。
ISO13485では、製品のライフサイクル全体を通じて、潜在的なリスクを特定し、評価し、管理することがより詳細に求められます。これは、医療機器の不具合が、患者さんに重大な影響を与える可能性があるからです。例えば、次のような項目が具体的に要求されます。
- ハザード分析(危険性の分析)
- リスク低減措置の実施
- リスク管理計画の策定
ISO9001では、「リスク及び機会への取組み」として、組織の目的に影響を与える可能性のあるリスクと機会を考慮することが求められますが、ISO13485ほど具体的かつ詳細な要求はされていません。
文書化の要求事項における iso9001 と iso13485 の 違い
品質管理には、「記録を残すこと」が非常に重要です。何か問題が起きた時に、原因を特定したり、改善策を考えたりするために、過去の記録が役立ちます。「証拠」となるわけですね。ISO9001でも文書化は大切ですが、ISO13485では、その要求がさらに厳しくなっています。
ISO13485では、製品のトレーサビリティ(追跡可能性)を確保するために、原材料の調達から製品の出荷、そして使用後の保守に至るまで、詳細な記録の作成と維持が義務付けられています。これは、万が一、医療機器に不具合が発生した場合に、迅速に原因を特定し、影響を受けた製品を特定して回収できるようにするためです。
具体的に、ISO13485で要求される文書化の例をいくつか挙げると、
- 製造記録
- 設計・開発記録
- 苦情処理記録
- 出荷記録
などが挙げられます。ISO9001に比べて、より詳細な証跡(せき=痕跡)を残すことが求められるのです。
規制要求事項への対応における iso9001 と iso13485 の 違い
医療機器は、国や地域によって定められた様々な法律や規制(ルール)を守らなければなりません。ISO13485は、こうした医療機器に関する規制要求事項への適合を前提とした規格となっています。そのため、規格の中に、既存の規制要求事項を考慮した項目が多く含まれています。
例えば、医療機器の製造販売承認を受けるためには、各国の薬事規制当局が定める基準を満たす必要があります。ISO13485の認証を取得していることは、これらの規制要求事項を満たしていることの証となり、承認プロセスをスムーズに進める助けとなります。ISO9001も法規制の遵守を求めていますが、ISO13485は、より具体的に医療機器特有の規制への対応を視野に入れています。
製品の安全性への焦点における iso9001 と iso13485 の 違い
やはり、医療機器にとって最も重要なのは「安全性」です。ISO13485は、この安全性に非常に強い焦点を当てています。製品が設計段階から製造、そして使用されるまでの全ての段階で、安全性を最優先にするための要求事項が盛り込まれています。
具体的には、次のような点がISO13485で特に重視されます。
- 設計・開発管理: 医療機器の安全性を確保するための設計・開発プロセス
- バリデーション(妥当性確認): 製造プロセスが意図した結果を一貫して生み出すことを確認
- 市販後監視: 製品が市場に出てからも安全に使われているかを確認し、問題があれば迅速に対応
ISO9001も製品の品質向上を目指しますが、ISO13485ほど直接的に、そして厳格に「安全性」という言葉にフォーカスしているわけではありません。
適用範囲の厳格さにおける iso9001 と iso13485 の 違い
先ほども少し触れましたが、適用範囲の厳格さも大きな違いです。ISO9001は、非常に広範な産業や組織を対象としていますが、ISO13485は、医療機器という特定の分野に絞られています。そのため、要求される内容も、医療機器の特性に合わせてより専門的かつ詳細になっています。
例えば、ISO13485では、
- 滅菌プロセス
- 製造環境の管理
- 特殊な清浄度
といった、医療機器特有の要件が詳細に規定されています。これは、一般的な製品とは比べ物にならないほど高いレベルの管理が求められるためです。
どちらの規格も、品質管理システムを構築するためのフレームワークを提供しますが、ISO13485は、医療機器の安全性と有効性を保証するために、より特化した、より厳しい要求事項を含んでいると言えます。
まとめると、ISO9001は「どんな業界でも使える品質管理の基本」、ISO13485は「医療機器に特化した、より高度で安全性を重視した品質管理」と言えます。どちらの規格も、企業が顧客に信頼される製品やサービスを提供するために不可欠ですが、それぞれの目的と対象を理解することが、適切な品質管理システムを構築する上で非常に重要です。