Intel Core i7-3770Kとi7-3770、どちらもSandy Bridge世代の高性能CPUですが、実はいくつかの重要な違いがあります。この二つのCPUの主な違いを理解することは、PC選びやアップグレードの際に非常に役立ちます。この記事では、i7 3770k と i7 3770 の 違いを分かりやすく解説していきます。
クロック周波数とオーバークロックの可能性
i7-3770Kとi7-3770の最も顕著な違いは、その「K」の有無が示すように、オーバークロックへの対応です。3770Kは「K」モデルであるため、通常よりも高いクロック周波数で動作させることが可能であり、さらに自分でCPUの性能を引き上げることができる「オーバークロック」に対応しています。一方、3770はオーバークロックに対応しておらず、定格のクロック周波数でのみ動作します。 このオーバークロックの可否は、PCのパフォーマンスを最大限に引き出したいユーザーにとって、非常に重要なポイントとなります。
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i7-3770K:
- ベースクロック: 3.5GHz
- ターボブースト時最大クロック: 3.9GHz
- オーバークロック可能
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i7-3770:
- ベースクロック: 3.4GHz
- ターボブースト時最大クロック: 3.9GHz
- オーバークロック不可能
この表からもわかるように、ベースクロックでは3770Kが0.1GHzほど高いですが、ターボブースト時の最大クロックは同じです。しかし、3770Kはマザーボードの選択肢を広げ、適切な冷却環境を整えれば、さらに高いクロック周波数での安定動作が期待できます。
オーバークロックを行うことで、ゲームのフレームレートが向上したり、動画編集などの処理速度が速くなったりと、体感できるほどのパフォーマンスアップが見込めます。ただし、オーバークロックには専用の冷却装置(CPUクーラー)や、オーバークロックに対応したマザーボードが必要となるため、追加のコストや知識が必要になります。
内蔵グラフィックスの違い
CPUには、映像を出力するための内蔵グラフィックス機能が搭載されている場合があります。i7-3770Kとi7-3770でも、この内蔵グラフィックスに違いが見られます。
| CPU | 内蔵グラフィックス | グラフィックス周波数 |
|---|---|---|
| i7-3770K | Intel HD Graphics 4000 | 650MHz (最大1.15GHz) |
| i7-3770 | Intel HD Graphics 4000 | 650MHz (最大1.1GHz) |
どちらも「Intel HD Graphics 4000」という同じ世代の内蔵グラフィックスですが、i7-3770Kの方がわずかに高い最大周波数で動作します。この差は、軽めのゲームや動画再生においては、ごくわずかなパフォーマンスの違いをもたらす可能性があります。
しかし、どちらの内蔵グラフィックスも、最新の3Dゲームを高画質でプレイするには力不足です。もしゲームやグラフィック性能を重視するなら、別途高性能なグラフィックボード(GPU)の搭載が必須となります。内蔵グラフィックスは、あくまで一般的なデスクトップ作業や動画視聴などで活躍するものです。
この内蔵グラフィックスのわずかな違いは、CPU単体でPCを組む場合や、グラフィックボードなしで運用する場合に考慮する点ですが、多くの場合、外付けのグラフィックボードの性能の方が圧倒的に重要になります。
消費電力と発熱
CPUの性能が上がると、それに伴って消費電力や発熱も増加する傾向があります。i7-3770Kとi7-3770の消費電力と発熱についても見ていきましょう。
- TDP (Thermal Design Power): 両CPUともTDPは95Wで、これはCPUが標準的な負荷で動作する際に発生する熱量の目安です。
- オーバークロック時の消費電力: i7-3770Kをオーバークロックした場合、消費電力は定格時よりも大幅に増加します。高性能な冷却システムが不可欠となる理由の一つです。
- 発熱対策: オーバークロックをしないのであれば、3770Kも3770も、CPUクーラーの性能によっては比較的静かに動作させることが可能です。しかし、3770Kをフル活用したい場合は、より強力なCPUクーラーの導入を検討すべきでしょう。
消費電力が増えれば、それだけ電気代も高くなりますし、発熱が大きくなればPC内部の温度も上昇します。PCの寿命や安定動作のためにも、適切な冷却は非常に重要です。
特に、夏場などの気温が高い時期は、CPUの冷却が難しくなります。オーバークロックを行う場合は、CPUクーラーだけでなく、PCケースのエアフロー(空気の流れ)も考慮した構成にすることが大切です。
対応マザーボード
CPUを選ぶ上で、対応するマザーボードも重要な要素です。i7-3770Kとi7-3770は、どちらも同じLGA 1155ソケットに対応していますが、マザーボードのチップセットによって、オーバークロックの可否などが変わってきます。
i7-3770Kのオーバークロック性能を最大限に引き出すためには、Z77やZ68といった「オーバークロック対応チップセット」を搭載したマザーボードを選ぶ必要があります。これらのチップセットは、CPUの倍率変更などを可能にする機能を持っています。
一方、i7-3770は、オーバークロック非対応のチップセット(H77やB75など)でも問題なく動作します。したがって、コストを抑えたい場合や、オーバークロックをしないのであれば、より安価なチップセットのマザーボードを選択することも可能です。
CPUとマザーボードの組み合わせは、PC全体の性能や拡張性を左右する重要な要素です。ご自身のPCの使い方に合わせて、最適なマザーボードを選ぶようにしましょう。
価格と入手性
現在ではどちらのCPUも旧世代となりますが、中古市場での価格や入手性にも違いがあります。
- i7-3770K: オーバークロック対応という特性から、PC愛好家やゲーマーに人気があり、中古市場でも比較的高値で取引される傾向があります。
- i7-3770: オーバークロック非対応のため、より手頃な価格で入手できることが多いです。
CPUの価格は、その時の需要や供給状況によって変動します。PCを組む予算や、求める性能に合わせて、どちらのCPUがよりコストパフォーマンスに優れているかを見極めることが重要です。
また、新品での入手は難しくなってきており、中古品が主な入手手段となるでしょう。中古品を購入する際は、出品者の評価や商品の状態をよく確認し、信頼できるショップや個人から購入することをおすすめします。
まとめ:どちらを選ぶべきか?
i7-3770Kとi7-3770の主な違いは、オーバークロックの可否、それに伴うクロック周波数のポテンシャル、そしてわずかな内蔵グラフィックスの性能差です。
もしあなたが、PCの性能を限界まで引き出してみたい、ゲームのフレームレートを少しでも上げたい、といった「こだわり」があるなら、i7-3770Kを選ぶ価値はあります。ただし、そのためにはオーバークロック対応マザーボードや、強力なCPUクーラーといった追加投資が必要になります。
一方、普段使いや、静かで安定した動作を求めるのであれば、i7-3770で十分な性能を発揮します。こちらも十分高性能なCPUですので、多くの用途で満足のいくパフォーマンスが得られるでしょう。
最終的にどちらのCPUを選ぶかは、あなたのPCに求めるもの、そして予算によって決まります。これらの違いを理解して、最適なCPUを選んでください。