「目がまっすぐじゃない」という状態について、耳にしたことがあるかもしれません。実は、目がまっすぐでない状態には「斜視」と「斜位」という、似ているようで全く違うものがあります。この二つの違いを理解することは、目の健康について知る上でとても大切です。今回は、この 斜視と斜位の違い を分かりやすく解説していきます。
見え方の違いが鍵!斜視と斜位を区別するポイント
まず、斜視と斜位の最も大きな違いは、「常に目がずれているかどうか」という点にあります。斜視は、片方の目、あるいは両方の目が常にまっすぐ前を向いておらず、ずれてしまっている状態です。例えば、テレビを見ているときも、本を読んでいるときも、常にどこか別の方向を向いてしまっているのが斜視です。
一方、斜位は、普段は両方の目がまっすぐ前を向いているのですが、片方の目を隠したり、疲れたり、ぼーっとしているときに、目がずれてしまう状態を指します。つまり、 普段は両目が協力して物を見ているけれど、協力が解けるとずれてしまうのが斜位 なのです。この、普段はまっすぐ見えているかどうかが、斜視と斜位の大きな違いと言えるでしょう。
- 斜視: 常に目がずれている
- 斜位: 普段はまっすぐだが、条件によってずれる
この違いを理解するために、簡単な例を考えてみましょう。
- 疲れたとき、友達と話しているのに目が泳いでしまう…これは斜位の可能性が高いです。
- いつも斜め下を見ているような印象を与える…これは斜視の可能性が考えられます。
原因から見る、斜視と斜位のメカニズム
斜視と斜位の原因は、それぞれ異なります。斜視の原因としては、目の筋肉のバランスが悪かったり、遠視や近視などの屈折異常が関係していることがあります。また、まれに脳の病気などが原因で起こることもあります。
斜位の原因は、主に目の筋肉の疲れや、両方の目を協力させて物を見る力(輻輳力:ふくそうりょく)の弱さが考えられます。例えば、長時間のスマホやパソコンの使用で目が疲れているときなどは、斜位が現れやすくなります。
| 状態 | 主な原因 |
|---|---|
| 斜視 | 目の筋肉のバランス異常、屈折異常、まれに脳の病気 |
| 斜位 | 目の筋肉の疲れ、輻輳力の弱さ |
目の発達段階にある子供の視力は、まだ安定していないため、斜視や斜位が起こりやすい 時期でもあります。早期発見・早期治療が重要になるのは、このためです。
視力への影響:見え方の質はどう変わる?
斜視と斜位では、視力への影響も異なります。斜視の場合、常に片方の目がずれているため、脳はそのずれている方の目からの情報を無視してしまうことがあります。これを「弱視」といいます。弱視になってしまうと、たとえメガネをかけても視力が十分に回復しなくなってしまうことがあります。
一方、斜位の場合、普段は両方の目が協力して物を見ているため、すぐに視力に影響が出ることは少ないです。しかし、疲れが溜まると、物が二重に見えたり(複視:ふくし)、頭痛や肩こりなどの症状が現れることがあります。
- 斜視: 弱視につながる可能性がある
- 斜位: 疲れやすい、頭痛などの症状が出ることがある
「両目で物を見る」という行為は、奥行きを感じたり、遠近感を掴んだりするために不可欠です。 斜視や斜位は、この両眼視機能を妨げる可能性 があります。
日常生活でのサイン:どんな時に気をつけるべき?
斜視のサインとしては、以下のようなものが挙げられます。
- 片方の目が常に内側、外側、上、下などを向いている。
- 物をみるときに、首をかしげたり、顔を傾けたりする。
- 片方の目を隠すと、顔の向きが変わる。
斜位のサインとしては、以下のようなものが考えられます。
- 読書やパソコン作業などで目が疲れやすい。
- 急に物が二重に見えることがある。
- 集中力が続かない、ぼーっとしてしまうことが多い。
- 頭痛や肩こりを感じやすい。
「いつものことだから」と諦めずに、これらのサインに気づいたら、専門家への相談を検討 しましょう。
見逃さないで!子供の斜視・斜位の兆候
子供の目は、大人以上に発達途上にあります。そのため、親御さんが子供の目の様子を注意深く観察することが大切です。子供の斜視・斜位の兆候としては、以下のようなものが考えられます。
- 写真で撮ったときに、片方の目が赤く写りやすい(内斜視の可能性)。
- テレビを見るときに、顔を近づけすぎたり、画面に顔を近づけすぎたりする。
- 片方の目を隠すと嫌がったり、顔をそらしたりする。
- よく転んだり、つまずいたりする(距離感が掴みにくいため)。
子供の健やかな成長のためには、早期に発見し、適切な対応をとることが何よりも重要 です。乳幼児健診などで目の検査を受ける機会があれば、必ず受けるようにしましょう。
治療法は?斜視と斜位の向き合い方
斜視と斜位の治療法は、その原因や状態によって異なります。斜視の治療法としては、以下のようなものがあります。
- 眼鏡やコンタクトレンズ: 屈折異常が原因の場合
- 視能訓練: 目の筋肉を鍛えたり、両眼視機能を高めたりする
- 手術: 目の筋肉のバランスを整える
斜位の治療法としては、まず目の疲れを軽減することが大切です。
- 十分な休息をとる。
- パソコンやスマホの使用時間を制限する。
- 必要に応じて、視能訓練や、両眼視機能を助けるための眼鏡を作成する。
どのような治療法が適しているかは、個々の状態によって大きく異なるため、必ず眼科医の診断を受けてください。
正確な診断と適切な治療を受けることで、斜視や斜位による見えにくさや不快な症状を改善し、より快適な視生活を送ることができます。もし、ご自身やお子さんの目に気になる点があれば、迷わず眼科を受診しましょう。