「社会保険」と「社会保障」、この二つの言葉、似ているようで実は少し意味が違うんです。なんとなく「みんなのお金」というイメージはあっても、具体的に何がどう違うのか、はっきり説明できますか？今回は、この「社会保険 と 社会 保障 の 違い」を、高校生の皆さんにもわかるように、分かりやすく解説していきますね。
社会保険と社会保障、その定義と範囲の違い
まずは、それぞれの言葉の定義から見ていきましょう。「社会保険」とは、病気やケガ、失業、高齢などで働けなくなったときに、みんなが安心して暮らせるように、あらかじめ保険料を出し合って、いざという時に給付を受けられる「保険制度」のことです。例えるなら、みんなで少しずつお金を出し合って、万が一の時のためのお守りを買うようなイメージですね。 この「みんなで助け合う」という考え方が、社会保険のとても大切なポイントです。
一方、「社会保障」は、もっと広い概念です。社会保険はもちろん、生活に困っている人を助けるための「生活保護」、高齢者や障害のある方を支援する制度、子育て支援など、国民一人ひとりの生活を社会全体で支えるための様々な制度やサービスをひっくるめたものです。つまり、社会保険は社会保障という大きな箱の中に収められている、と言えます。
ここで、それぞれの範囲を整理してみましょう。
- 社会保険 ：医療保険、年金保険、雇用保険、労災保険、介護保険
- 社会保障 ：社会保険 + 生活保護、児童手当、障害者支援、母子家庭支援など
社会保険を支える仕組み：保険料と給付
社会保険がどのように成り立っているのか、その仕組みを見ていきましょう。社会保険の基本的な考え方は、「保険料を納めることで、万が一の時に給付を受ける権利を得る」というものです。この保険料は、加入している人（被保険者）や、その雇用主が負担します。
例えば、医療保険では、毎月お給料から一定額の保険料が引かれますよね。これは、病気やケガで病院にかかった時に、医療費の一部を保険でまかなってもらうためのものです。もし保険料を納めていなければ、高額な医療費を全額自己負担しなければならなくなり、生活が困窮してしまう可能性があります。
社会保険の種類ごとに、主な負担者と給付内容を簡単な表にしてみました。
| 社会保険の種類 | 主な負担者 | 主な給付内容 |
|---|---|---|
| 医療保険 | 被保険者、雇用主 | 病気・ケガの治療費一部負担 |
| 年金保険 | 被保険者、雇用主 | 老齢、障害、死亡時の年金給付 |
| 雇用保険 | 被保険者、雇用主 | 失業時の失業手当、育児休業給付金など |
このように、社会保険は、みんなが保険料を出し合うことで、それぞれの生活リスクに備えるための仕組みなのです。
社会保障：より広い安心の網
社会保障は、社会保険だけではカバーしきれない、様々な状況にある人々を支えるための制度です。「社会保険」が「保険」という仕組みで、リスクに備える側面が強いのに対し、「社会保障」は、より広く、国民の生活の安定や福祉の増進を目的としています。
具体的に、社会保障にはどのようなものがあるのでしょうか？
- 公的扶助 ：生活保護制度など、病気や障害、失業などで収入がなく、生活が困難な場合に、最低限度の生活を保障する制度です。
- 社会福祉 ：高齢者福祉、障害者福祉、児童福祉など、特定のニーズを持つ人々への支援です。例えば、特別養護老人ホームや、障害者向けの就労支援などが含まれます。
- 公衆衛生・医療 ：感染症対策や、健康増進のための施策などが含まれます。
これらの制度は、税金などを財源として運営されている場合が多く、社会保険のように直接的な保険料の負担と給付の関係が明確でないこともあります。
社会保障は、一人ひとりが抱える困難に対して、社会全体で「困っている人を放っておかない」という温かい視点を持った制度と言えるでしょう。
社会保険と社会保障の連携
社会保険と社会保障は、それぞれ独立した制度のように見えますが、実は密接に連携しています。社会保険で十分な保障が得られない場合や、社会保険の適用外となるケースで、社会保障制度がセーフティネットの役割を果たします。
例えば、病気で長期にわたり働けなくなった場合、まず医療保険で医療費の負担が軽減され、雇用保険で一定期間の失業手当が受けられるかもしれません。それでも生活が困難になった場合に、最終的に生活保護などの社会保障制度が、最低限の生活を支えることになるのです。
このように、社会保険と社会保障が手を取り合うことで、国民はより多岐にわたるリスクから守られ、安心して暮らすことができるようになっています。
各制度の財源：どこからお金が来てるの？
社会保険と社会保障を支える財源は、それぞれ異なります。まず、社会保険の主な財源は、先ほども触れた「保険料」です。被保険者や雇用主が納める保険料が、給付の原資となります。
一方、社会保障、特に公的扶助や社会福祉など、税金を財源としているものが多くあります。これは、社会全体で支え合うという理念に基づいているからです。
財源の違いをまとめると、以下のようになります。
- 社会保険 ：保険料（被保険者・雇用主負担）
- 社会保障 ：税金（国・地方自治体）、保険料（一部）
ただし、年金制度のように、保険料だけでなく、国税（税金）も財源の一部となっている制度もあります。このように、両者の財源は完全に分かれているわけではなく、重なり合う部分もあるのです。
社会保険と社会保障の目的：目指す社会の姿
社会保険と社会保障の目的を改めて確認してみましょう。社会保険の最も重要な目的は、「国民の生活の安定と向上」です。病気、失業、老齢といった、誰もが直面する可能性のあるリスクに対して、経済的な不安を軽減し、安心して生活を送れるようにすることを目指しています。
一方、社会保障の目的は、より広範です。国民一人ひとりが、その生涯を通じて、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を保障すること。そして、社会全体で格差を是正し、誰もが安心して暮らせる社会を築くことを目指しています。これには、社会保険の機能はもちろん、貧困、障害、子育てといった様々な課題への対応が含まれます。
つまり、社会保険は「リスクへの備え」という側面が強く、社会保障は「生活の保障と福祉の増進」という、より包括的な目的を持っていると言えます。
まとめ：知っておくことの意義
これまで「社会保険 と 社会 保障 の 違い」について、その定義、仕組み、財源、目的などを解説してきました。社会保険は、みんなで保険料を出し合って、万が一の時に備える「保険」の仕組み。社会保障は、社会保険も含む、国民の生活を社会全体で支える、より大きな枠組み。
これらの制度について理解することは、自分自身の権利や義務を知る上で、そして、より良い社会を築いていくために、とても大切です。これからも、こうした社会の仕組みに目を向けて、一緒に学んでいきましょう。