「顛末書」と「始末書」、どちらも何か問題が起きた時に書く書類ですが、実はその目的や書き方に大きな違いがあります。この二つの書類の 違い をしっかり理解することで、いざという時に適切な対応ができるようになります。今回は、この「顛末書と始末書の違い」について、分かりやすく解説していきます。
目的から見る「顛末書」と「始末書」の役割
まず、一番大きな違いはその「目的」にあります。顛末書は、起きた出来事の「一部始終」を客観的に記録することが目的です。誰が、いつ、どこで、何をして、どうなったのか、という事実をありのままに伝えるための書類です。 事態の経緯を正確に把握し、今後の対策を立てる上で非常に重要 となります。
一方、始末書は、自分が犯したミスや不始末について、その責任を認め、反省の意を示し、二度と同じ過ちを繰り返さないことを誓うための書類です。つまり、自分の行動に対する「謝罪」と「改善」の意思表示が中心となります。報告義務や責任追及といった側面が強いのが特徴です。
まとめると、
- 顛末書: 事実の記録・報告(客観性重視)
- 始末書: 反省・謝罪・誓約(主観性・責任重視)
という違いがあります。
「顛末書」に書くべきこととは?
顛末書を書く上で大切なのは、感情を交えず、事実を正確に記述することです。具体的には、以下の要素を盛り込むのが一般的です。
- 発生日時: いつ問題が起きたのか
- 発生場所: どこで問題が起きたのか
- 関係者: 誰が関わっていたのか(役職、氏名など)
- 事象の概要: 何が起きたのか(具体的かつ客観的に)
- 経緯: 問題発生に至るまでの流れ
- 結果: 問題によってどのような状況になったのか
- 対応: 問題発生後、どのような対応をとったのか
- 今後の対策: 再発防止のために、どのような対策を講じるのか
例えば、遅刻をしてしまった場合、顛末書では「〇月〇日 〇時〇分、〇〇(部署名)の〇〇(氏名)は、公共交通機関の遅延により、〇時〇分に出社した。これにより、担当していた〇〇の業務開始が〇分遅延した。原因は〇〇(遅延理由)であり、今後は余裕を持った行動を心がける。」のように、事実を淡々と記述します。
以下は、顛末書に含めるべき項目の例です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 件名 | 〇〇(出来事)に関する顛末書 |
| 提出日 | 〇年〇月〇日 |
| 提出者 | 所属部署・氏名 |
| 本文 | (上記1~8の要素を記述) |
「始末書」で伝えるべきこと
始末書は、自分の非を認め、反省の意を伝えることが最優先です。そのため、以下の要素を中心に記述します。
- 〇〇(出来事)に関するお詫び
- 自身の行為に対する責任の所在の明確化
- 起きてしまったことへの反省の弁
- 二度とこのような過ちを繰り返さないという決意
- 今後の改善策(具体的に)
- 結びの言葉
例えば、顧客に失礼な対応をしてしまった場合、始末書では「〇月〇日、〇〇様に対し、私の不注意から大変失礼な言動をとってしまいました。〇〇様、そして〇〇(会社名)にご迷惑をおかけしましたことを、心よりお詫び申し上げます。今回の件を深く反省し、今後はより一層、言葉遣いや態度に注意を払い、お客様に誠意をもって対応していくことを誓います。」のように、謝罪と反省の気持ちを強く打ち出します。
始末書を書く際のポイントは、
- 事実を正直に認める
- 感情的にならず、冷静に反省の意を伝える
- 具体的な改善策を示す
ことです。
「顛末書」の書き出し方
顛末書は、まず出来事の概要を簡潔に述べることから始めます。「〇月〇日、〇〇(場所)において、〇〇(出来事)が発生いたしました。」といった形で、いつ、どこで、何が起きたのかを明記します。その後、事実関係を順序立てて詳細に記述していきます。
「始末書」の書き出し方
始末書は、まず明確な謝罪の言葉から入るのが一般的です。「この度は、〇〇(自分の過失)により、〇〇(関係者)にご迷惑をおかけしましたことを、深くお詫び申し上げます。」のように、誰に対して、何に対して謝罪するのかをはっきりと示します。その後に、自分の非を認め、反省の意を述べていきます。
「顛末書」で使われる表現
顛末書では、客観的で事実に基づいた表現が求められます。「~した」「~であった」「~により」といった、断定的な表現や事実を伝えるための表現が中心となります。感情的な言葉や推測は避け、誰が読んでも同じように理解できるような、正確な記述を心がけましょう。
「始末書」で使われる表現
始末書では、反省の意や謝罪の気持ちを伝えるための表現が重要です。「深く反省しております」「申し訳ございません」「二度とこのようなことのないよう~いたします」といった、自分の非を認め、改善していく姿勢を示す言葉遣いが使われます。ただし、過度にへりくだりすぎる必要はありません。誠実さが伝わるように、率直な言葉で表現することが大切です。
「顛末書」の例文(遅刻の場合)
以下は、遅刻をしてしまった場合の顛末書の簡単な例文です。
- 件名: 遅刻に関する顛末書
- 提出日: 2023年10月27日
- 提出者: 営業部 山田太郎
- 本文:
- 〇月〇日、私は〇時〇分に自宅を出発しましたが、利用予定だった〇〇線が人身事故のため運行停止となり、代替手段での移動に時間を要したため、出社時刻が〇時〇分となりました。
- これにより、朝礼での報告が遅れ、チームの皆様にご迷惑をおかけいたしました。
- 今後は、公共交通機関の遅延等も想定し、より一層余裕を持った行動を心がけます。
「始末書」の例文(顧客への失礼な対応の場合)
以下は、顧客に失礼な対応をしてしまった場合の始末書の簡単な例文です。
- 件名: 〇月〇日 〇〇様への対応に関する始末書
- 提出日: 2023年10月27日
- 提出者: カスタマーサポート部 佐藤花子
- 本文:
- この度は、〇月〇日、〇〇様に対し、私の不注意な言動により、大変不快な思いをさせてしまいましたことを、心よりお詫び申し上げます。
- お客様のお気持ちを十分に理解せず、一方的な対応をしてしまったことを深く反省しております。
- 今回の件を教訓とし、今後は常にお客様の立場に立った丁寧な対応を心がけ、失礼のないよう、言葉遣いや態度に十分注意いたします。
- 二度とこのような過ちを繰り返さないことを固くお誓い申し上げます。
「顛末書」と「始末書」の提出先
これらの書類の提出先は、一般的に所属する部署の上司や、問題を起こした内容によっては人事部や総務部など、会社の規定によって異なります。どちらに提出すれば良いか分からない場合は、まずは直属の上司に確認するようにしましょう。
「顛末書と始末書の違い」を理解することは、社会人として、また、組織の一員として、責任ある行動をとるために非常に大切です。いざという時に、焦らず、適切に対応できるよう、今回の解説を参考にしてみてください。