空から降ってくる冷たい粒々、霰（あられ）と雹（ひょう）。どちらも似ているようで、実はその成り立ちや大きさにははっきりとした違いがあります。この「霰 と 雹 の 違い」を理解すると、天気予報を見る目も、窓の外を眺める気持ちも、もっと豊かになるはずです。今回は、そんな身近な気象現象について、分かりやすく解説していきましょう。
粒子の大きさと形状：見た目の大きな差
霰 と 雹 の 違いを最も分かりやすく示すのは、やはりその粒子の大きさです。霰は一般的に直径5mm未満の氷の粒で、透明だったり半透明だったりします。一方、雹は直径5mm以上の氷の塊で、不透明なものが多いのが特徴です。この大きさの違いは、それぞれの生成過程と大きく関係しています。
形状にも違いが見られます。霰は、丸かったり、少し潰れたような形だったりしますが、雹は、ゴツゴツとした不規則な形をしていることが多いです。これは、生成される積乱雲の中での動きや、氷の粒が成長するスピードの違いによるものです。
この大きさの違いを把握することが、「霰 と 雹 の 違い」を理解する上で非常に重要です。
- 霰：直径5mm未満
- 雹：直径5mm以上
生成過程：積乱雲の中でのドラマ
霰 と 雹 の 違いは、その生成過程、つまり積乱雲の中でどのように作られるかにも現れます。どちらも、積乱雲の中で発生する氷の粒が成長して地上に落ちてくる現象ですが、その成長の仕方が異なります。
霰は、比較的穏やかな積乱雲の中で、水蒸気が凍ったり、小さな氷の粒がぶつかり合って成長したりしてできます。積乱雲の中を上下にあまり激しく移動せず、比較的ゆっくりと成長していくイメージです。そのため、中に空気を多く含み、軽くて透明感のある粒になりやすいのです。
一方、雹は、非常に発達した強い積乱雲の中で作られます。積乱雲の中を、強い上昇気流に乗って何度も上下に運ばれるうちに、過冷却水滴（0℃以下でも凍らない水滴）がぶつかって、氷の層がどんどん厚くなっていきます。まるで、飴玉にシロップを何度もかけながら大きくしていくようなイメージです。この過程で、中心には氷の粒があり、その周りを水滴が凍りついた層が幾重にも重なって、氷の塊が大きくなっていきます。
- 積乱雲の上部で氷の粒ができる。
- 強い上昇気流で雲の中を何度も上下する。
- 過冷却水滴が付着し、凍りつく。
- 十分な大きさと重さになると地上に落下する。
積乱雲の強さと上昇気流：成長の原動力
霰 と 雹 の 違いを分けるもう一つの大きな要因は、積乱雲の「強さ」と、その中に含まれる「上昇気流」の力です。雹ができるためには、非常に発達した、つまり「雷雲」とも呼ばれるような強い積乱雲が必要です。
強い積乱雲は、その名の通り、ものすごい上昇気流を持っています。この強い上昇気流が、氷の粒を雲の遥か上空まで運び上げ、そこで過冷却水滴と激しく衝突させることができます。この繰り返しが、雹の巨大な塊を作り上げるのです。
積乱雲の強さを表す指標として、垂直方向の雲の厚さや、内部の上昇気流の速さが挙げられます。一般的に、雹をもたらす積乱雲は、鉛直方向に非常に厚く、上空まで伸びています。
| 積乱雲の強さ | 上昇気流 | 生成される現象 |
|---|---|---|
| 穏やか | 比較的弱い | 霰 |
| 発達した（雷雲） | 非常に強い | 雹 |
被害の度合い：農作物や建物への影響
霰 と 雹 の 違いは、地上に与える被害の度合いにも大きく影響します。小さな霰であれば、ほとんど被害はありません。しかし、雹は、その大きさや落下速度から、時に深刻な被害をもたらすことがあります。
農作物にとっては、葉が傷ついたり、実が落ちてしまったりと、壊滅的な被害を与えることがあります。特に、収穫時期に近い作物は、わずかな衝撃でも商品価値が失われてしまうため、雹害は深刻な問題となります。
また、車や建物にも傷をつけたり、窓ガラスを割ったりする危険性もあります。ゴルフボール大、それ以上の大きさの雹が降ってくることもあり、そのような場合は、外出を控えるなどの注意が必要です。
- 農作物への被害：葉の損傷、落果
- 建物への被害：窓ガラスの破損、屋根への損傷
- 車への被害：ボディのへこみ、ガラスの破損
現象の発生頻度と地域：どこで起こりやすい？
霰 と 雹 の 違いは、その発生する頻度や地域にも見られます。一般的に、霰は雹よりも頻繁に観測されます。日本全国、特に春から秋にかけての積乱雲が発生しやすい時期に、比較的どこでも見られる現象と言えるでしょう。
一方、雹は、強力な積乱雲が発達しやすい地域や、夏場の不安定な気象条件下で発生することが多いです。例えば、夏場の午後、急に空が暗くなり、雷鳴とともに激しい雨とともに降ってくるのが、雹である可能性が高いです。
ただし、近年は気候変動の影響もあり、これまで雹が降りにくかった地域でも、稀に観測されるケースが増えています。
- 霰：比較的どこでも、年中（特に春〜秋）
- 雹：夏場の積乱雲が発達しやすい地域、雷雨時
天気予報での見分け方：専門家の視点
天気予報で「霰」と「雹」がどのように伝えられるか、その見分け方を知っておくと、より正確な情報を得ることができます。一般的に、天気予報では、雨や雪の予報に加えて、「みぞれ」や「あられ」といった表現が使われます。
「みぞれ」は、雨と雪が混じったもので、霰とは少し異なります。霰は、基本的には氷の粒なので、みぞれよりも冷たく、落下時の音も異なります。天気予報で「あられ」と予報されている場合は、直径5mm未満の氷の粒が降る可能性が高いと判断できます。
一方、雹については、その被害の大きさと関連して、「雷注意報」や「竜巻注意情報」など、より強い注意喚起とともに伝えられることが多いです。もし天気予報で「雹のおそれ」と聞いたら、それは非常に発達した積乱雲が近づいているサインなので、十分な警戒が必要です。
- 「あられ」予報：直径5mm未満の氷の粒
- 「雹のおそれ」：発達した積乱雲、注意が必要
まとめ：空からのサインを正しく理解しよう
霰 と 雹 の 違いについて、その大きさ、生成過程、そして地上への影響といった様々な側面から見てきました。どちらも積乱雲から降ってくる氷の粒ですが、その成り立ちと規模には明確な区別があることがお分かりいただけたかと思います。空からのこれらのサインを正しく理解することで、私たちはより安全に、そして自然の営みをより深く感じることができるでしょう。