「扶養家族(ふようかぞく)」と「扶養親族(ふようしんぞく)」、なんとなく似ているけれど、一体何が違うの? そう思っている方も多いのではないでしょうか。この二つの言葉は、税金や社会保険の話でよく出てきますが、実はそれぞれ意味するところが少し異なります。今回は、この 扶養家族 と 扶養親族 の 違い を、分かりやすく、そして詳しく解説していきます!
扶養家族と扶養親族、根本的な違いとは?
まず、一番大切なのは、「扶養家族」と「扶養親族」は、使われる場面や意味合いが少し違うということです。簡単に言うと、「扶養家族」は、生活費などを援助している相手全般を指す広い言葉。「扶養親族」は、税金計算などの際に、条件を満たすことで控除(税金が安くなること)を受けられる親族のことを指す、より専門的な言葉なのです。
この違いを理解することが、賢く税金や社会保険を活用する第一歩となります。具体的にどのような人が「扶養家族」や「扶養親族」として考えられるのか、一緒に見ていきましょう。
- 扶養家族 : 経済的に支援している人全般。血縁関係がなくても含まれることがある。
- 扶養親族 : 税法上の定義があり、一定の所得以下の親族。控除の対象となる。
このように、単に「面倒を見ている人」というだけでなく、税金計算などで「特別扱い」されるかどうか、という点が大きなポイントになってきます。
税法上の扶養親族の条件
税金の世界では、「扶養親族」と認められるためには、いくつかのクリアすべき条件があります。これが、単に「家族だから」というだけではなく、しっかりと法律で定められている部分なのです。
主な条件は以下の通りです。
- 配偶者以外の親族であること : 自分の奥さん(配偶者)は「配偶者控除」という別の制度で扱われるため、扶養親族には含まれません。
- 同居していること : 原則として、一緒に住んでいることが条件となります。ただし、病気などで一時的に別居している場合などは認められることもあります。
- 生活費などを負担していること : 仕送りなど、経済的な援助をしていることが必要です。
- 年間の合計所得金額が一定以下であること : これが一番重要なポイントで、扶養親族となる人の収入が一定額を超えていると、扶養親族とは認められません。
これらの条件を満たすことで、所得税や住民税が軽減される「扶養控除」という制度が利用できるようになります。
社会保険上の扶養家族の条件
税金の話とは別に、社会保険、特に健康保険や年金の話になると、「扶養家族」の考え方も少し変わってきます。こちらでも、一定の条件を満たすことで、保険料の負担が軽くなるなどのメリットがあります。
健康保険における「扶養家族」とは、主に被保険者(健康保険に加入している人)によって生計を維持されている親族のことを指します。条件としては、以下の点が挙げられます。
- 生計維持関係があること : 扶養されている人の収入よりも、扶養している人の収入が多い、または、生活費の大部分を扶養している人が負担している状態を指します。
- 日本国内に居住していること : 原則として、日本に住んでいることが条件です。
年金についても、同様に「配偶者」や「一定の所得以下の親族」が、一定の条件を満たすと「被扶養配偶者」や「第3号被保険者」として扱われることがあります。これは、国民年金保険料の納付が免除されたり、配偶者の方がご自身の年金加入期間を増やすことができたりするメリットにつながります。
所得制限についてもっと詳しく
先ほども少し触れましたが、扶養親族となるかどうかの判断で、最も重要なのが「所得制限」です。これは、扶養する側ではなく、扶養される側の収入がいくらまでならOKか、という基準です。
税法上の扶養親族の場合、その人の「合計所得金額」が、原則として 48万円以下 であることが条件となります。これは、給与収入だけなら103万円以下に相当します(給与所得控除65万円を引いた場合)。
ただし、これには例外もあります。
| 扶養親族の種類 | 所得制限の目安(年間) |
|---|---|
| 一般的な扶養親族 | 48万円以下(給与収入なら103万円以下) |
| 特定扶養親族(19歳以上23歳未満) | 48万円以下(給与収入なら103万円以下) |
| 同居していない扶養親族(親族関係など) | 48万円以下(給与収入なら103万円以下) |
また、控除額も、扶養親族の年齢によって変わってきます。例えば、19歳以上23歳未満の「特定扶養親族」の場合は、通常の扶養親族よりも控除額が大きくなります。
扶養控除の種類と金額
扶養親族がいると、税金が安くなる「扶養控除」が受けられます。この控除には、いくつかの種類があり、それぞれ控除される金額(税金が安くなる額)が異なります。
主に以下の3つの区分があります。
- 一般の扶養親族 : 16歳以上70歳未満の扶養親族。
- 特定扶養親族 : 19歳以上23歳未満の扶養親族。
- 同居老親等以外の扶養親族 : 70歳以上の扶養親族で、同居していない場合。
それぞれの控除額は、以下のようになっています。
- 一般の扶養親族: 38万円
- 特定扶養親族: 63万円
- 同居老親等以外の扶養親族: 48万円
このように、年齢や状況によって控除額が変わるため、自分がどの区分に当てはまるのかを把握しておくことが大切です。
扶養控除が適用されないケース
「扶養家族」や「扶養親族」という関係にあっても、必ずしも扶養控除が受けられるわけではありません。いくつかのケースでは、控除の対象外となることがあります。
代表的なケースは以下の通りです。
- 扶養される側の所得が基準額を超えている場合 : 先ほど説明した所得制限を超えている場合は、扶養親族とは認められません。
- 配偶者控除の対象となる配偶者 : 自分の配偶者は、扶養控除ではなく「配偶者控除」または「配偶者特別控除」で扱われます。
- 年間の合計所得金額が103万円を超える場合 : これは、給与所得者の場合、103万円の壁としてよく知られています。
- 専従者給与を受けている場合 : 事業を手伝っていて、その対価として給与(専従者給与)を受け取っている場合は、扶養親族にはなれません。
これらのケースに当てはまる場合は、扶養控除の対象外となるため、注意が必要です。
扶養家族・扶養親族の届け出について
扶養家族や扶養親族がいる場合、年末調整や確定申告などで、その事実を届け出る必要があります。これにより、扶養控除を受けることができるようになります。
会社員の場合、通常は年末調整の際に、勤務先から渡される「扶養控除等申告書」に必要事項を記入して提出します。ここには、扶養する人の氏名、生年月日、マイナンバーなどを記入します。
| 提出書類 | 提出先 | 主な内容 |
|---|---|---|
| 扶養控除等申告書 | 勤務先(年末調整時) | 扶養親族の氏名、生年月日、マイナンバー、関係性など |
自営業者の方や、年末調整ができない場合は、確定申告の際に、扶養親族の情報を申告することになります。
正しく申告することで、本来受けられるはずの税金上のメリットを逃さずに済みます。
もし、扶養する家族が増えたり減ったりした場合は、速やかに勤務先や税務署に届け出をすることが大切です。
まとめ:賢く税金・社会保険を活用しましょう
「扶養家族」と「扶養親族」の違い、そしてそれぞれの条件や申告方法について、ご理解いただけたでしょうか。扶養家族と扶養親族は、使われる文脈によって意味合いが異なりますが、どちらも生活を支え合っている大切な存在です。
これらの制度を正しく理解し、賢く活用することで、家計の負担を減らすことができます。もし分からないことがあれば、税務署や専門家(税理士など)に相談してみるのも良いでしょう。ご自身の状況に合わせて、適切な手続きを行ってくださいね。