「厚生年金」と「企業年金」、なんだか似ているようで、いったい何が違うんだろう?と疑問に思っている方も多いのではないでしょうか。この二つの年金制度は、どちらも私たちの老後を支えてくれる大切なものですが、その成り立ちや仕組みにははっきりとした違いがあります。ここでは、 厚生 年金 と 企業 年金 の 違い を、できるだけわかりやすく、そして具体的に解説していきます。これらの違いを知ることで、ご自身の年金についてより深く理解し、将来設計に役立てていきましょう。
厚生年金:国の制度でみんなが加入する安心の土台
まず、厚生年金についてです。厚生年金は、国が定めている公的な年金制度の一部であり、会社員や公務員など、一定の条件を満たす方が原則として全員加入することになるものです。これは、国民年金という基礎的な年金に上乗せされる形で、より手厚い保障を提供するものです。 この厚生年金があることで、老後の生活保障がより確実なものになります。
厚生年金の加入者は、毎月、給与から保険料として一定額が天引きされます。この保険料は、国が管理・運用し、将来、年金として受け取ることができるという仕組みです。受給額は、加入期間や保険料の納付額、そして平均的な所得によって決まります。
- 加入対象者: 会社員、公務員など
- 特徴: 国民年金に上乗せされる
- 保険料: 給与から天引き
- 給付: 老齢厚生年金、障害厚生年金、遺族厚生年金など
企業年金:会社が用意するプラスアルファの安心
次に、企業年金についてです。企業年金は、国が定めたものではなく、各企業が独自に設けている年金制度のことです。これは、厚生年金だけでは不安だと感じる企業が、従業員の老後所得保障をより手厚くするために導入しています。 会社によっては、この企業年金があることで、老後の生活が大きく変わってきます。
企業年金には、いくつかの種類がありますが、代表的なものとして「確定給付企業年金(DB)」と「確定拠出年金(DC)」があります。
| 種類 | 内容 |
|---|---|
| 確定給付企業年金(DB) | あらかじめ支給される年金額が決まっている制度。会社が運用責任を負う。 |
| 確定拠出年金(DC) | 加入者自身が運用方法を選び、その運用成果によって将来の年金額が決まる制度。個人型DC(iDeCo)などもある。 |
企業年金への加入は、その会社で働いている従業員であることが条件となります。また、制度の内容や掛金、給付条件などは、会社によって大きく異なります。
加入条件の違い
厚生年金は、基本的に会社員や公務員であれば、加入が義務付けられています。一方、企業年金は、その企業に勤務していることが加入の前提となります。つまり、 厚⽣年⾦は「国」が、企業年⾦は「会社」が、それぞれ加入の条件を決めている ということです。
企業年金の種類によっては、加入できる年齢や期間に制限がある場合もあります。例えば、
- 正社員のみが対象
- 勤続〇年以上で加入可能
- 60歳未満で加入
といった条件が設けられていることがあります。ご自身の会社にどのような企業年金制度があるのか、そしてどのような条件で加入できるのかを確認することが大切です。
掛金(保険料)の負担者
厚生年金の保険料は、原則として加入者(従業員)と会社が半分ずつ負担します。これは、社会保険料として毎月の給与から天引きされる形で支払われます。 掛金(保険料)の負担者が「誰か」という点も、厚生年金と企業年金の違い を理解する上で重要です。
企業年金の場合、掛金の負担者は会社によって異なります。
- 会社と従業員が折半で負担する
- 会社が全額負担する
- 従業員が一部負担し、会社が上乗せする
といったパターンがあります。確定拠出年金(DC)の場合は、加入者自身が運用するため、掛金の一部を自分で決めることができる場合もあります。
給付額の決まり方
厚生年金の受給額は、加入期間や保険料の納付額、そして所得水準など、国が定めた計算式に基づいて決まります。これは、ある程度、将来受け取れる額を予測しやすいという特徴があります。 将来受け取れる金額が「どのように決まるか」という点も、両者の大きな違い と言えるでしょう。
企業年金の場合、給付額の決まり方は、その制度の種類によって大きく異なります。
| 制度の種類 | 給付額の決まり方 |
|---|---|
| 確定給付企業年金(DB) | あらかじめ決められた計算式に基づき、一定額が支給される。 |
| 確定拠出年金(DC) | 掛金の運用実績によって、受給額が変動する。 |
確定給付企業年金(DB)では、会社が運用責任を負うため、将来の給付額が約束されています。一方、確定拠出年金(DC)では、加入者自身の運用成績が将来の年金額に直結します。
運営・管理主体
厚生年金は、日本年金機構という国の機関が運営・管理しています。これは、全国民の年金制度を公平かつ安定的に運営するための組織です。 誰が「制度を動かしているか」という点も、両者の違い を明確にします。
企業年金は、各企業が設ける年金制度のため、それぞれの会社が運営・管理を行います。ただし、専門的な知識や運用が必要となるため、信託銀行や運用会社などに委託している場合がほとんどです。
将来性・制度変更のリスク
厚生年金は、国の公的年金制度であるため、法改正などによって制度が変更される可能性はありますが、その根幹が覆されるような大きな変更は考えにくいでしょう。 「将来的な安定性」という点では、公的な制度である厚生年金の方が安心感がある と言えます。
企業年金は、会社の業績や経営方針によって、制度が廃止されたり、内容が変更されたりするリスクがゼロではありません。特に、会社の合併や買収があった場合などは、年金制度の見直しが行われる可能性もあります。
このように、厚生年金と企業年金には、それぞれ異なる特徴と役割があります。どちらか一方だけではなく、両方の制度を理解し、ご自身の老後資金計画に役立てていくことが大切です。もし、ご自身の会社の企業年金制度について不明な点があれば、人事部や総務部などに問い合わせてみましょう。