日本語を学ぶ上で、感謝の気持ちを伝える表現はとても重要ですよね。「ありがとう ござい ます」と「ありがとう ご ざいました」は、どちらも感謝を表す言葉ですが、その使い分けにはちょっとしたコツがあります。今回は、この「ありがとう ござい ます」と「ありがとう ご ざいました」の 違い を、分かりやすく、そして実践的に解説していきます!
過去と現在:感謝の時点を意識しよう
「ありがとう ござい ます」と「ありがとう ご ざいました」の最も大きな違いは、感謝の気持ちが「いつ」に向けられているか、という点です。この違いを理解することが、正確な表現の第一歩となります。 どちらの表現を使うかによって、相手に与える印象が大きく変わる ので、しっかりマスターしましょう。
- 「ありがとう ござい ます」: 今、まさに感謝していること、あるいは現在進行形で続いている感謝の気持ちを表します。
- 「ありがとう ご ざいました」: 過去に起こった出来事や、もう終わったことに対して感謝の気持ちを表します。
例えば、お店で商品を買った時、店員さんが「ありがとうございました」と言いますよね。これは、商品を買うという行為が「完了した」ことへの感謝です。一方、友達に話を聞いてもらって、今まさに心が軽くなったと感じているなら、「ありがとう ござい ます」と言うのが自然です。
| 感謝の時点 | 使う表現 | 例文 |
|---|---|---|
| 現在・継続 | ありがとう ござい ます | 「いつも助けてくれて、ありがとう ござい ます。」 |
| 過去・完了 | ありがとう ご ざいました | 「昨日は、おいしい食事をごちそうになり、ありがとう ご ざいました。」 |
具体的なシチュエーションで考えてみよう
では、実際の場面でどのように使い分けるのか、いくつか例を見てみましょう。日常会話でよくあるシチュエーションなので、イメージしやすいはずです。
-
プレゼントをもらった時:
- プレゼントを受け取った「その時」に感謝するなら、「ありがとう ござい ます!」
- 後日、プレゼントを使って楽しかったことを伝えるなら、「あのプレゼント、とても嬉しかったです。ありがとう ご ざいました!」
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誰かに手伝ってもらった時:
- 今、手伝ってもらっている最中なら、「ありがとう ござい ます。助かります!」
- 手伝ってもらった後、その件が解決したなら、「あの時は、手伝ってくれてありがとう ご ざいました。おかげでうまくいきました。」
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お店でのやり取り:
- 買い物が終わって、お店を出る時など、その場でのサービスや商品に対しては、「ありがとう ご ざいました。」が一般的です。
このように、相手に「いつ」感謝しているのかを意識することが、自然な日本語を使うための鍵となります。
「ござい ます」と「ご ざいました」の文法的な違い
「ありがとう」という感謝の言葉に、丁寧さや過去・現在を表す助動詞がついた形が「ありがとう ござい ます」と「ありがとう ご ざいました」です。この「ござい ます」と「ご ざいました」の形が、意味の違いを生んでいます。
- 「ござい ます」: 「ある」の丁寧語「ございます」の現在形です。現在、感謝の気持ちがあることを示します。
- 「ご ざいました」: 「ある」の丁寧語「ございます」の過去形です。過去に感謝する出来事があったことを示します。
つまり、単語の形そのものが、時間の経過を表しているのです。まるで時計の針が進むように、言葉の形も変化していると考えると分かりやすいかもしれません。
| 基本形 | 丁寧語 | 現在形 | 過去形 |
|---|---|---|---|
| ある | ございます | ございます | ございました |
「〜て」との組み合わせでさらに明確に
感謝の対象となる行動が過去のことであることをよりはっきりさせたい場合は、「〜て」を付け加えることがよくあります。これは、文法的に過去の出来事を指し示すのに役立ちます。
例えば、「教えていただき」や「連れて行っていただき」といった形です。
- 「教えていただき、ありがとう ござい ます。」 : 今、教えてもらった内容について感謝している場合。
- 「教えていただき、ありがとう ご ざいました。」 : 以前教えてもらったことについて、今感謝している場合。
このように、「〜て」を挟むことで、感謝の対象となる行為がいつ行われたのかが、より伝わりやすくなります。
未来の感謝は?
「ありがとう ござい ます」と「ありがとう ご ざいました」は、過去か現在かのどちらかです。では、未来の出来事に対して感謝を伝える時はどうなるのでしょうか?
- 「ありがとうございます。」 : 未来の出来事に対して、現時点で感謝の気持ちを伝える場合もあります。これは、相手がこれからしてくれることに対して、期待や感謝の念を込めています。
例えば、会議で「〇〇さんに資料作成をお願いします。」と言われた後、その〇〇さんが「承知いたしました。」と返事をしたとします。その時、依頼した人は「〇〇さん、ありがとう ござい ます。」と、これから資料を作成してくれることへの感謝を伝えます。
これは、まだ完了していないけれど、相手がしてくれることに対して「前もって」感謝の気持ちを表す、とても丁寧な言い方です。
| 感謝の時点 | 主な表現 | 補足 |
|---|---|---|
| 現在 | ありがとう ござい ます | 今、感謝していること。 |
| 過去 | ありがとう ご ざいました | 過去の出来事に対して感謝。 |
| 未来(予定) | ありがとう ござい ます | これからしてくれることへの、期待を込めた感謝。 |
「お世話になり」の使い分け
「お世話になり」という言葉も、感謝の場面でよく使われます。これも「ありがとう ござい ます」や「ありがとう ご ざいました」と同じように、時間の捉え方が重要になります。
「お世話になり、ありがとう ござい ます。」
- 現在、お世話になっていることに対して、感謝を伝えます。
- 例:「いつもご指導いただき、ありがとう ござい ます。」
「お世話になり、ありがとう ご ざいました。」
- 過去にお世話になったことに対して、感謝を伝えます。
- 例:「以前、大変お世話になりました。ありがとう ご ざいました。」
この二つの表現は、相手との関係性や、お世話になった期間の長さに応じて使い分けることができます。
「〜になります」との関連性
「ありがとう ござい ます」の「ござい ます」は、「〜になります」の「なり ます」と同じように、丁寧語の助動詞です。どちらも、相手への敬意を表すための表現です。
- 「ありがとう ござい ます」 : 「ありがとう」という気持ちが、今、存在している。
- 「〜になり ます」 : ある状態から、別の状態へ変化している、あるいは、そうなる予定である。
「ござい ます」は、感謝の「状態」が今あることを示し、「〜になり ます」は、変化や未来の出来事を示唆することが多いですが、どちらも相手を尊重する丁寧な言葉遣いです。
「〜て」+「おります」の形
「〜て、ありがとう ござい ます」という表現は、完了した行動に対して、今も感謝の気持ちが続いていることを表す場合もあります。これは、「〜て、おります」という、より丁寧で継続的な状態を表す表現と似ています。
- 「お借りし、ありがとう ござい ます。」 : 今、借りているものに対して感謝。
- 「お借りし、ありがとう ご ざいました。」 : 以前借りて、もう返したけれど、その時の借りたことに対して感謝。
「〜て、おります」は、その動作や状態が現在も続いていることを示しますが、「ありがとう ござい ます」も、感謝の気持ちが現在続いていることを強調するニュアンスがあります。
この使い分けは、相手への敬意をより深めるために役立ちます。
「〜ください」との比較
「ありがとう ござい ます」と「ありがとう ご ざいました」は、相手から何かを「してもらった」ことへの感謝ですが、「〜ください」は、相手に何かを「してほしい」とお願いする言葉です。この二つの関係性を理解すると、感謝の表現がより豊かになります。
「ありがとう ござい ます」 : 感謝は「過去」または「現在」の行為に対して。
- 例:「ご協力いただき、ありがとう ござい ます。」(現在協力してもらっていることへの感謝)
「〜ください」 : 依頼は「未来」の行為に対して。
- 例:「ご協力ください。」(これから協力してほしいという依頼)
感謝の言葉は、相手の行動に対するポジティブな反応です。「〜ください」という依頼が、相手にとって負担にならないよう、感謝の気持ちを添えることが大切です。
「〜し」+「て」の接続
「〜し」で終わる動詞に「て」がつく場合、過去の動作を指すことが多いです。例えば、「お聞きし」+「て」で「お聞きして」となります。
- 「お聞きして、ありがとう ござい ます。」 : 今、聞いている内容について感謝。
- 「お聞きして、ありがとう ご ざいました。」 : 過去に聞いたことについて、今感謝。
この接続の仕方も、感謝の対象となる出来事がいつ起こったのかを判断するヒントになります。
「〜た」+「こと」の表現
「〜たこと」という表現は、過去の出来事を名詞化します。この形は、「ありがとう ご ざいました」を使う場面をより明確にします。
- 「〇〇してくださったこと、ありがとう ご ざいました。」 : 過去にしてもらった特定の行為そのものに感謝する際に使われます。
例えば、「あの時、助けてくださったこと、ありがとう ご ざいました。」のように、具体的な過去の出来事を指して感謝を伝えることができます。
このように、「〜たこと」という表現と組み合わせることで、「ありがとう ご ざいました」がより効果的に使えます。
「ありがとう ござい ます」と「ありがとう ご ざいました」の使い分けは、日本語の奥ゆかしさを表す大切な要素です。今回ご紹介したポイントを参考に、ぜひ実践で使ってみてください。相手への感謝の気持ちが、より一層伝わるはずですよ!