「トクホ」と「機能性表示食品」、どちらも健康に良さそうなイメージがあるけれど、一体何が違うの？と疑問に思っている方も多いでしょう。実は、トクホと機能性表示食品には、それぞれ承認されるまでのプロセスや表示できる機能性について、明確な違いがあります。この違いを知っておくことで、ご自身の健康目的に合った食品を賢く選べるようになりますよ。
トクホ と 機能 性 表示 食品 の 違い：信頼性の根幹
トクホと機能性表示食品の最も大きな違いは、その「国の審査」の有無と厳格さにあります。トクホ、つまり「特定保健用食品」は、国がその食品の有効性や安全性を科学的根拠に基づいて審査し、許可されたものだけが名乗ることができます。そのため、消費者としては高い信頼性を持って選ぶことができるのです。一方、機能性表示食品は、企業が科学的根拠を基に機能性を表示しますが、国の事前審査はありません。これは、食品の多様性を促進するという側面もありますが、消費者がその機能性を正しく理解することがより一層重要になります。
具体的に見ていきましょう。
- トクホ ：国の審査があり、表示される効果・効能は科学的根拠がしっかりしている。
- 機能性表示食品 ：企業が機能性を表示し、消費者庁に届け出る。国の審査は必須ではない。
この違いを理解することは、トクホと機能性表示食品の違いを把握する上で 非常に重要 です。
どちらにも共通する点としては、いずれも健康の維持増進に役立つことが期待される食品であるということです。しかし、その「役立つ」という表現や、その根拠となるデータの種類、そして消費者への伝わり方に違いがあるのです。
トクホ：厳しい審査をクリアした「お墨付き」
トクホが「特定保健用食品」と呼ばれるように、その保健機能について国（消費者庁）から「特定」して「許可」された食品です。これは、申請した食品の成分が、人の健康にどのように関わるのか、その効果が科学的に証明されているのか、そして安全に摂取できるのか、といった点を徹底的に審査されることを意味します。
審査は非常に厳しく、一般的には以下のようなステップを踏みます。
- 食品の成分とその保健機能に関する科学的根拠（試験データなど）の提出
- 安全性に関するデータの提出
- 有効性に関するデータの提出
- 専門家による審査
- 消費者庁による最終的な許可
このプロセスを経て、例えば「お腹の調子を整える」「脂肪の吸収を抑える」といった具体的な機能性が表示されます。トクホのパッケージには、消費者庁長官の許可を受けたマークが表示されているので、目印にすると良いでしょう。
| 審査 | 国の厳格な審査あり |
|---|---|
| 表示される機能性 | 科学的根拠に基づいた具体的な効果・効能 |
| 信頼性 | 高い（国の「お墨付き」） |
機能性表示食品：企業が責任を持つ「科学的根拠に基づく表示」
機能性表示食品は、トクホとは異なり、国の事前審査はありません。その代わり、食品を販売する企業が、科学的根拠に基づいた機能性を表示し、その責任において消費者庁に届け出を行う制度です。つまり、「この食品はこういう効果が期待できますよ」と企業が消費者に伝えるための制度と言えます。
企業が機能性を表示する際には、必ず以下のいずれかの情報を提供する必要があります。
- 最終製品を用いた臨床試験
- 既存の臨床試験の結果の利用
- 動物試験の結果の利用（ただし、ヒトでの効果を類推できるものに限る）
つまり、機能性表示食品も科学的根拠が求められますが、その根拠の質や、評価のプロセスはトクホほど厳格な国の審査を経ないという点が異なります。そのため、表示されている機能性については、あくまで「期待できる」というニュアンスが強くなります。
機能性表示食品の表示例としては、「お腹の調子を整えるのに役立つ」「一時的な疲労感を軽減するのに役立つ」といった表現が一般的です。パッケージには「機能性表示食品」と明記されています。
機能性表示食品を選ぶ際のポイントは以下の通りです。
- 機能性関与成分 ：どのような成分が、どのような機能に関わっているのかを確認する。
- 届出表示 ：どのような機能性が表示されているのかを理解する。
- 安全性 ：企業が安全性についてどのように評価しているのかを確認する。
トクホと機能性表示食品の「表示」の決まり
トクホと機能性表示食品では、パッケージに表示できる「機能性」の表現方法に違いがあります。トクホは、国の審査を経て許可された具体的な保健の用途が表示されます。例えば、「血中中性脂肪の吸収を穏やかにする」「お通じの改善」といった、より直接的な効果が謳われることが多いです。
一方、機能性表示食品は、前述の通り、科学的根拠に基づいた「機能性」を企業が表示します。その表現は、「〇〇（機能性関与成分）は、△△（機能性）に役立つことが報告されています。」という形をとることが一般的です。ここでの「役立つ」という言葉は、必ずしも確実な効果を保証するものではなく、あくまで科学的根拠に基づいた期待値を示しています。
この表示の違いを理解することで、消費者はそれぞれの食品が持つ「信頼性」のレベルを推測しやすくなります。トクホは「国の許可」、機能性表示食品は「企業の責任」という構図を覚えておくと良いでしょう。
トクホと機能性表示食品の「安全性」へのアプローチ
食品の安全性についても、トクホと機能性表示食品ではアプローチが異なります。トクホの場合、国の審査において、食品そのものの安全性だけでなく、表示されている機能性との関連での安全性も厳しく評価されます。これは、その食品を摂取し続けることで、健康に悪影響がないか、といった点まで含めて確認されるということです。
機能性表示食品の場合、企業が機能性関与成分の安全性について、既存の科学的知見や、必要に応じて独自の試験結果を基に評価し、消費者庁に届け出ます。こちらでも安全性の確認は行われますが、トクホのように国が直接的に食品全体の安全性を「許可」するわけではありません。したがって、企業が提示した安全性の評価が、消費者にどのように伝わるか、また消費者がそれをどう解釈するかが重要になります。
以下に、安全性に関するまとめを記載します。
- トクホ ：国の審査で、食品の安全性と機能性との関連での安全性が厳しく評価される。
- 機能性表示食品 ：企業が科学的根拠に基づき安全性を評価し、消費者庁に届け出る。
トクホと機能性表示食品の「効果・効能」の表現
トクホと機能性表示食品の最もわかりやすい違いの一つが、表示される「効果・効能」の表現です。トクホは、国の審査をクリアした、確実性が高いと判断された健康効果が表示されます。例えば、「コレステロールを下げるのを助ける」「整腸作用を促進する」といった、より具体的な効果が明記されているのが特徴です。
一方、機能性表示食品の表示は、「機能性関与成分〇〇は、△△（健康効果）に役立つことが報告されています。」といった形をとります。ここでの「役立つ」という表現は、科学的根拠はあるものの、トクホのような「断定的な」効果の表示とは少し異なります。これは、機能性表示食品が、消費者の選択肢を広げるために、より多様な食品での機能性表示を可能にする制度だからです。
この違いは、消費者が「これは絶対効く！」と期待するのか、「こういう効果が期待できるんだな」と理解するのか、という心理的な側面にも影響を与えます。ご自身の健康目標や、食品に求める信頼性のレベルに応じて、どちらの表示がより適しているかを判断することが大切です。
トクホと機能性表示食品の「対象者」と「摂取上の注意」
トクホと機能性表示食品では、推奨される対象者や摂取上の注意点にも違いが見られることがあります。トクホは、その機能性が明確に証明されているため、「〇〇が気になる方に」「〇〇の摂取が目的の方に」といったように、より具体的な対象者が想定されている場合があります。また、摂取する上での注意点も、科学的根拠に基づいて細かく表示されていることが多いです。
機能性表示食品の場合、企業が科学的根拠に基づいて設定した機能性表示に従いますが、トクホほど厳格な「対象者」の指定がない場合も多く見られます。しかし、機能性関与成分によっては、特定の疾患を持つ方や、妊娠中・授乳中の方、お子様などが摂取を控えるべき場合もあります。そのため、機能性表示食品を選ぶ際も、パッケージの表示をよく確認し、必要であれば医師や専門家に相談することが重要です。
以下は、注意点に関する表です。
| トクホ | 機能性との関連で、より具体的な摂取上の注意が表示される傾向 |
|---|---|
| 機能性表示食品 | 機能性関与成分によっては、摂取を控えるべき対象者がいる場合があり、表示の確認が重要 |
どちらの食品を選ぶにしても、ご自身の体調や健康状態を考慮し、無理なく継続できるものを選ぶことが、健康的な食生活を送る上で何よりも大切です。
トクホと機能性表示食品の違いを理解することは、日々の食生活で賢く健康をサポートしてくれる食品を選ぶための第一歩です。どちらの食品も、科学的根拠に基づいて開発されていますが、その「お墨付き」のレベルや表示の仕方に違いがあります。ご自身の健康目的や、食品に求める信頼性の度合いに合わせて、上手に活用していきましょう。