dic と 敗血症 の 違い: 知っておきたい基本と見分け方

「DICと敗血症の違い」について、一体何が違うのか、疑問に思っている方もいるかもしれません。実は、DIC(播種性血管内凝固症候群)と敗血症は、しばしば一緒に語られることもありますが、原因やメカニズム、そして体への影響が異なります。ここでは、この二つの病気の違いを分かりやすく解説していきます。

DIC(播種性血管内凝固症候群)とは? - 体の中で何が起こっているのか

DICは、体の中で血が固まりやすくなる病気です。本来、出血した時に血を止めるために血小板が集まって固まるのですが、DICになると、体のあちこちの血管の中で、必要のないところで血が固まってしまうのです。これが、DICの基本的なメカニズムです。

この血の塊(血栓)ができることで、血管が詰まってしまい、臓器に十分な血液が送られなくなります。その結果、臓器の機能が低下してしまうことがあります。さらに、血が固まるために血小板や固まるのを助ける「凝固因子」がたくさん使われてしまうと、今度は逆に血が止まりにくくなり、出血しやすくなるという、相反する症状が現れるのが特徴です。

  • DICの主な原因:
    • 重い感染症(肺炎、尿路感染症など)
    • がん
    • 大手術
    • 外傷(大きな怪我)
    • 妊娠合併症
  • DICの主な症状:
    • 皮下出血、鼻血、歯ぐきからの出血
    • 血尿、吐血、下血
    • 臓器の機能低下(腎不全、肝不全など)

DICは、病気そのものではなく、他の病気をきっかけに起こる「症候群」であり、その原因となった病気の治療が非常に重要です。

敗血症とは? - 体が感染と戦う中で起きる「暴走」

一方、敗血症は、細菌やウイルスなどの感染症が原因で起こります。感染した病原体をやっつけようと、私たちの体は免疫システムを働かせます。しかし、敗血症になると、この免疫システムが過剰に働きすぎてしまい、体のあちこちに炎症を引き起こしてしまうのです。これを「サイトカインストーム」と呼ぶこともあります。

この全身に広がる炎症が、様々な臓器の機能を障害し、重症化すると生命に関わる状態になります。敗血症は、感染症の「結果」として起こる、体の反応の異常と言えるでしょう。

敗血症の主な原因 細菌、ウイルス、真菌(カビ)などの感染症
敗血症の主な初期症状 発熱、悪寒、呼吸が速くなる、心拍数が速くなる、意識がぼんやりする

敗血症の治療の基本は、原因となっている感染症を特定し、抗生物質などでしっかりと治療することです。また、全身の炎症を抑えたり、臓器の機能を助けたりする治療も同時に行われます。

DICと敗血症の「発生メカニズム」の違い

DICと敗血症の最も大きな違いは、その発生メカニズムにあります。敗血症は、病原体への感染によって引き起こされる「炎症反応の暴走」が主体です。一方、DICは、敗血症を含む様々な病気をきっかけに、血液が異常に固まりやすくなる「凝固系の異常」が主体となります。

つまり、敗血症が「感染」そのものや、それに対する体の過剰な「反応」であるのに対し、DICは、その感染や他の原因によって引き起こされる「血液の固まりやすさの変化」なのです。

  1. 感染の発生
  2. 免疫システムの過剰反応(敗血症)
  3. 血管内での異常な凝固(DIC)
  4. 臓器障害

この流れの中で、敗血症がDICを引き起こすこともあれば、DICが敗血症を悪化させることもあります。両者は密接に関連していることが多いのです。

「検査」でわかるDICと敗血症の特徴

医療現場では、血液検査などを通じてDICと敗血症を診断します。DICが疑われる場合、血液が固まるのに時間がかかるか、逆に固まりすぎるか、といった凝固系の検査が行われます。例えば、血小板の数や、血液を固めるのに使われる成分の減少などが確認されます。

  • DICを疑う検査結果の例:
    • 血小板数の減少
    • フィブリノーゲン(血液を固めるタンパク質)の減少
    • Dダイマー(血栓が分解された時にできる物質)の増加

一方、敗血症の場合は、血液中に病原体(細菌など)がいるかどうかを調べる「血液培養」や、炎症の程度を示す「CRP(シーアールピー)」などの数値が重要になります。

敗血症を疑う検査結果の例
  • 白血球数の増加(または減少)
  • CRPの上昇
  • 血液培養での病原体の検出

これらの検査結果を総合的に判断して、医師は診断を下します。

「治療」の進め方における違い

DICと敗血症の治療は、それぞれのアプローチが異なります。敗血症の治療では、まず原因となっている感染症を徹底的に治療することが最優先されます。抗生物質などの投与が中心となります。

一方、DICの治療は、原因となった病気の治療と並行して、異常な血液凝固を抑えるための治療が行われます。具体的には、血を固まりにくくする薬(抗凝固薬)を使ったり、失われた血液成分を補うために血小板や凝固因子を輸血したりすることがあります。

  1. 原因の特定と治療
  2. 全身状態の管理(呼吸、循環など)
  3. DICに対する特殊な治療(薬物療法、輸血など)

重要なのは、DICは二次的な病態であることが多いため、その根本原因へのアプローチが不可欠であるという点です。

「予後」(病気の見通し)にも影響

DICと敗血症は、どちらも重症化すると命に関わる危険な状態ですが、その予後(病気の見通し)も、病気の進行度や原因、そして治療の開始時期によって大きく異なります。

敗血症は、早期に適切な診断と治療が行われれば、回復する可能性も十分にあります。しかし、進行して多臓器不全に陥ると、予後は厳しくなります。

  • 予後に影響する要因:
    • 原因となった感染症の種類と重症度
    • 診断・治療開始までの時間
    • 患者さんの年齢や基礎疾患
    • DICの合併の有無と程度

DICも同様に、原因疾患の重症度や、DIC自体の進行度によって予後は大きく変わります。早期発見・早期治療が、予後を改善する鍵となります。

まとめ:似ているようで違う、二つの病気

DICと敗血症は、しばしば同時に発生することもあるため、混同されがちですが、その根本的な原因や体の反応は異なります。敗血症は感染症に対する体の過剰な炎症反応であり、DICは様々な原因によって引き起こされる血液の異常な凝固です。

どちらも早期発見と適切な治療が命を救うために非常に重要ですので、これらの病気について基本的な知識を持っておくことは、私たち自身や大切な人の健康を守る上で役立つはずです。

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