「逮捕」と「検挙」という言葉、ニュースなどでよく耳にしませんか?似ているようで、実はそれぞれ意味が異なります。この二つの言葉の正確な意味、つまり「逮捕 と 検挙 の 違い」を理解することは、私たちの社会の仕組みを知る上でとても大切です。今回は、この二つの違いを分かりやすく解説していきます。
逮捕 と 検挙 の 違い:その核心に迫る
まず、「逮捕」とは、犯罪の疑いがある人を、その人の意思に反して、一時的に身柄を拘束することです。これは、警察官が犯行現場で犯人を捕まえたり、後日、証拠に基づいて疑わしい人物を連行したりする場合などが該当します。逮捕の目的は、証拠隠滅や逃亡を防ぎ、きちんと捜査を進めるためです。
一方、「検挙」とは、犯罪の事実を明らかにし、被疑者を検察官に引き渡すまでの一連の捜査活動全体を指すことが多いです。つまり、逮捕はその「検挙」という大きな流れの中の一つの行為と言えます。逮捕されることだけが検挙ではなく、捜査によって犯罪が確定し、検察官が起訴するかどうかを判断する段階まで含めて「検挙」とされる場合もあります。
ここで、「逮捕 と 検挙 の 違い」を理解するためのポイントをまとめると以下のようになります。
- 逮捕: 個人の身柄を一時的に拘束する行為。
- 検挙: 犯罪の事実を明らかにし、捜査を進めて被疑者を検察官に引き渡すまでの一連の活動。
つまり、逮捕は検挙の一部であり、検挙はより広い意味を持つ言葉なのです。例えば、以下のようなケースを考えてみましょう。
| ケース1:万引きの現行犯で捕まった場合 | この場合、犯行現場で直接捕まるので「逮捕」であり、その後の捜査も「検挙」に含まれます。 |
| ケース2:後日、防犯カメラの映像から犯人が特定された場合 | この場合も、犯人を連行する行為は「逮捕」であり、そこから始まる捜査は「検挙」です。 |
逮捕のプロセス:いつ、なぜ行われるのか
逮捕は、単に怪しいからといって行われるわけではありません。法律に基づいて、一定の条件が満たされた場合に行われます。具体的には、犯罪が行われたと疑うに足りる「相当な理由」があり、かつ、逃亡のおそれや証拠隠滅のおそれがあると判断された場合に、裁判官が発する「逮捕状」に基づいて行われるのが一般的です。これを「通常逮捕」といいます。
しかし、中には逮捕状なしで逮捕できる場合もあります。例えば、現行犯で犯罪を行っている最中や、直後に犯人だと明らかにわかる状態で捕まえた場合は、「現行犯逮捕」といいます。また、緊急性があり、逮捕状を請求する時間がないような場合(例えば、凶器を持った犯人が逃走しているなど)には、「緊急逮捕」という制度もあります。いずれにしても、逮捕には法的な根拠が不可欠です。
逮捕された後、被疑者は警察署などで取り調べを受けます。この間、弁護士に相談する権利や、黙秘権なども保障されています。逮捕の期間には制限があり、原則として48時間以内に検察官に送致されるか、釈放されます。
逮捕の主な種類は以下の通りです。
- 通常逮捕:裁判官が発する逮捕状に基づき行われる逮捕。
- 現行犯逮捕:犯罪を行っている最中や、直後に犯人だとわかる状態で逮捕されること。
- 緊急逮捕:逃亡や証拠隠滅のおそれがあり、逮捕状を請求する時間がない場合に、例外的に逮捕状なしで行われる逮捕。
検挙への道:逮捕から検察官へ
逮捕された被疑者は、原則として48時間以内に検察官に送致されます。検察官は、送致された資料や被疑者からの聴取などを基に、さらに捜査を進めます。この段階で、被疑者が本当に犯罪を犯したのか、証拠はあるのかなどを慎重に判断します。
検察官の捜査は、さらに勾留(被疑者を一定期間、身柄拘束したまま捜査を続けること)を裁判官に請求して行われることもあります。勾留期間は、原則として10日間ですが、さらに延長されることもあります。この期間中に、検察官は事件の全容解明を目指します。
検察官は、最終的に被疑者を起訴するか、不起訴にするかを決定します。不起訴処分となった場合は、被疑者は釈放されます。起訴された場合は、裁判へと進みます。つまり、検挙とは、逮捕から検察官による起訴・不起訴の判断までの一連の流れを指すことが多いのです。
検挙の流れは、おおよそ以下のようになります。
- 逮捕
- 検察官への送致(原則48時間以内)
- 検察官による捜査(勾留請求などが行われる場合もある)
- 検察官による起訴または不起訴の決定
逮捕と検挙の判断基準:何が決め手となるのか
逮捕や検挙に至る判断は、非常に慎重に行われます。まず、逮捕の段階では、「犯罪を行ったと疑うに足りる相当な理由」が必要です。これは、単なる憶測ではなく、客観的な証拠や情報に基づいている必要があります。例えば、目撃証言、防犯カメラの映像、現場に残された物証などがこれにあたります。
さらに、逃亡や証拠隠滅のおそれがあるかどうかも重要な判断材料です。家族や友人がおらず、定まった住所がない人、過去に前科がある人などは、逃亡のおそれがあると判断されやすい傾向があります。また、犯行に使用した物や、犯罪によって得た物などを隠そうとする行動が見られた場合も、証拠隠滅のおそれがあると判断されます。
検挙の段階、つまり検察官が起訴するかどうかを判断する際には、より多くの証拠や、被疑者の供述などを総合的に考慮します。たとえ逮捕されたとしても、捜査の結果、嫌疑不十分(犯罪を犯したという証拠が足りない)と判断されれば、不起訴処分となり、釈放されることもあります。逆に、証拠が十分であれば、起訴されて裁判にかけられることになります。
判断基準をまとめると、以下のようになります。
- 犯罪を行ったと疑うに足りる相当な理由
- 逃亡のおそれ
- 証拠隠滅のおそれ
これらの要素が、逮捕や検挙の判断に大きく影響します。
不起訴処分とは:検挙されなかった場合
検察官が被疑者を裁判にかける必要がないと判断した場合、「不起訴処分」となります。不起訴処分にもいくつかの種類がありますが、最も多いのは「嫌疑不十分」による不起訴です。これは、犯罪を犯したという証拠が足りないため、起訴することができないという場合です。たとえ逮捕されたとしても、その後の捜査で証拠が見つからなかったり、証拠が弱かったりすれば、不起訴処分になる可能性があります。
その他にも、「嫌疑なし」(そもそも犯罪行為がなかった場合)や、「訴追 بدون 意義」(犯罪は成立するが、検察官が起訴しないことを望む場合、例えば被害者との示談が成立し、処罰を望まない場合など)といった理由で不起訴になることもあります。不起訴処分となれば、被疑者は罪に問われることはありません。
不起訴処分の主な種類は以下の通りです。
- 嫌疑不十分:犯罪を犯したという証拠が足りない。
- 嫌疑なし:そもそも犯罪行為がなかった。
- 訴追 بدون 意義:犯罪は成立するが、起訴しない。
不起訴処分は、被疑者にとっては重要な権利が守られた結果と言えます。
逮捕・検挙のニュース:どのように報道されるか
ニュースで「〇〇容疑者を逮捕」「〇〇事件で検挙」といった報道を目にすることがありますが、その表現には注意が必要です。一般的に、「逮捕」という言葉が使われた場合、それは犯罪の疑いがある人物の身柄が一時的に拘束されたことを意味します。しかし、これはあくまで「疑い」であり、有罪が確定したわけではありません。
「検挙」という言葉は、より広範囲に使われます。事件の解決や、犯人の特定、身柄の確保などを指して使われることが多いです。報道では、事件の概要や逮捕された人物の氏名、容疑の内容などが伝えられますが、その段階ではまだ捜査の途中であり、裁判を経ていないことを理解しておくことが大切です。
報道でよく使われる言葉とその意味を整理すると、以下のようになります。
| 逮捕 | 犯罪の疑いで身柄を拘束すること。 |
| 検挙 | 犯罪の事実を明らかにし、捜査を進めて被疑者を検察官に引き渡すまでの一連の活動、またはその結果。 |
| 送致 | 逮捕された被疑者を警察から検察官に引き渡すこと。 |
| 起訴 | 検察官が被疑者を裁判にかけること。 |
| 不起訴 | 検察官が被疑者を裁判にかけないこと。 |
報道の際には、これらの言葉がどのように使われているか、その背景にある意味を理解することが、誤解を防ぐ上で重要です。
このように、「逮捕」と「検挙」は、法律における重要な手続きであり、それぞれ異なる意味を持っています。この違いを理解することで、ニュースなどをより正確に理解できるようになるでしょう。私たちの社会の安全を守るための、大切な仕組みなのです。