CT検査と造影CT検査、この二つの違いについて、あなたはどのくらいご存知でしょうか?一見似ているようで、実は検査の目的や得られる情報に大きな違いがあります。今回は、この「CTと造影CTの違い」を、皆さんが理解しやすいように、分かりやすく解説していきます。
CTと造影CTの違い:基本のキ!
CT検査とは、X線を体の周りから当て、その透過度をコンピューターで解析して、体の内部を輪切りにしたような画像を作る検査です。骨や内臓の形、大きさを確認するのに役立ちます。一方、造影CT検査は、このCT検査に「造影剤」という特別な薬剤を体に入れることで、より詳細な情報を得るための検査なのです。 CTと造影CTの違いを理解することは、ご自身の検査について正しく把握するために非常に重要です。
造影剤を使うことで、以下のような違いが生まれます。
- 血管の流れがより鮮明に映し出される
- 病変(病気の部分)が周囲の組織と区別しやすくなる
- 腫瘍の広がりや性質を把握しやすくなる
具体的に、どんなものが造影剤によって見やすくなるのか、表にまとめました。
| 検査方法 | 見やすくなるもの |
|---|---|
| CT検査 | 骨、臓器の全体像、出血(急性期) |
| 造影CT検査 | 血管、腫瘍、炎症、リンパ節、血栓 |
造影剤の役割とは?
造影剤は、CT検査やMRI検査などの画像診断で、体の内部をより詳しく見るために使用される薬剤です。これらの薬剤は、X線や磁場に対する反応が、体の組織とは異なるため、画像上で際立って見えるようになります。例えば、血管に造影剤を流すと、その血管の形や血流の状態がはっきりと描出され、血管の詰まりや狭窄(きょうさく:狭くなること)などを見つけやすくなります。
造影剤には、主に以下の種類があります。
- ヨード造影剤:CT検査で最も一般的に使われます。
- ガドリニウム造影剤:MRI検査で主に使われます。
造影剤は、病変の発見だけでなく、その性質を判断するためにも役立ちます。例えば、腫瘍が造影剤をよく取り込むかどうかを見ることで、それが良性なのか悪性なのか、あるいはどのような種類の腫瘍なのかを推測する手がかりになります。
どんな時に造影CTが選ばれるの?
造影CT検査は、特に以下のような場合に選択されます。
- がん(腫瘍)の発見・進行度の評価: 腫瘍の大きさ、形、周囲への広がり、リンパ節への転移などを詳しく調べるために不可欠です。
- 血管の病気の診断: 脳梗塞の原因となる血栓、動脈瘤(どうみゃくりゅう:血管が風船のように膨らんだ状態)、血管の詰まりなどを診断します。
- 炎症の評価: 虫垂炎(ちゅうすいえん)や肺炎など、体のどこかに炎症がある場合に、その範囲や程度を把握するために用いられます。
- 外傷後の評価: 事故などで体に大きなダメージを受けた際に、内臓の損傷や出血の有無を正確に診断するために使われます。
CT検査単体では見つけにくい、以下のような病変も造影CTなら見つけやすくなります。
- 微細な病変: 小さな腫瘍や炎症の初期段階などは、造影剤がないと見落としてしまうことがあります。
- 病変の境界: 周囲の組織と病変の境界が不明瞭な場合でも、造影剤によって輪郭がはっきりします。
- 血流の変化: 炎症や腫瘍では、正常な組織とは異なる血流を示すことがあり、造影剤はその血流の変化を捉えるのに役立ちます。
それぞれの検査で得られる情報の「質」が、CTと造影CTの最も大きな違いと言えるでしょう。
造影剤による検査の流れ
造影CT検査を受ける場合、一般的な流れは以下のようになります。
- 検査前の問診: アレルギーの有無、持病、服用中の薬などを確認します。造影剤アレルギーのある方や、腎臓の機能が低下している方は、検査ができない場合や特別な注意が必要な場合があります。
- 造影剤の投与: 通常、腕の静脈から点滴で造影剤を注入します。注入中は、体が熱く感じたり、金属のような味がすることがありますが、一時的なものです。
- CT撮影: 造影剤が体全体に行き渡るタイミングに合わせて、CT装置で撮影を行います。
- 検査後: 検査後は、しばらく安静にし、水分を多めに摂ることが推奨されます。これは、造影剤を体外へ排出するためです。
造影剤を注入する速度やタイミングは、検査する部位や目的によって細かく調整されます。医師や看護師の指示に従って、リラックスして検査を受けましょう。
CTと造影CT、どちらが「優れている」?
「CTと造影CTの違い」を説明してきましたが、どちらの検査が「優れている」ということはありません。それぞれに得意なこと、不得意なことがあります。どちらの検査が適切かは、患者さんの症状や、医師が病気の原因として疑っているものによって決まります。
例えば、
- 骨折の有無を確認したい、単純に内臓の全体像を把握したい場合は、CT検査で十分な場合が多いです。
- しかし、がんと疑われる病変の詳しい性質を知りたい、血管の詰まりを診断したいといった場合には、造影CT検査が不可欠となります。
患者さん自身が「どちらの検査が良いか」を判断するのではなく、必ず医師の診断と指示に従って検査を受けてください。
造影剤の副作用と注意点
造影剤は安全性の高い薬剤ですが、ごくまれに副作用が現れることがあります。主な副作用としては、吐き気、嘔吐、かゆみ、発疹などが挙げられます。これらの症状は通常、軽度で一時的なものです。
しかし、非常にまれに、重篤なアレルギー反応(アナフィラキシー)が起こる可能性もゼロではありません。そのため、造影剤の投与中は、医療スタッフが注意深く患者さんの様子を観察しています。もし、検査中に気分が悪くなったり、いつもと違う症状が出た場合は、すぐに医療スタッフに伝えてください。
また、造影剤(特にヨード造影剤)は、腎臓から体外に排出されるため、腎臓の機能が低下している方や、妊娠中・授乳中の方には、使用が制限されたり、特別な配慮が必要となる場合があります。検査前に必ず医師や担当の医療スタッフに、ご自身の健康状態について正確に伝えてください。
CTと造影CTの費用の違い
「CTと造影CTの違い」には、費用の違いも含まれます。一般的に、造影剤を使用する造影CT検査は、造影剤を使用しない通常のCT検査よりも費用が高くなります。
これは、造影剤自体の費用がかかることに加えて、造影剤の投与や、より慎重な観察が必要となるため、検査時間が長くなったり、専門的な知識を持つスタッフの配置が必要になる場合があるためです。
健康保険が適用される場合、自己負担額は「2割」または「3割」となりますが、検査内容によって金額は変動します。検査を受ける前に、医療機関で具体的な費用について確認することをおすすめします。
まとめ:CTと造影CTの違いを理解して、賢く検査を受けよう
ここまで「CTと造影CTの違い」について詳しく見てきました。CT検査は体の内部構造を捉える基本的な検査であり、造影CT検査は造影剤を用いることで、血管や病変をより鮮明に、詳細に描出できる、より専門的な検査であることがお分かりいただけたかと思います。どちらの検査がご自身にとって必要か、それは医師が症状や状態を総合的に判断して決定します。検査について不安なことや疑問点があれば、遠慮なく医師や医療スタッフに質問し、納得した上で検査を受けるようにしましょう。