法人 と 個人 の 違い:ビジネスを始める前に知っておきたいこと

「法人」と「個人」、この二つの言葉、ビジネスの世界ではよく耳にしますよね。でも、具体的に何が違うのか、しっかり説明できますか? 法人 と 個人 の 違い を理解することは、これから事業を始めたい方、あるいはすでに事業を行っている方にとって、とても大切です。ここでは、この二つの違いを、分かりやすく、そして具体的に解説していきます。

責任範囲の違い:どこまで責任を負うの?

法人と個人、一番大きな違いは、事業で何か問題が起きたときに、どこまで責任を負うかという点です。個人事業主の場合、事業で発生した借金や損害について、文字通り「個人の財産」すべてで責任を負うことになります。つまり、自宅や車、貯金など、プライベートな財産も事業の借金返済に充てられる可能性があるのです。

一方、法人は「法人格」という、まるで人間とは別の「会社」としての権利や義務を持つ存在です。そのため、事業で発生した借金や損害については、原則として法人が持つ財産で清算されます。 これは、個人の財産が守られるという、非常に重要なメリットです。

例えるなら、個人事業主は「自分自身」が事業そのもの。法人は「自分とは別の、会社という箱」が事業を行うイメージです。この箱が倒産しても、個人の財産は基本的には無事、というわけですね。

税金のかかり方:どっちがお得?

法人と個人では、税金の計算方法や税率も異なります。個人事業主の場合、事業で得た利益は「所得」として、個人の所得税・住民税として課税されます。税率は所得が高くなるほど高くなる「累進課税」という仕組みです。

税金の種類 個人事業主 法人
所得税 あり(個人の所得税) なし(法人税)
住民税 あり(個人の住民税) あり(法人住民税)
事業税 あり なし(法人事業税)

法人税は、所得に応じて一定の税率で計算されることが多く、所得が一定額を超えると、個人事業主よりも法人の方が税負担が軽くなる場合があります。ただし、役員報酬への所得税や、法人から役員への配当金にも税金がかかるなど、複雑な部分もあります。

また、法人の場合、決算書を作成して税務署に提出する必要があります。これは、個人事業主よりも手間がかかる作業ですが、正確な経理を行うことで、税務調査のリスクを減らすことにもつながります。

信用度と社会的イメージ:どっちが信頼される?

一般的に、法人の方が個人事業主よりも信用度が高いと見られる傾向があります。これは、法人を設立するためには一定の手続きが必要であり、登記簿謄本などで会社の情報が公開されるため、透明性が高いと考えられるからです。

項目 個人事業主 法人
設立 開業届の提出のみ 設立登記など法的手続きが必要
情報公開 限られる 登記簿謄本などで公開
信用度 個人との同一視 独立した事業体としての信用

大きな取引や、銀行からの融資を受ける際など、法人であることが有利に働く場面も少なくありません。顧客や取引先から見ても、「会社」という形になっている方が、安心感や信頼感を与えやすいのかもしれません。

もちろん、個人事業主でも長年の実績や信頼を築いている方はたくさんいらっしゃいますが、新規で事業を始めたり、規模を拡大したりする際には、法人の形態が有利になることも考慮すべき点です。

資金調達のしやすさ:お金を借りやすいのはどっち?

事業を拡大していく上で、資金調達は非常に重要です。法人になると、銀行からの融資を受けやすくなる傾向があります。

  • 銀行からの融資 :法人は、個人の信用だけでなく、会社の業績や資産を基に審査が行われます。信用度が高いと判断されれば、より多くの資金を、有利な条件で借りられる可能性が高まります。
  • 出資の受け入れ :株式を発行して、投資家から資金を調達することも可能です。これは個人事業主にはできない方法です。

個人事業主の場合、融資は主に個人の信用力に依存します。事業で得た利益が安定していても、個人の借入限度額があったり、担保が必要になったりすることがあります。

事業承継のしやすさ:将来のバトンタッチは?

事業を将来にわたって引き継いでいく際にも、法人と個人では違いがあります。個人事業主の場合、事業の承継は、文字通り「事業そのもの」を引き継ぐことになります。事業用の資産(店舗、設備など)や、顧客との関係などを引き継ぎますが、場合によっては、事業で抱えている負債も引き継ぐことになります。

  1. 事業用資産の移転 :店舗や設備などの名義変更手続きが必要です。
  2. 許認可の再取得 :事業によっては、承継にあたり、改めて許認可を取得する必要が出てくることがあります。

一方、法人の場合は、株式を譲渡することで事業を承継させることができます。これは、事業の所有権だけをスムーズに引き継ぐことができるため、事業を継続しながら、経営権を移行させやすいというメリットがあります。

承継方法 個人事業主 法人
事業の移転 事業そのもの(資産・負債含む) 株式の譲渡など
経営権の移行 個別資産の移転 株主総会等による役員交代

もちろん、法人の場合でも、税金や手続きは複雑になることがありますので、専門家への相談は必須です。

設立の手間とコスト:どっちが簡単?

法人を設立するには、個人事業主として開業するよりも、時間も手間も、そして費用もかかります。個人事業主の場合は、税務署に開業届を提出するだけで、比較的簡単に事業を開始できます。

しかし、法人を設立するには、以下のような手続きが必要です。

  • 定款の作成・認証
  • 資本金の払い込み
  • 設立登記

これらの手続きには、専門家(司法書士や行政書士)に依頼する場合、数万円から数十万円の費用がかかることがあります。また、設立後も、毎月、法人住民税や消費税の申告、決算書の作成など、個人事業主よりも多くの事務作業が発生します。

「手軽に始めたい」「まずは小さく試したい」という場合は、個人事業主からスタートするのがおすすめです。

まとめとして、法人と個人事業主には、それぞれメリット・デメリットがあります。ご自身の事業内容、規模、将来の展望などを考慮して、どちらの形態が最適か、慎重に検討することが大切です。迷ったときは、税理士や中小企業診断士などの専門家に相談するのも良いでしょう。

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