「所得」と「収入」、この二つの言葉、似ているようで実は意味が違います。普段何気なく使っているかもしれませんが、この「所得 と 収入 の 違い」をしっかり理解することは、自分のお金の流れを知る上でとても大切です。今回は、この二つの言葉の違いを、分かりやすく解説していきます。
収入って、そもそも何?
まず、基本となる「収入」から見ていきましょう。収入とは、文字通り、あなたが一年間(またはある一定期間)に稼いだお金の「総額」のことです。例えば、会社員の方であれば、給料明細に書かれている「総支給額」がこれにあたります。アルバイトやパートの方も、働いた時間に応じて支払われる給料の合計額が収入です。
フリーランスや自営業の方の場合は、商品やサービスを提供して得た売上全体の金額が収入となります。たとえ、これから経費を差し引く前の金額であっても、まずは手に入ったお金の「入り口」の部分を指すのが収入だと考えてください。
この収入の金額を知ることは、自分の活動でどれだけのお金を生み出せたかを把握するための第一歩であり、とても重要です。
- 会社員:総支給額
- アルバイト・パート:給料の合計
- フリーランス・自営業:売上総額
所得って、どういうこと?
次に「所得」についてです。所得は、収入から「経費」を差し引いた、純粋な「儲け」のことです。先ほどの収入で例えると、会社員の方の給料で言えば、税金や社会保険料などが差し引かれる前の「総支給額」から、必要経費(例えば、仕事で使うための交通費や、資格取得のための学費など、収入を得るために直接かかった費用)を差し引いたものが所得に近くなります。ただし、会社員の場合は、会社がこれらの計算を代わりにしてくれることが多いので、自分で細かく計算することは少ないかもしれません。
フリーランスや自営業の方にとっては、この経費を差し引く作業が非常に重要になります。売上(収入)から、事業を行う上でかかった経費(材料費、家賃、光熱費、広告費など)を差し引いたものが、事業所得となります。この所得が、最終的に税金計算の対象となる金額です。
所得税や住民税といった税金は、この「所得」に対してかかります。つまり、収入が多くても、経費がたくさんかかれば、所得は少なくなり、結果として税金も少なくなるということです。
所得の種類は、大きく分けて以下のようになります。
- 給与所得:会社員やアルバイトなどの給料
- 事業所得:フリーランスや自営業の売上から経費を引いたもの
- 不動産所得:家賃収入など
- 一時所得:懸賞金や宝くじの当選金など
所得 と 収入 の 違い:具体例で理解しよう
では、具体例で「所得 と 収入 の 違い」を見ていきましょう。例えば、あなたがフリーランスのウェブデザイナーだとします。1ヶ月で50万円の仕事を受注し、お客様から入金があったとします。この50万円が「収入」です。
しかし、ウェブサイトを作るためには、パソコンやソフトウェア、インターネット回線など、さまざまな経費がかかります。仮に、これらの経費が10万円かかったとしましょう。この場合、あなたの「所得」は、50万円(収入)から10万円(経費)を引いた40万円となります。
この40万円が、税金計算の対象となる金額になります。もし、あなたが会社員で、月給が30万円(総支給額)だったとします。この30万円が「収入」です。ここから、所得税や住民税、社会保険料などが差し引かれますが、会社員の場合は、給与所得控除という、収入に応じた一定額を差し引く制度があります。そのため、自分で細かく経費を計算する必要はあまりありません。
このように、収入は「入ってきたお金の総額」、所得は「そこから経費を引いた純粋な儲け」と考えると、その違いが分かりやすくなるでしょう。
| 項目 | 説明 | 例 |
|---|---|---|
| 収入 | 稼いだお金の総額 | 月給30万円、売上50万円 |
| 経費 | 収入を得るためにかかった費用 | (会社員は給与所得控除で代用されることが多い)事業の材料費、広告費など |
| 所得 | 収入から経費を引いた純粋な儲け | 月給30万円 - (控除額)=所得、売上50万円 - 経費10万円 = 所得40万円 |
なぜ「所得 と 収入 の 違い」を知ることが大切なのか?
「所得 と 収入 の 違い」を理解することは、単にお金の言葉を知るだけでなく、現実的なお金の管理や計画に役立ちます。例えば、将来の目標のために貯金や投資をしたいと考えたとき、目標額を設定する基準は、手元に残る「所得」で考えるべきです。収入だけを見て「これだけ稼げたから、これだけ使える」と考えてしまうと、税金や経費の支払いができなくなってしまう可能性があります。
また、融資を受けたい時や、補助金・助成金の申請をする場合なども、一般的には「所得」が重視されます。なぜなら、事業の「実力」や「儲ける力」を測る指標として、所得の方がより正確だからです。収入だけが高くても、経費がたくさんかかってしまえば、利益は出ていないということになりかねません。
さらに、確定申告を自分で行う場合や、税理士さんに相談する際にも、この「所得」の概念を理解しているかどうかで、スムーズに進むかどうかが変わってきます。正しい知識があれば、無駄な税金を払うことを防いだり、有利な制度を活用したりすることも可能になります。
収入の種類とその特徴
収入には、先ほども少し触れましたが、さまざまな種類があります。それぞれの特徴を理解しておくことも、自分の収入全体を把握するために役立ちます。
- 給与所得 :会社員やアルバイト、パートなどで得る給料。毎月決まった額が支払われることが多いですが、残業代やインセンティブなどで変動することもあります。
- 事業所得 :フリーランスや自営業者が、商品やサービスを提供して得る利益。売上から経費を差し引いた額が所得となります。
- 不動産所得 :アパートやマンションなどの不動産を貸し付けることで得られる家賃収入。
- 利子所得 :預貯金の利子や、債券の利子など。
- 配当所得 :株式の配当金など。
- 一時所得 :懸賞金、宝くじの当選金、生命保険の満期保険金など、一時的に得られる所得。
これらの収入は、それぞれ所得税の計算方法が少しずつ異なります。例えば、給与所得には「給与所得控除」がありますが、事業所得には「必要経費」を差し引くといった具合です。
- 給与所得控除(会社員など)
- 必要経費(フリーランス、自営業など)
- 不動産投資における減価償却費
- 株式投資における譲渡損益
所得を計算する上での注意点
所得を正確に計算するためには、いくつか注意しておきたい点があります。まず、経費として認められるものと認められないものをきちんと区別することです。事業に関係ない個人的な支出は、経費として計上することはできません。
また、収入の種類によっては、税金がかかるタイミングが異なります。例えば、給与所得は働いた月に収入が発生しますが、不動産所得などは、家賃を受け取った時点で収入となります。これらのタイミングを正確に把握することが、正しい所得計算につながります。
さらに、給与所得者であっても、副業などで他の所得がある場合は、確定申告が必要になることがあります。自分の所得がいくらになるのか、そしてどのような手続きが必要なのかを、事前に確認しておくと安心です。
- 経費の範囲を正しく理解する
- 収入が発生するタイミングを正確に把握する
- 副業がある場合の確定申告の必要性を確認する
「所得税」と「収入」の関係
所得税は、まさに「所得」にかかる税金です。「収入」そのものに税金がかかるわけではありません。例えば、年間の収入が500万円あったとしても、そこから各種控除(後述します)を差し引いて計算された「所得」が200万円であれば、所得税はその200万円に対して計算されます。この「所得」の金額が、税金を計算する上での基盤となるのです。
所得税の計算では、まず「収入」から「必要経費」や「給与所得控除」などを差し引いて「所得」を算出します。その後、この「所得」からさらに「所得控除」(扶養控除、医療費控除、基礎控除など)を差し引いて、最終的な「課税所得」が計算されます。この課税所得に税率をかけて、所得税額が決まるのです。
したがって、所得税を抑えるためには、収入を増やすことだけでなく、経費を適切に計上したり、利用できる控除を最大限に活用したりすることが重要になります。
- 収入 − 必要経費/給与所得控除 = 所得
- 所得 − 所得控除 = 課税所得
- 課税所得 × 税率 = 所得税額
「所得」の多さが生活の質にどう影響するか
「所得」の多さは、そのまま私たちの生活の質に直結すると言えます。なぜなら、所得は、税金や社会保険料が差し引かれた後の「手取り額」に大きく影響するからです。手取り額が増えれば、生活費、貯蓄、趣味、自己投資などに使えるお金が増え、より豊かな生活を送ることができます。
例えば、同じ収入でも、経費の管理がしっかりしていて所得が高い人は、税負担も大きくなりますが、その分、自由に使えるお金も多くなります。逆に、収入は高いものの、経費がかさんで所得が低い場合は、手取り額が想像より少なく、自由に使えるお金も限られてしまうことがあります。
また、将来のライフイベント(住宅購入、子どもの教育費、老後の生活など)に備えるためにも、計画的に所得を増やしていくことが大切です。そのためには、自分がどのような所得を得ているのか、その所得を増やすためにはどうすれば良いのかを、継続的に考えていく必要があります。
- 手取り額の増加
- 貯蓄・投資への余裕
- 自己投資や趣味への投資
「所得 と 収入 の 違い」を理解することは、自分のお金の流れを正しく把握し、賢く管理するための第一歩です。この知識を活かして、より豊かで安心できる生活を目指しましょう。