確定申告をする上で、多くの人がつまずくのが「所得」と「収入」の違いです。この二つの言葉、何となく似ているようで、実は税金計算においては全く異なる意味を持っています。「確定申告所得と収入の違い」をしっかり理解することは、正確な確定申告のために非常に重要です。
「収入」は稼いだお金の総額、「所得」は税金がかかる部分
まず、一番基本的なところから説明しましょう。 「収入」とは、文字通り、あなたが1年間で稼いだお金の総額のこと です。例えば、給料、事業で得た売上、副業で得た報酬など、すべてが収入に含まれます。
一方、「所得」というのは、その収入から、その収入を得るためにかかった「経費」や「控除」を差し引いた後の金額のことです。つまり、 税金がかかるのは、この「所得」に対して なのです。経費や控除を差し引いた残りが、実際にあなたの手元に残るお金（最終的な利益）に近いものと考えても良いでしょう。
- 収入：稼いだお金の総額
- 所得：収入から経費や控除を差し引いた、税金がかかる部分
ここで、簡単な例を見てみましょう。
| 収入（例：アルバイト代） | 10万円 |
| 収入を得るための経費（例：交通費） | 1万円 |
| 所得（収入 - 経費） | 9万円 |
この場合、収入は10万円ですが、税金がかかるのは9万円の所得に対して、ということになります。
給与所得者の「収入」と「所得」
会社員など、給与所得を得ている方の場合も、収入と所得の違いを理解しておきましょう。給与所得における「収入」は、額面給与、つまり税金や社会保険料が引かれる前の総支給額のことです。
これに対して、「所得」は、その収入から「給与所得控除」というものを差し引いた金額になります。給与所得控除は、会社員が仕事をするために必要となる様々な費用（スーツ代、通勤費、交際費など）を、国が一定のルールでまとめて計算して、給料から差し引いてくれる制度です。なので、給料明細に書かれている「手取り額」とはまた少し違ってきます。
- 額面給与（収入）
- 給与所得控除（会社員のための特別控除）
- 給与所得（所得）
この給与所得が、年末調整で計算され、最終的な所得税額が決まる元になります。
自営業・フリーランスの「収入」と「所得」
自営業やフリーランスの方々にとって、収入と所得の違いは、確定申告で最も重要になる部分です。自営業の「収入」は、文字通り、商品やサービスを提供して得た売上全体の金額を指します。
しかし、事業を継続するためには様々な「経費」がかかります。例えば、材料費、家賃、光熱費、広告宣伝費、交通費、従業員への給料など、事業を行う上で必要不可欠な支出です。これらの経費を収入から差し引いたものが「事業所得」となります。 この事業所得が、税務署に申告する際の「所得」 となります。
具体的には、以下のようになります。
- 収入（売上）
- − 経費（売上原価、販売費及び一般管理費など）
- ＝ 事業所得
経費をどれだけ正確に計上できるかが、所得税額を左右する大きなポイントとなります。
所得の種類による違い
所得には、給与所得や事業所得の他にも、さまざまな種類があります。それぞれの所得によって、計算方法や控除されるものが異なります。例えば、以下のような所得があります。
- 利子所得：預貯金の利子など
- 配当所得：株式の配当金など
- 不動産所得：家賃収入など
- 譲渡所得：土地や建物などを売却して得た利益
- 一時所得：懸賞金、保険金など
これらの所得も、それぞれ収入から必要経費を差し引いて所得を計算しますが、計算方法が複雑なものもあります。
所得の種類によって、確定申告でどのように計算し、申告する必要があるかが決まります。そのため、自分がどのような所得を得ているのかを正確に把握することが重要です。
「所得」を計算する上での「経費」の重要性
先ほどから何度も触れていますが、「所得」を計算する上で「経費」は非常に重要な役割を果たします。収入から経費を差し引くことで、税金がかかる対象となる「所得」の金額が決まるからです。
経費として認められるためには、いくつかの条件があります。一般的には、
- 事業（または収入を得る活動）に直接関係があること
- 社会通念上、事業に必要な支出であること
などが挙げられます。領収書などをしっかり保管し、漏れなく経費計上することが、節税につながります。
しかし、中には「これは経費になるのかな？」と迷うような支出もあるかもしれません。そういった場合は、税務署や税理士に相談することをおすすめします。
「所得」と「収入」の違いで変わる確定申告
「確定申告所得と収入の違い」を理解することは、確定申告書を作成する上で不可欠です。確定申告書には、収入の金額を記入する欄と、所得の金額を記入する欄があります。この二つを混同してしまうと、正確な申告ができなくなってしまいます。
例えば、給与明細に書かれている「総支給額」を収入として申告し、そこからさらに個人的な経費を差し引こうとすると、計算が大きく狂ってしまいます。また、自営業で売上をそのまま所得として申告してしまうと、本来差し引けるはずの経費が考慮されず、本来よりも高い税金を払うことになってしまう可能性もあります。
正確な申告は、税金を適正に納めるためだけでなく、将来的なトラブルを避けるためにも非常に大切です。
まとめ：確定申告は「所得」がカギ！
「確定申告所得と収入の違い」について、ご理解いただけたでしょうか？収入は稼いだお金の総額、所得はそこから経費や控除を差し引いた、税金がかかる部分です。確定申告では、この「所得」の金額が最も重要になります。ご自身の収入の種類をしっかり把握し、関連する経費や控除を漏れなく計算することで、正確で有利な確定申告を行いましょう。