「特別養護老人ホーム」と「養護老人ホーム」、名前は似ていますが、実は提供されるサービスや対象となる方が大きく異なります。この二つの施設の違いを理解することは、高齢者ご本人やご家族が適切な施設を選ぶ上で非常に重要です。今回は、特別養護老人ホームと養護老人ホームの違いについて、分かりやすく解説していきます。
目的と対象者の違い:どちらも「老人ホーム」だけど、役割が違う!
まず、一番大きな違いはその「目的」と「対象者」にあります。特別養護老人ホームは、病気や障害などで日常生活を送るのに常時介護が必要な方(要介護3以上と認定された方)が、住み慣れた地域で安心して暮らせるように、食事や入浴、排泄などの介助といった、手厚い介護サービスを提供する施設です。一方、養護老人ホームは、環境上の理由(経済的理由、家族からの虐待など)で居宅での生活が困難な方で、かつ、身体や精神の障害がない(または軽度で、介護保険サービスの対象とならない)方が、自立した生活を送れるように支援する施設になります。
それぞれの施設で受けられるサービス内容にも違いがあります。
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特別養護老人ホーム:
- 日常生活の介護(食事、入浴、排泄介助など)
- 健康管理(看護師による健康チェック、服薬管理など)
- リハビリテーション
- レクリエーション活動
- 必要に応じた医療処置
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養護老人ホーム:
- 日常生活の支援(安否確認、相談、助言など)
- 健康管理の相談
- 地域との交流の機会提供
- 必要に応じた生活支援
このように、特別養護老人ホームは「介護」を必要とする方のための施設であり、養護老人ホームは「生活支援」を必要とする方のための施設であるという点が、最も重要な違いと言えるでしょう。
利用の条件:介護保険?それとも…?
利用を検討する上で、利用できる条件も大きく異なります。特別養護老人ホームを利用するには、原則として「介護保険」による要介護認定で「要介護3」以上と認定されていることが必要です。つまり、ご本人がどの程度介護を必要としているかを、市区町村の担当者やケアマネージャーが判断し、その結果に基づいて入所が検討されます。
一方、養護老人ホームは、介護保険の対象外となる場合がほとんどです。利用するには、お住まいの市区町村の判断が必要となります。具体的には、市区町村の窓口に相談し、ご本人の家庭環境や経済状況などを審査した上で、利用の可否が決まります。
| 施設名 | 主な利用条件 |
|---|---|
| 特別養護老人ホーム | 介護保険による要介護認定(要介護3以上) |
| 養護老人ホーム | 市区町村の審査(環境上の理由、経済的理由など) |
ご自身の状況や、ご家族の状況に合わせて、どちらの施設がより適しているかを判断することが大切です。
費用:これも大きな違い!
費用面でも、両施設には違いがあります。特別養護老人ホームは、介護保険が適用されるサービスが中心となるため、利用者の負担額は、所得や要介護度によって異なりますが、一般的には比較的低額に設定されています。ただし、居住費や食費、日常生活費などは別途必要になります。
対して、養護老人ホームは、公的な施設としての性格が強いため、利用料は所得に応じて決定されることが一般的です。収入が少ない方ほど負担額が少なくなるように配慮されています。ただし、こちらも食費や日常生活費などは実費負担となる場合があります。
施設の種類と役割:安心できる暮らしを支える
「特別養護老人ホーム」は、その名の通り「特別」なケアが必要な方を対象とした、公的な介護保険施設です。「在宅で生活するのが難しいけれど、施設で手厚い介護を受けたい」というニーズに応えるための施設と言えます。
一方、「養護老人ホーム」は、社会的養護の観点から、生活環境に問題を抱える高齢者の方々が、安心して生活できる場を提供することを目的としています。ここでは、介護よりも、生活相談や地域とのつながりを保つための支援が中心となります。
どちらの施設も、高齢者の皆さんが安心して暮らせるように、それぞれの役割を担っています。
入所までの流れ:どこに相談すればいいの?
入所までの流れも、施設によって異なります。特別養護老人ホームの場合、まずは市区町村の窓口や地域包括支援センター、またはケアマネージャーに相談するのが一般的です。そこで介護保険の申請を行い、要介護認定を受けた後、希望する特別養護老人ホームに申し込み、審査を経て入所となります。
養護老人ホームの場合は、まずお住まいの市区町村の福祉担当窓口に相談します。そこで、ご本人の状況を説明し、利用の可否について審査を受けることになります。審査には、家庭訪問や書類の提出などが含まれる場合があります。
まとめ:知っておけば安心!
特別養護老人ホームと養護老人ホームは、どちらも高齢者の生活を支える大切な施設ですが、その目的、対象者、利用条件、そして提供されるサービスが大きく異なります。この違いを理解しておくことで、ご自身やご家族にとって最適な施設選びができるようになります。もし、どちらの施設を利用すべきか迷った場合は、まずは市区町村の窓口や地域包括支援センターに相談してみましょう。