肝不全と肝硬変の違い:病態を理解しよう!

「肝不全」と「肝硬変」、この二つの言葉を聞いたことはありますか?どちらも肝臓の病気ですが、実は意味が異なります。今回は、 肝不全と肝硬変の違い を分かりやすく解説していきます。病気のメカニズムや、それぞれどのような状態なのかを見ていきましょう。

肝不全と肝硬変:病気の本質に迫る

まず、肝不全と肝硬変は、病気の進行度や原因、そして肝臓の機能低下の度合いにおいて違いがあります。肝硬変は、肝臓の細胞が長年のダメージによって硬くなり、その形が変化してしまう病気です。一方、肝不全は、肝臓が本来持っている働き(解毒や栄養の合成など)が著しく低下してしまった状態を指します。つまり、肝硬変は肝不全を引き起こす原因の一つになり得るのです。

具体的に見ていきましょう。

  • 肝硬変: 慢性的な肝臓の炎症(ウイルス性肝炎やアルコール性肝障害など)が長期間続いた結果、肝臓の組織が線維化(硬くなること)し、機能が低下した状態。
  • 肝不全: 肝臓の機能が、病気や外傷などによって急激に、または徐々に失われた状態。肝硬変が進行した結果、肝不全になることもあれば、急性肝炎など他の原因で突然肝不全になることもあります。

肝臓の健康を保つことは、全身の健康維持に非常に重要です。

肝硬変の進行:硬くなる肝臓

肝硬変は、肝臓に炎症が繰り返し起こることで、肝臓の細胞が傷つき、それを修復する過程で線維という硬い組織が増えてしまう病気です。例えるなら、風船が何度も膨らんだりしぼんだりするうちに、表面がシワシワになって硬くなっていくようなイメージです。

肝硬変の進行には、いくつかの段階があります。

  1. 初期: 肝臓に炎症が始まり、少しずつ線維が増え始めます。自覚症状はほとんどないことが多いです。
  2. 中期: 線維が増え、肝臓が硬くなり始めます。食欲不振や倦怠感などの症状が出ることがあります。
  3. 後期(肝硬変): 肝臓がかなり硬くなり、肝臓の機能が大きく低下します。腹水や黄疸などの重い症状が現れることがあります。

肝硬変の主な原因は以下の通りです。

原因 説明
ウイルス性肝炎 B型肝炎やC型肝炎ウイルスによる感染で、肝臓に炎症が起こります。
アルコール性肝障害 過度の飲酒によって肝臓に負担がかかり、炎症を引き起こします。
非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD) 肥満や糖尿病などが原因で、肝臓に脂肪が溜まり、炎症を起こすことがあります。

肝不全の症状:肝臓がお疲れモード

肝不全は、肝臓が正常に働けなくなった状態です。肝臓は「沈黙の臓器」とも言われ、機能がかなり低下するまで症状が出にくいのですが、肝不全になると様々な症状が現れます。

肝不全の症状は多岐にわたります。

  • 全身症状: 体がだるい、食欲がない、体重が減る、吐き気、嘔吐など。
  • 消化器症状: お腹が張る(腹水)、吐血、下血、便秘または下痢など。
  • 皮膚・目: 皮膚がかゆくなる、黄疸(皮膚や白目が黄色くなる)など。
  • 精神症状: ぼーっとする、言動がおかしくなる(肝性脳症)など。

肝不全は、その原因によって「急性肝不全」と「慢性肝不全」に分けられます。

  1. 急性肝不全: 病原体(ウイルスなど)や薬物中毒など、短期間で肝臓に急激なダメージが起こり、数日から数週間で発症します。
  2. 慢性肝不全: 肝硬変などが原因で、長期間かけて肝臓の機能が徐々に低下していく状態です。

肝硬変と肝不全の関係性:因果関係を理解しよう

肝硬変と肝不全は、密接な関係にあります。肝硬変は、肝臓が硬くなり、その機能が低下していく病気ですが、進行すると肝不全という状態に至ることが多いのです。つまり、肝硬変は肝不全の「原因」の一つと言えます。

この関係を整理してみましょう。

  • 肝硬変 → 肝不全: 肝臓が長年のダメージで硬くなり、機能が著しく低下した状態(肝硬変)がさらに悪化すると、肝臓が本来の働きを全くできなくなってしまう(肝不全)ことがあります。
  • 肝不全 ≠ 肝硬変: ただし、肝不全になる原因は肝硬変だけではありません。急性肝炎や薬物中毒など、他の原因で肝臓が急激にダメージを受けることでも肝不全は起こり得ます。

肝硬変は、肝臓の構造的な変化を指し、肝不全は肝臓の機能的な低下を指す、と覚えておくと良いでしょう。

肝硬変の検査:病気のサインを見つける

肝硬変かどうかを診断するためには、様々な検査が行われます。これらの検査は、肝臓の形や大きさ、硬さ、そして機能などを詳しく調べるために行われます。

主な検査方法には以下のようなものがあります。

  1. 血液検査: 肝臓の働きを示す数値(AST、ALT、γ-GTPなど)や、肝臓で合成されるタンパク質(アルブミンなど)の量を調べます。
  2. 画像検査:
    • 腹部超音波(エコー):肝臓の形や大きさを確認し、表面の凹凸や硬さなどを評価します。
    • CT検査、MRI検査:より詳しく肝臓の内部の状態を把握できます。
  3. 内視鏡検査: 食道や胃の静脈瘤(血管がコブのように膨らんだもの)の有無を調べます。これは肝硬変の合併症の一つです。
  4. 肝生検: 最終的な診断のために、肝臓の一部を採取して顕微鏡で調べることもあります。

肝不全の治療:機能回復を目指す

肝不全の治療は、その原因や重症度によって大きく異なります。急性肝不全の場合は、原因を取り除き、肝臓の回復を待つことが中心となります。慢性肝不全の場合は、残っている肝臓の機能を最大限に活かし、進行を遅らせることが目標となります。

治療の選択肢は多岐にわたります。

  • 薬物療法: 肝臓の負担を軽減する薬や、合併症を抑える薬などが使われます。
  • 食事療法: タンパク質の摂取量を調整したり、塩分を控えるなどの食事指導が行われます。
  • 対症療法: 腹水やむくみ、意識障害などの症状に対して、それらを和らげる治療を行います。
  • 肝移植: 重症の場合は、健康な肝臓を移植する肝移植が唯一の根治療法となることがあります。

早期発見と適切な治療は、予後を大きく左右します。

肝硬変と肝不全、どちらが重い?:病状の度合い

「肝硬変」と「肝不全」、どちらがより重い病気か、という単純な比較は難しい場合があります。なぜなら、肝硬変は病気そのものを指し、肝不全は肝臓の機能が低下した「状態」を指すからです。

しかし、一般的には、肝硬変が進行して肝機能が著しく低下した状態が肝不全であるため、 肝不全は肝硬変の重症な段階 と言えることが多いです。ただし、急性肝炎などで急激に肝臓の機能が失われた場合も肝不全であり、この場合は肝硬変になっていなくても非常に危険な状態です。

肝硬変の進行度を評価する指標には「チャイルド・ピュー分類」などがあります。

  1. A(早期): 肝硬変の初期段階で、肝機能は比較的保たれています。
  2. B(中期): 肝機能がやや低下し、症状が出始めることがあります。
  3. C(後期): 肝機能が著しく低下し、肝不全の症状が見られることが多いです。

このように、肝硬変の進行度と肝不全の状態は関連が深いのです。

肝硬変と肝不全の違いを理解することは、病気と向き合う上で非常に大切です。もし体の異変を感じたら、迷わず専門医に相談しましょう。

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