「医療証」と「保険証」、どちらも病院にかかる際に必要になる書類ですが、実はそれぞれ役割が違います。この二つの「医療証と保険証の違い」をしっかり理解しておくことは、いざという時に慌てず、スムーズに医療サービスを受けるためにとても大切です。今回は、この「医療証と保険証の違い」について、わかりやすく解説していきます。
そもそも、保険証って何?
まず、一番身近な「保険証」。これは、あなたが国民健康保険や健康保険組合などの公的な医療保険に加入していることを証明するものです。私たちが病院で診察を受けるとき、この保険証を提示することで、医療費の一部(通常は3割)だけを支払えば済むようになります。残りの医療費は、国や自治体、または会社の保険組合などが負担してくれる、いわば「もしもの時のためのセーフティネット」の証なのです。
保険証がないと、原則として医療費は全額自己負担になってしまいます。これは、高額な治療を受ける場合、大きな負担となりかねません。 だからこそ、保険証は常に携帯し、有効期限も確認しておくことが非常に重要です。
- 保険証の種類
- 国民健康保険証
- 被用者保険証(会社の健康保険など)
- 後期高齢者医療被保険者証
これらの保険証は、それぞれ加入している制度によって発行元が異なりますが、基本的な役割は同じです。
医療証って、どういうもの?
次に「医療証」ですが、これは保険証だけではカバーしきれない医療費の負担を軽減するための補助的な書類です。つまり、保険証で「公的医療保険が適用される」という前提があり、さらに「特定の条件を満たす人に、追加で医療費の助成を行いますよ」という証明書なのです。
医療証には、さまざまな種類があります。例えば、子育て支援のための「子ども医療費助成医療証」、ひとり親家庭などを支援する「ひとり親家庭医療費助成医療証」、重度の病気や障がいを持つ方への「自立支援医療受給者証」などがあります。これらの医療証を持っていると、保険証と合わせて提示することで、医療費の自己負担額がさらに軽減されたり、一部無料になったりする場合があります。
医療証は、それぞれの制度によって申請し、発行されるものです。保険証のように自動的に手元に届くものではなく、 「こういう支援がありますよ」という制度を知り、自分で手続きをすることが必要です。
| 医療証の種類 | 主な対象者 | 特徴 |
|---|---|---|
| 子ども医療費助成医療証 | 小・中学生など | 医療費の自己負担分(一部または全部)を助成 |
| ひとり親家庭医療費助成医療証 | ひとり親とその子ども | 医療費の自己負担分(一部または全部)を助成 |
| 自立支援医療受給者証 | 一定の障がいや病気を持つ方 | 更生医療、育成医療、精神通院医療などの費用を助成 |
保険証と医療証、一緒に使うの?
「医療証と保険証の違い」を理解したら、次に気になるのが「これらって、どうやって一緒に使うんだろう?」という点です。基本的には、病院を受診する際には、まず「保険証」を提示して、公的医療保険の適用を受けます。その後、もし「医療証」も持っている場合は、その医療証も一緒に提示します。これにより、保険証による自己負担額から、医療証の制度による助成分が差し引かれて、最終的な窓口での支払額が決まる、という流れになります。
例えば、子ども医療費助成制度がある地域で、お子さんが風邪で病院にかかったとしましょう。まず、保護者の方は「保険証」を提示します。これにより、医療費は本来3割負担になるところ、保険証が適用されます。次に、お持ちの「子ども医療費助成医療証」も一緒に提示します。この医療証の制度によっては、さらに自己負担額が軽減されたり、窓口での支払いが無料になったりするのです。
- 受診時の流れ
- 保険証を提示する
- 医療証(持っている場合)を提示する
- 窓口で自己負担額を支払う
この順番を間違えると、正しい金額が請求されない場合もあるので注意しましょう。
知っておきたい!公費負担医療制度とは
「医療証」の多くは、「公費負担医療制度」という国の制度に基づいています。これは、特定の疾病や状態にある方に対し、医療費の自己負担を軽減したり、無料にしたりすることで、その方の治療や生活を支援するための制度です。つまり、公的な支援として、健康保険だけでは対応しきれない部分を補ってくれる、とてもありがたい制度なのです。
公費負担医療制度には、先ほど挙げた自立支援医療の他にも、以下のようなものがあります。
- 難病患者医療費助成制度
- 精神障害者保健福祉手帳
- 育成医療
- 更生医療
これらの制度を利用するには、それぞれ申請手続きが必要になります。 ご自身の状況に合った制度がないか、自治体の窓口などで確認してみることをお勧めします。
低所得者向けの医療費助成
経済的な理由で医療費の支払いが困難な方のために、低所得者向けの医療費助成制度も存在します。これは、国民健康保険や社会保険の加入者でありながら、所得が一定基準以下である場合に適用されることがあります。例えば、「一部負担金減免制度」などがこれにあたります。
この制度を利用することで、本来支払うべき医療費の一部または全部が免除されることがあります。申請には、所得を証明する書類などが必要になります。
| 制度名 | 対象者 | 主な内容 |
|---|---|---|
| 一部負担金減免制度 | 低所得者など | 医療費の自己負担分を減免 |
ひとり親家庭への支援
ひとり親家庭の方々も、経済的な負担が大きくなりがちです。そのため、多くの自治体で「ひとり親家庭医療費助成制度」が設けられています。この制度を利用することで、ひとり親とその子どもたちの医療費の自己負担額が軽減されます。
この制度の対象となるのは、一般的に以下のいずれかの資格を持つ方です。
- 父または母が死亡した
- 父母が離婚した
- 父または母が重度の障がい(国民年金法による1級・2級相当)の状態にある
- 父または母の生死が1年以上明らかでない
- その他、上記に準ずる状態にある
申請には、戸籍謄本や住民票、所得証明書など、様々な書類が必要になります。
高齢者向けの医療費助成
高齢になると、病気やケガのリスクも高まり、医療費の負担が重くなることがあります。そのため、高齢者向けの医療費助成制度も充実しています。代表的なものに、「後期高齢者医療制度」があります。これは、75歳以上の方(65歳以上で一定の障がいがある方も含む)が加入する医療保険制度です。
また、後期高齢者医療制度とは別に、一定の所得以下の高齢者に対して、医療費の自己負担割合を軽減する制度などもあります。これらの制度については、お住まいの市区町村や後期高齢者医療広域連合に問い合わせてみましょう。
障がいのある方への支援
障がいのある方々も、病気や治療で医療費がかさむことがあります。そのため、障がいのある方を支援するための公費負担医療制度も用意されています。「自立支援医療」はその代表格であり、身体や精神の障がい、あるいは知的障がいのある方に対し、その障がいの改善や日常生活の支援に必要な医療費の自己負担を軽減するものです。
自立支援医療には、さらに細かく分類があります。
- 更生医療(18歳以上の身体障がい者)
- 育成医療(18歳未満の身体障がい者、またはそのおそれのある児童)
- 精神通院医療(精神障がいのある方)
これらの医療を受けるためには、医師の診断書や指定の申請書を提出する必要があります。
このように、「医療証」と「保険証」は、どちらも医療を受ける際に大切なものですが、その役割や対象となる範囲は異なります。「保険証」は公的医療保険への加入を証明し、医療費の大部分をカバーする基本的なもの。「医療証」は、さらに特定の条件に当てはまる人の医療費負担を軽減するための補助的なものです。ご自身の状況に合わせて、これらの制度を上手に活用していくことが、健康で安心した生活を送るために役立ちます。