Webページを作る上で欠かせない「HTML」と、データのやり取りでよく目にする「XML」。この二つ、似ているようで実は目的や使い方が大きく異なります。今回は、この HTMLとXMLの違い を分かりやすく、そして詳しく解説していきます。Web開発の基本をしっかりと押さえるために、ぜひ最後まで読んでみてください。
HTMLとXMLの根本的な目的の違い
HTML(HyperText Markup Language)は、Webブラウザで表示するための「マークアップ言語」です。Webページがどのような構造になっているか、例えば「これは見出しだ」「これは段落だ」「これは画像だ」といった情報をブラウザに伝えるのが役割です。そのため、HTMLにはあらかじめ「
<h1>
」や「
<p>
」、「
<img>
」といった定義済みのタグがたくさん用意されています。これらを組み合わせることで、見栄えの良いWebページを作り上げることができるのです。
一方、XML(eXtensible Markup Language)は、データを構造化して表現・交換するための「マークアップ言語」です。XMLの最大の特徴は、「
自分でタグを自由に定義できる
」という点です。例えば、本の情報を管理したいなら「
<book>
」、「
<title>
」、「
<author>
」といったタグを自分で作って、本のタイトルや著者名などのデータを分かりやすく記述できます。XMLは、データの意味を明確にすることに重点を置いており、表示方法よりもデータの中身そのものを重視します。
まとめると、HTMLは「 見せるため 」の言語、XMLは「 データを扱うため 」の言語と言えます。それぞれの得意なことが違うため、用途に応じて使い分けることが重要です。
- HTMLの主な目的:Webブラウザでの表示
- XMLの主な目的:データの構造化と交換
HTMLの構造と要素
HTMLは、Webページを構成するための「骨組み」のようなものです。要素(タグ)と属性、そしてテキストコンテンツで成り立っています。例えば、以下のような構造になっています。
<tagname attribute="value">Content</tagname>
ここでいう「tagname」は、例えば「
<p>
」や「
<div>
」など、あらかじめ決められたものです。属性「attribute」は、その要素の性質をさらに詳しく指定するためのもので、「
class
」や「
id
」などがよく使われます。そして「Content」が、実際にWebページに表示されるテキストや画像などの内容です。
HTMLの要素には、大きく分けて以下の2種類があります。
-
ブロックレベル要素:常に新しい行から始まり、左右いっぱいに幅を取るもの(例:
<p>,<div>) -
インライン要素:要素の幅だけで、行を改めずに配置されるもの(例:
<span>,<a>)
これらの要素を適切に組み合わせることで、複雑なWebページも論理的な構造を持って記述することができます。
XMLの柔軟性と拡張性
XMLの最大の魅力は、その「拡張性」にあります。XMLでは、HTMLのようにあらかじめ定義されたタグを使うのではなく、データの内容に合わせて自由にタグ名を決めることができます。これにより、どのような種類のデータであっても、その意味を損なわずに表現することが可能になります。
例えば、 顧客情報をXMLで表現する場合、以下のようなタグを自分で定義できます。
| タグ名 | 意味 |
|---|---|
<customer>
|
顧客情報全体 |
<name>
|
顧客の名前 |
<address>
|
顧客の住所 |
<phone>
|
顧客の電話番号 |
このように、XMLはデータの「意味」を重視するため、人間が読んでも理解しやすく、そしてコンピュータが処理しやすいという特徴を持っています。また、XMLは「検証可能」であるという点も重要です。DTD(Document Type Definition)やXML Schemaといった仕組みを使うことで、XML文書の構造や内容が正しいかどうかをチェックすることができます。
この検証機能があるおかげで、異なるシステム間でデータをやり取りする際にも、データの整合性を保ちやすくなります。XMLは、単にデータを記述するだけでなく、そのデータの「品質」を保証する役割も担っているのです。
HTMLとXMLの構文の違い
HTMLとXMLは、どちらもマークアップ言語なので、似たような書き方をしますが、構文にはいくつか違いがあります。一番分かりやすいのは、「
タグの閉じ方
」です。HTMLでは、一部のタグ(例えば
<img>
や
<br>
)は閉じタグがなくてもブラウザが解釈してくれますが、XMLでは全てのタグに必ず閉じタグが必要です。例えば、HTMLで
<img src="image.jpg">
と書けても、XMLでは
<img src="image.jpg"></img>
のように書かなければなりません。
また、XMLでは「
大文字と小文字を区別
」します。つまり、「
<MyTag>
」と「
<mytag>
」は別のタグとして扱われます。HTMLも本来は区別しますが、現在のブラウザはほとんどの場合、大文字・小文字を区別せずに表示してくれるため、あまり意識されません。しかし、XMLでは厳密に区別されるため、記述ミスがあるとエラーの原因になります。
さらに、XMLでは「
属性値は必ず引用符で囲む
」必要があります。例えば、
<a href="page.html">
のように、属性値をダブルクォーテーション(
"
)かシングルクォーテーション(
'
)で囲むのがルールです。HTMLでも推奨されていますが、XMLでは必須となります。
これらの構文の違いを理解しておくことは、XMLを正しく扱う上で非常に重要です。これらのルールを守ることで、XML文書はより正確に、そして意図した通りに解釈されるようになります。
HTMLとXMLの用途の違い
HTMLの主な用途は、Webブラウザで表示されるWebページを作成することです。私たちが普段見ているWebサイトのほとんどはHTMLで書かれています。見出し、段落、リスト、画像、リンクなど、Webページに必要な要素を構造化して記述し、それをブラウザが解釈して画面に描画します。
一方、XMLはWebページ作成というよりは、 データのやり取りや保存 に広く使われています。例えば、以下のような場面で活躍します。
- Webサービス間のデータ交換 :天気予報APIや地図APIなど、異なるWebサービス間で情報をやり取りする際に、XML形式でデータが送受信されることがよくあります。
- 設定ファイル :アプリケーションの設定情報や、Webサイトの構成情報などをXML形式で保存し、読み込むことがあります。
- データベースのデータ出力 :データベースからデータをエクスポートする際に、XML形式で出力されることがあります。
つまり、HTMLが「 ユーザーに見せるための情報 」を構造化するのに対し、XMLは「 コンピュータが処理しやすい形式で情報を構造化する 」ことに長けていると言えます。
HTML5とXMLの関係性
HTML5は、HTMLの最新バージョンであり、XMLの考え方を取り入れている部分があります。特に、HTML5の「
セマンティックウェブ
」という考え方は、XMLの「データの意味を明確にする」という思想と通じるものがあります。HTML5では、
<article>
や
<nav>
、
<aside>
といった、より意味のあるタグ(セマンティックタグ)が導入されました。
これらのタグを使うことで、Webページの内容が単なる「文字の羅列」ではなく、「記事」「ナビゲーション」「サイドバー」といった具体的な意味を持つようになり、検索エンジンや支援技術(スクリーンリーダーなど)がWebページの内容をより正確に理解できるようになります。これは、XMLがデータの意味を明確にするのと同様の効果をもたらします。
しかし、HTML5はXMLの厳密な構文ルール(全てのタグを閉じる、大文字・小文字を区別するなど)を全て適用しているわけではありません。Webブラウザでの表示をより柔軟に行えるように、HTML5はXMLよりも緩やかな構文を採用しています。つまり、 HTML5はXMLの精神を受け継ぎつつも、Webブラウザでの表示という目的に特化した言語 と言えるでしょう。
XMLとJSONの比較
XMLと同様に、データの構造化と交換に使われる言語に「JSON(JavaScript Object Notation)」があります。JSONはXMLよりもシンプルで記述量が少なく、特にJavaScriptとの親和性が高いため、近年ではWeb開発の現場でXMLよりもJSONが使われる機会が増えています。
XMLとJSONの主な違いは以下の表のようになります。
| 特徴 | XML | JSON |
|---|---|---|
| 構文 | タグベース、記述量が多い | キーと値のペア、記述量が少ない |
| 拡張性 | 非常に高い(独自タグ定義) | 高い(オブジェクト、配列) |
| 人間による可読性 | 比較的高い(構造が分かりやすい) | 高い(シンプルで読みやすい) |
| コンピュータによる処理 | やや複雑 | 容易(特にJavaScript) |
| 検証機能 | DTD, XML Schemaなどで可能 | JSON Schemaなどで可能 |
XMLは、より厳密なデータ構造や検証が必要な場合に適しています。一方、JSONは、Web APIからのデータ取得や、JavaScriptでのデータ操作など、手軽にデータを扱いたい場合に便利です。
どちらが良いというわけではなく、用途やプロジェクトの要件によって使い分けるのが賢明です。XMLとJSONは、それぞれ異なる強みを持ち、現代のWeb開発において重要な役割を果たしています。
HTMLとXMLの違いを理解することは、Web開発の基礎を固める上で非常に重要です。HTMLはWebページの見栄えを整えるための言語、XMLはデータを整理し、コンピューターが理解しやすい形でやり取りするための言語です。それぞれの特性を理解し、適切に使い分けることで、より効率的で高度なWeb開発が可能になります。これからも、これらの技術を学び続けて、より素晴らしいWebを作り上げていきましょう。