「謄本(とうほん)」と「抄本(しょうほん)」、この二つの言葉、書類の話になるとよく耳にしませんか?でも、一体何が違うのか、きちんと説明できますか?実は、この 謄本 と 抄本 の 違い を理解しておくと、役所での手続きや相続、不動産登記など、様々な場面でスムーズに進めることができるんです。今回は、この二つの書類の違いを、分かりやすく、そして詳しく解説していきます。
謄本と抄本:まるごとコピー?それとも一部だけ?
まず、一番分かりやすい 謄本 と 抄本 の 違い は、その「内容の網羅性」にあります。例えるなら、図書館にある本を丸ごとコピーするのが「謄本」、その本の中から興味のある部分だけを抜き出してコピーするのが「抄本」というイメージです。
謄本は、原本の内容をすべて写し取ったもの です。文字通り、原本に書かれていることが、一字一句漏れなく、そのまま写されています。そのため、原本と全く同じ情報量を持っていると言えます。これは、法的な効力を持たせたい場合や、原本そのものの内容を証明する必要がある場合に非常に重要です。
一方、 抄本は、原本の中から必要な部分だけを抜き出して写し取ったもの です。例えば、住民票の写しが代表的ですが、これは住民票の原本の中から、あなたの氏名、住所、生年月日といった「あなたに関する情報」だけを抜き出して作成されています。原本に記載されている他の人の情報などは含まれていません。
- 謄本 :原本の全てを写したもの
- 抄本 :原本の中から必要な部分だけを写したもの
どちらの書類が必要になるかは、その目的によって異なります。例えば、相続の手続きでは、被相続人(亡くなった方)の戸籍謄本が必要になることが多いです。これは、被相続人の出生から死亡までの戸籍の履歴をすべて確認し、相続人を正確に特定するために、原本のすべての情報が必要だからです。
登記簿謄本とは?
「登記簿謄本」という言葉を聞いたことがある人も多いかもしれません。これは、不動産や会社の登記に関する書類で、 謄本 と 抄本 の 違い を理解する上で、またとない例となります。
不動産登記簿謄本は、その不動産に関するすべての情報が記載されています。具体的には、土地や建物の所在地、面積、構造、そして誰が所有者であるか、過去の所有権の移転履歴などが、すべて記録されています。これは、その不動産の「履歴書」のようなもので、 その不動産に関するあらゆる事実を正確に把握するために、原本のすべての情報が記載されている のです。
具体的に登記簿謄本に記載されている項目は、以下のようなものがあります。
| 項目 | 説明 |
|---|---|
| 表題部 | 不動産の種類、所在地、面積、構造など |
| 権利部(甲区) | 所有権に関する情報(所有者の氏名、住所、取得原因など) |
| 権利部(乙区) | 所有権以外の権利に関する情報(抵当権、地上権など) |
このように、登記簿謄本は、その不動産に関するすべてを網羅しているため、購入時や担保に入れる際などに、その不動産の現状や権利関係を正確に確認するために不可欠です。
戸籍謄本(全部事項証明書)について
戸籍謄本は、日本の公的な身分証明書として非常に重要な書類です。 謄本 と 抄本 の 違い を戸籍で考えると、戸籍謄本は、その戸籍に記載されている全員の情報をすべて写し取ったものになります。
戸籍謄本には、氏名、生年月日、父母の氏名、本籍地、婚姻、離婚、出生、死亡といった、その戸籍に属する人々の人生の節目となる情報がすべて網羅されています。そのため、相続関係を証明する際や、親族関係を明らかにする際など、 その戸籍に記録されているすべての情報を必要とする場面で利用されます。
戸籍謄本を取得する際のポイントは以下の通りです。
- 請求できる人:原則として、戸籍に記載されている本人、配偶者、直系尊属(父母、祖父母など)、直系卑属(子、孫など)です。
- 必要なもの:本人確認書類(運転免許証、マイナンバーカードなど)、手数料が必要です。
- 取得場所:本籍地の市区町村役場です。
戸籍謄本は、その人の身分関係を証明する上で最も網羅的な書類であり、改製原戸籍(古い戸籍から新しい戸籍に作り替えられたもの)なども含めて、過去の履歴をたどることができます。
住民票の写し(抄本)とは?
住民票の写しには、「全部事項証明書」と「一部事項証明書」があります。ここでいう「一部事項証明書」が、一般的に「抄本」と呼ばれるものに当たります。 謄本 と 抄本 の 違い を住民票で理解すると、より身近に感じられるでしょう。
住民票の写し(抄本)は、住民票の原本から、請求者の必要とする情報だけを抜き出して作成されます。例えば、本人確認のために氏名、住所、生年月日、本籍地といった情報だけが必要な場合などがこれにあたります。
住民票の写し(抄本)で取得できる情報としては、以下のようなものがあります。
- 氏名、生年月日
- 住所
- 本籍地(記載を省略することも可能)
- 性別
- 世帯主との続柄
「全部事項証明書」つまり「謄本」にあたるものは、住民票の原本に記載されているすべての情報(住民票コード、異動履歴なども含む)が記載されたもので、通常は、ごく限られた用途でしか使われません。
会社の登記簿謄本(履歴事項全部証明書・現在事項全部証明書)
会社の登記簿謄本にも、 謄本 と 抄本 の 違い に相当する概念があります。一般的に「履歴事項全部証明書」や「現在事項全部証明書」といった名称で取得できます。
「履歴事項全部証明書」は、会社の設立から現在までの、すべての登記記録が記載されたものです。過去の役員の変更履歴、商号の変更履歴、本店移転の履歴など、会社の歴史をすべて網羅しています。これは、会社の過去の動向を把握したい場合に利用されます。
一方、「現在事項全部証明書」は、現時点で効力のある登記記録のみが記載されたものです。つまり、過去の変更履歴などは記載されず、現在の会社の状況のみが分かります。
これは、以下のような場合に使い分けられます。
- 履歴事項全部証明書 :会社の過去の変遷をすべて確認したい場合(M&Aの検討、過去の不正調査など)
- 現在事項全部証明書 :現在の会社の状況だけを知りたい場合(取引先の信用調査、融資の申し込みなど)
どちらの証明書も、会社の信頼性を確認するために非常に重要であり、 その目的に応じて、必要な情報量を持つ方を選択することが大切です。
まとめ:目的に合わせて使い分けよう!
ここまで、「謄本」と「抄本」の 違い について、様々な例を挙げて解説してきました。まとめると、謄本は「原本をすべて写したもの」、抄本は「原本から必要な部分だけを写したもの」となります。
どちらの書類が必要になるかは、その目的によって大きく変わってきます。例えば、法律的な効力や、複雑な関係性を証明する必要がある場合は「謄本」、個人の情報や、特定の事項だけを確認したい場合は「抄本」が適していることが多いです。この違いを理解して、手続きの際に適切な書類を請求できるようになりましょう。