「始末書(しまつしょ)」と「顛末書(てんまつしょ)」、どちらも何か問題が起きた時に提出するものですが、その目的や書き方にはハッキリとした違いがあります。この二つの違いを理解することで、いざという時に迷わず、適切な書類を作成できるようになります。今回は、この 始末書と顛末書の違い を分かりやすく解説していきます。
「原因究明」と「事実報告」:始末書と顛末書の核心的な違い
まず、一番大切なのは「何のために書くか」という点です。始末書は、自分のミスや不注意によって会社に迷惑をかけてしまった際に、その「原因」と「反省」を伝え、二度と同じ過ちを繰り返さないことを誓うために書くものです。つまり、 自分の責任を認め、謝罪の意を示すことが最も重要 です。
一方、顛末書は、起きた出来事の「経緯」を客観的に報告するために書かれます。誰が、いつ、どこで、何をしたのか、そしてその結果どうなったのか、といった事実をありのままに伝えることが目的です。謝罪の気持ちを伝えるというよりは、 状況を正確に把握し、今後の対策を立てるための情報提供 という側面が強いです。
この違いを、簡単な表で見てみましょう。
| 書類名 | 主な目的 | 記載内容のポイント |
|---|---|---|
| 始末書 | 責任の所在を明らかにし、反省と謝罪を示す | 原因、反省、再発防止策 |
| 顛末書 | 起きた出来事の経緯を客観的に報告する | 事実関係(いつ、どこで、誰が、何を、どうした、結果) |
始末書:自分の非を認め、再発防止を誓う
始末書を書く状況としては、遅刻を繰り返してしまったり、社内規則を破ってしまったり、仕事で大きなミスをして会社に損害を与えてしまったりした場合などが考えられます。ここでは、自分の非を認め、真摯に反省していることを伝えることが何よりも大切です。
始末書には、主に以下の要素を含めます。
- 発生した事実(いつ、どのようなミスをしたか)
- ミスの原因(なぜそのようなミスが起きたのか。自分自身の落ち度を具体的に書く)
- 反省の弁(そのミスによって迷惑をかけたことへの謝罪と、深く反省している気持ち)
- 再発防止策(今後、同じミスをしないために具体的にどうするか)
例えば、仕事でミスをした場合、「〇月〇日、〇〇の業務において、私の確認不足により〇〇というミスを発生させ、会社に多大なご迷惑をおかけしました。原因は、〇〇という認識の甘さと、〇〇という手順の不徹底にありました。深く反省しております。今後は、〇〇というチェックリストを作成し、〇〇という確認作業を徹底することで、二度とこのようなミスを起こさないことを誓います。」のように、具体的に書くことが求められます。
顛末書:客観的な事実を正確に伝える
一方、顛末書は、例えば、事故やトラブルが発生した場合、その状況を正確に把握するために提出を求められることが多いです。自分のミスというよりは、会社全体に関わるような出来事の報告が主になります。
顛末書に含めるべき主な項目は以下の通りです。
- 発生日時
- 発生場所
- 関わった人物
- 発生した出来事の概要
- 具体的な経緯(時系列で分かりやすく)
- 結果(どのような影響があったか)
- その他、特記事項
例えば、火災が発生した場合、「〇月〇日〇時頃、〇〇工場にて、〇〇という原因で火災が発生しました。消火活動は〇時〇分に完了し、〇〇名が軽傷を負いましたが、人命に別状はありませんでした。延焼は〇〇までで食い止められましたが、〇〇の設備に被害が出ました。」のように、事実を淡々と、正確に記述します。
始末書と顛末書:提出するタイミングと相手
どちらの書類も、何かしらの問題が発生した際に提出するものですが、そのタイミングや相手も少し異なります。始末書は、基本的に自分の所属部署の上司や人事部など、処分や指導に関わる部署に提出することが一般的です。
一方、顛末書は、社内の関係部署や、場合によっては社外の関係者(取引先など)に事実を報告するために提出されることもあります。誰に提出するのかは、発生した出来事の性質によって変わってきます。
始末書と顛末書:記載する際の注意点
始末書を書く上で最も注意すべき点は、「言い訳」をしないことです。原因を説明する際も、あくまで自分自身の落ち度を認め、責任転嫁するような表現は避けるべきです。反省の気持ちと、再発防止への強い決意を伝えることが大切です。
顛末書を書く際は、感情を交えずに、あくまで客観的な事実を正確に記述することが重要です。「~と思われる」「~かもしれない」といった憶測ではなく、確認できた事実を、具体的に、分かりやすく記述する必要があります。もし不明な点があれば、「〇〇については、現時点では不明」と正直に記載することも必要です。
始末書と顛末書:書式やフォーマット
どちらの書類も、会社によっては特定のフォーマットが用意されている場合があります。もし指定されたフォーマットがある場合は、それに従いましょう。特に指定がない場合は、以下の点を意識すると良いでしょう。
- 書式 :A4サイズなどの用紙に、縦書きまたは横書きで作成します。
- 日付 :書類を作成した日付を明記します。
- 宛名 :提出する相手(社長、部長など)の役職と氏名を正確に記載します。
- 差出人 :自分の所属部署、氏名、捺印(または署名)をします。
始末書の場合は、より丁寧な言葉遣いを心がけ、謝罪の気持ちが伝わるように配慮が必要です。顛末書の場合は、事実を正確に伝えることを最優先にし、簡潔で分かりやすい文章を心がけましょう。
始末書と顛末書:「反省」と「報告」のレベルの違い
始末書は、個人の「反省」に重点が置かれます。自分の行動や判断が原因で会社に損害や迷惑をかけたことに対し、どれだけ深く反省しているのか、そして今後どのように改善していくのかを具体的に示さなければなりません。この「反省」のレベルが低いと、会社からの処分が重くなる可能性もあります。
一方、顛末書は、あくまで「報告」のレベルに留まります。もちろん、報告する内容が重大なものであれば、その内容に応じて会社として対応を検討することになりますが、書類自体に個人の反省や謝罪を強く求めるものではありません。 事実を正確に伝えることが、顛末書の最大の役割 と言えます。
まとめ:目的を理解して、迷わず書こう!
始末書と顛末書、この二つの書類の主な違いは、「自分の非を認め、反省と再発防止を誓う」のが始末書、「起きた出来事の経緯を客観的に報告する」のが顛末書、という点にあります。どちらの書類が必要なのか、そしてそれぞれどのような内容を書くべきなのかを理解することで、いざという時に慌てず、適切に対応できるようになります。これらの違いをしっかり覚えて、スムーズな書類作成につなげてください。