心筋 梗塞 と 心不全 の 違い を 正しく理解しよう!〜知っておきたい心臓の病気〜

心臓は私たちの体にとって、まさに命のポンプ。でも、その大切な心臓がうまく働かなくなってしまう病気はいくつかあります。特に「心筋梗塞」と「心不全」はよく聞く言葉ですが、一体何が違うのでしょうか?今回は、この 心筋梗塞と心不全の違い を、誰にでも分かりやすく解説していきます。

心筋梗塞と心不全、根本的な違いとは?

まず、心筋梗塞と心不全の根本的な違いを理解することが大切です。心筋梗塞は、心臓の筋肉(心筋)に酸素や栄養を運ぶ血管(冠動脈)が詰まってしまい、心筋の一部が死んでしまう「事件」そのものを指します。一方、心不全は、心筋梗塞が原因で起こることもあれば、他の病気や長年の負担によって、心臓が全身に十分な血液を送れなくなってしまう「状態」を指すのです。つまり、心筋梗塞は「原因」、心不全は「結果」として捉えることもできます。

心筋梗塞の主な原因は、血管にコレステロールなどがたまってできる「アテローム」が破裂し、血の塊(血栓)ができることです。この血栓が血管を完全に塞いでしまうと、心筋への血流が止まり、心筋がダメージを受けてしまいます。 このダメージの範囲や場所によって、症状の重さや予後が変わってきます。

一方、心不全は、心臓のポンプ機能が低下した状態です。この低下は、単に「弱くなった」というだけでなく、以下のようなさまざまな要因が複雑に絡み合って起こります。

  • 心筋梗塞による心筋のダメージ
  • 高血圧が長期間続いている
  • 心臓の弁の病気
  • 不整脈
  • 心筋症

心筋梗塞のメカニズムと症状

血管が詰まる「瞬間」:心筋梗塞のメカニズム

心筋梗塞は、心臓を動かすための「燃料」である酸素を運ぶ血管、つまり冠動脈が突然詰まってしまうことで起こります。この血管は、まるで水道管のように、内側に汚れ(プラーク)が溜まって細くなりやすい性質があります。

原因 冠動脈のプラーク破裂と血栓形成
結果 心筋への血流遮断、心筋壊死

このプラークが破れると、その傷口に血小板が集まって血栓ができ、あっという間に血管を塞いでしまうのです。

突然の胸の痛み!心筋梗塞のサイン

心筋梗塞で最も特徴的な症状は、突然の激しい胸の痛みです。この痛みは、締め付けられるような、圧迫されるような感覚で、数分から数十分続くこともあります。痛みが広がることもあり、肩や腕、顎、背中などに放散することもあります。

主な症状は以下の通りです。

  1. 激しい胸の痛み(圧迫感、締め付け感)
  2. 冷や汗
  3. 吐き気、嘔吐
  4. 息切れ
  5. 動悸

ただし、高齢者や女性、糖尿病のある方では、典型的な症状が出にくい場合もあるので注意が必要です。

心不全の「状態」:心臓のポンプ機能低下

心臓が「疲れてしまった」状態:心不全の定義

心不全とは、心臓が全身に血液を送り出すポンプとしての役割を十分に果たせなくなった状態を指します。これは、単に心臓の力が弱っただけでなく、体が必要とする量の血液を送り出せない、ということです。つまり、心臓が「頑張っても、もう追いつかない!」という状態です。

心臓が「疲れる」理由:心不全を引き起こす原因

心不全の原因は様々ですが、大きく分けて心臓の筋肉自体の問題と、心臓に負担がかかりすぎる問題があります。

  • 心臓の筋肉自体の問題: 心筋梗塞、心筋症、弁膜症
  • 心臓に負担がかかる問題: 高血圧、不整脈、腎臓病、貧血、甲状腺機能異常

これらの原因によって、心臓は次第に弱っていき、本来の働きができなくなります。

「送れない」そして「溜まる」:心不全のメカニズム

心臓がうまく血液を送れなくなると、体は血液不足を補おうとします。しかし、その頑張りも限界があり、結果として血液が全身にうまく循環しなくなります。

左心不全 肺に血液が溜まりやすくなり、息切れや咳の原因となる
右心不全 体(特に足や腹部)に水分が溜まりやすくなり、むくみや体重増加の原因となる

このように、心臓のどの部分の機能が低下したかによって、症状の現れ方が異なります。

心不全のサインを見逃さないで!

心不全の症状は、病気の進行度によって様々ですが、以下のようなサインが見られます。

  1. 息切れ: 体を動かした時だけでなく、安静時にも息苦しさを感じる。特に横になると悪化する。
  2. むくみ: 足のむくみがひどくなり、指で押すと跡が残る。
  3. だるさ: 疲れやすく、体がだるく感じる。
  4. 食欲不振: 胃腸の働きも悪くなることがある。
  5. 体重増加: 体の中に水分が溜まるために、急に体重が増えることがある。

これらの症状は、日常生活に支障をきたすため、早めの受診が重要です。

心筋梗塞と心不全の「関係性」

「元凶」にもなりうる心筋梗塞

前述したように、心筋梗塞は心不全の「原因」の一つとして非常に重要です。心筋梗塞によって心臓の筋肉がダメージを受けると、その部分のポンプ機能が低下します。このダメージが広範囲に及ぶと、心臓全体として十分な血液を送り出す力が失われてしまい、心不全へと進行することがあります。

心筋梗塞後に「起こりやすい」心不全

心筋梗塞が起きた直後や、その数週間後から数ヶ月後に心不全の症状が現れることがあります。これは、心筋梗塞で傷ついた心筋が、次第に硬くなったり、形が変わったりすることで、心臓の動きが悪くなるためです。

心不全が「悪化」させることも

逆に、心不全が進行すると、心臓にさらに負担がかかり、心筋梗塞のリスクを高めることもあります。このように、心筋梗塞と心不全は、互いに関連し合い、病状を悪化させる可能性も否定できません。

「診断」と「治療」の違い

「事件」の特定:心筋梗塞の診断

心筋梗塞の診断では、まず「いつ、どのような症状が起きたか」といった問診が重要になります。それに加えて、心臓の筋肉がダメージを受けた時に血液中に出る「心筋マーカー」という物質の値を測ったり、心臓の電気的な活動を記録する「心電図」で特徴的な変化を確認したりします。さらに、心臓の血管の状態を直接調べる「心臓カテーテル検査」で、どこが詰まっているかを詳しく調べます。

「状態」の評価:心不全の診断

心不全の診断では、まず症状の聞き取りが中心となります。息切れの程度やむくみの有無などを詳しく確認します。また、心臓の動きや大きさを調べる「心エコー検査」で、心臓のポンプ機能がどの程度低下しているかを評価します。血液検査で心臓に負担がかかっているかを示す「BNP」という数値を測ることもあります。レントゲン検査で肺に水が溜まっていないかを確認することもあります。

「緊急」か「管理」か:治療法の違い

心筋梗塞の治療は、詰まった血管をいかに早く開通させるかが最優先されます。そのため、カテーテルを使って血栓を溶かしたり、風船で血管を広げたりする「カテーテル治療」や、血栓を溶かす薬を使う「血栓溶解療法」が中心となります。一方、心不全の治療は、原因となっている病気を治療しつつ、心臓の負担を減らし、症状を和らげることが目的となります。利尿薬で余分な水分を排出し、心臓の働きを助ける薬や、血圧を下げる薬など、様々な薬を組み合わせて使います。また、生活習慣の改善や、必要に応じてペースメーカーなどの医療機器を使うこともあります。

「予防」と「対策」のポイント

心筋梗塞を防ぐために

心筋梗塞の予防には、生活習慣の改善が最も重要です。高血圧、高コレステロール血症、糖尿病などの生活習慣病をしっかりと管理することが大切です。具体的には、バランスの取れた食事(野菜を多く摂り、塩分や脂っこいものを控える)、適度な運動、禁煙、節酒が挙げられます。

心不全と「上手に付き合う」ために

心不全は、一度発症すると完治が難しい場合もありますが、適切な治療と自己管理で、症状をコントロールし、生活の質(QOL)を維持することが可能です。医師の指示通りに薬を飲み、定期的に受診することが基本です。また、日々の体重測定や、むくみ、息切れなどの症状の変化に注意し、異常があればすぐに医師に相談することが大切です。

心筋梗塞と心不全は、どちらも命に関わる怖い病気ですが、そのメカニズムや治療法は異なります。しかし、どちらも日頃の健康管理が大切であることは共通しています。心臓の健康を守るために、今回学んだことをぜひ日々の生活に役立ててください。

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