「国民健康保険（国保）」と「協会けんぽ（全国健康保険協会）」、どちらも日本の医療制度を支える大切な保険ですが、その違いを正確に理解している方は意外と少ないかもしれません。今回は、 国民健康保険と協会けんぽの違い を、皆さんが「なるほど！」と思えるように、わかりやすく解説していきます。
加入できる人はどう違う？
まず、一番わかりやすい違いは、誰がそれぞれの保険に加入できるかという点です。国保は、主に自営業の方、フリーランスの方、退職して年金を受け取っている方、そしてパートやアルバイトで社会保険に加入していない方などが対象となります。つまり、 会社員や公務員として働いていない、あるいは社会保険に加入できない立場の方々 が加入する保険と言えます。
一方、協会けんぽは、中小企業の会社員とその扶養家族が加入する健康保険です。会社が加入手続きをしてくれるため、自分で保険料を計算したり、手続きをしたりする必要はありません。 会社勤めをしている方々 にとっては、自動的に加入している、身近な存在の保険なのです。
このように、加入できる人の範囲が異なるため、ご自身の働き方や立場によって、どちらに加入するかが決まってきます。どちらの保険に加入するかは、ご自身の状況をよく確認することが大切です。
保険料の決まり方
次に、保険料の決まり方にも違いがあります。
- 国民健康保険（国保） : 国保の保険料は、お住まいの市町村によって計算方法が異なります。一般的には、前年の所得、加入している人数、そして資産（固定資産税額など）を基に計算されます。所得が高ければ保険料も高くなる傾向がありますが、所得が低い場合は軽減措置もあります。
- 協会けんぽ : 協会けんぽの保険料は、お給料（標準報酬月額）によって決まります。保険料率は全国一律ですが、毎年改定されることがあります。会社と従業員が折半して負担するのが特徴です。
表でまとめると、以下のようになります。
| 保険制度 | 保険料の主な計算要素 |
|---|---|
| 国民健康保険（国保） | 前年の所得、加入人数、資産 |
| 協会けんぽ | 標準報酬月額（お給料） |
このように、保険料の計算根拠が異なるため、同じような収入であっても、どちらの保険に加入するかで保険料が変わってくることがあります。
受けられる給付は？
医療機関にかかった際の窓口負担割合は、どちらの保険制度でも原則として1割～3割（年齢や所得による）ですが、病気やケガで働けなくなった場合に受けられる給付金（傷病手当金など）や、出産育児一時金などの金額や条件には違いがあります。
- 傷病手当金 : 病気やケガで会社を休み、給与が支払われない場合に、生活を保障するための手当金です。支給される期間や金額は、国保と協会けんぽで異なります。
- 出産育児一時金 : 出産された際に支給される一時金です。こちらも金額や申請方法に違いがあります。
さらに、高額な医療費がかかった場合に、自己負担額の上限を設ける「高額療養費制度」は、どちらの保険制度でも利用できますが、自己負担限度額の計算方法や、申請手続きの窓口が異なります。
これらの給付金や制度の利用についても、ご自身の状況に合わせて、どちらの保険制度がより有利になるかを確認することが大切です。
加入手続きはどうする？
加入手続きの方法も、それぞれの制度で異なります。
- 国民健康保険（国保） : 国保は、お住まいの市区町村の役所の国保担当窓口で加入手続きを行います。引っ越しをした際や、会社の健康保険を辞めた後などに、ご自身で手続きをする必要があります。
-
協会けんぽ
: 協会けんぽは、会社が従業員を雇用した際に、事業所単位で加入手続きを行います。従業員は、入社時に会社から案内がある場合がほとんどで、個別の加入手続きは不要です。
このように、国保はご自身で、協会けんぽは会社が、それぞれ手続きを行うという違いがあります。
保険料の支払い方法
保険料の支払い方法にも違いが見られます。
- 国民健康保険（国保） : 国保の保険料は、原則として加入者自身が、市区町村に直接納付します。口座振替、金融機関での振込、コンビニエンスストアでの支払いなどが利用できます。
- 協会けんぽ : 協会けんぽの保険料は、会社が従業員の給与から天引きし、まとめて協会けんぽに納付します。従業員は、給与明細で保険料が差し引かれていることを確認できます。
つまり、国保は自分で管理して支払うのに対し、協会けんぽは給与から自動的に引かれるという違いがあります。
保険料の軽減措置
所得が低い方など、経済的な理由で保険料の支払いが困難な場合、両制度ともに軽減措置が用意されています。しかし、その内容や申請方法には違いがあります。
- 国民健康保険（国保） : 国保には、所得が一定額以下の場合に保険料が軽減される「所得割軽減」や、加入者数に応じて保険料が減額される「均等割軽減」などがあります。また、非自発的失業者の場合、保険料がさらに軽減される制度もあります。
- 協会けんぽ : 協会けんぽでは、主に「法定免除」という制度があり、一定の条件（例えば、産前産後休業期間中など）を満たす場合に、保険料が免除されることがあります。
このように、国保の方が所得に応じた軽減措置が充実している傾向がありますが、協会けんぽも特定の期間においては免除制度があります。
国民健康保険と協会けんぽのどちらに加入するかは、ご自身の現在の状況や将来のライフプランによって、最適な選択肢が変わってきます。それぞれの制度の違いを理解し、ご自身にとってよりメリットのある方を選ぶことが大切です。