「介護保険」と「医療保険」、どちらも大切なお金に関わる制度ですが、その役割や対象、そして「介護保険と医療保険の違い」は意外と曖昧にされている方も多いのではないでしょうか。この二つの保険は、私たちの健康で安心な暮らしを支えるために、それぞれ異なる目的を持っています。ここでは、その違いを分かりやすく解説していきます。
目的と対象者の違い
まず、一番大きな「介護保険と医療保険の違い」は、その目的と、誰のための保険なのかという点です。医療保険は、病気やケガをした際に、治療にかかる医療費をみんなで支え合うことを目的としています。ケガをしたり、熱を出したり、具合が悪くなったりしたときに、病院で診てもらうための費用をカバーしてくれる、それが医療保険の役割です。
一方、介護保険は、高齢などで日常生活を送るのに支援や介護が必要になった人を支えるための制度です。病気そのものを治すというよりは、食事の介助、入浴の介助、排泄の介助といった、生活を送る上での困りごとを助けてもらうためのサービスを受けるための費用をみんなで支え合います。 この「病気を治す」のか「生活を支える」のか、という点が、介護保険と医療保険の最も根本的な違いと言えるでしょう。
- 医療保険 :病気やケガの治療費をサポート
- 介護保険 :日常生活の支援や介護サービスをサポート
具体的に、どんな時にどちらの保険が使われるかを見てみましょう。
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医療保険が使われる例
- 風邪をひいて病院で診てもらう
- 骨折をして手術を受ける
- 高血圧などで定期的に薬をもらう
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介護保険が使われる例
- 一人で食事をするのが難しく、介助してもらう
- お風呂に入ることが大変なので、手伝ってもらう
- 歩くのが不安なので、移動のサポートをしてもらう
保険料の負担方法
次に、「介護保険と医療保険の違い」を、保険料の負担方法という面から見ていきましょう。医療保険の保険料は、加入している健康保険組合などによって異なりますが、一般的には給料から天引きされることがほとんどです。会社員の方であれば、給料明細を見て「健康保険料」として引かれているのを確認したことがあるかもしれません。
一方、介護保険の保険料は、40歳になると、医療保険料と一緒に徴収されるようになります。つまり、40歳以上の国民全員が、医療保険加入者であると同時に、介護保険にも加入していることになります。ですので、給料明細で「介護保険料」として引かれているのを見たことがある人もいるでしょう。
| 保険の種類 | 保険料の負担時期 | 徴収方法 |
|---|---|---|
| 医療保険 | 加入後 | 給料からの天引き、または口座振替 |
| 介護保険 | 40歳から | 医療保険料と合わせて徴収(給料からの天引き、または口座振替) |
ただし、65歳以上の方(第1号被保険者)の場合は、年金からの天引き、または自治体から送られてくる納付書で納めることになります。これは、65歳以上になると、介護保険のサービスを利用する可能性が高まるため、負担の仕方が変わるからです。
サービスを受けるための条件
「介護保険と医療保険の違い」は、サービスを受けるための条件にも現れます。医療保険は、病気やケガの診断がつけば、基本的に保険適用となります。例えば、インフルエンザと診断されれば、医療保険で治療を受けることができます。
しかし、介護保険サービスを受けるためには、少し条件があります。まず、65歳以上の「第1号被保険者」の場合は、原因を問わず、日常生活に支援や介護が必要と認定された場合にサービスが利用できます。一方、40歳から64歳までの「第2号被保険者」の場合は、厚生労働省が定めた特定の病気(加齢に伴う病気など)が原因で、支援や介護が必要と認定された場合に、サービスが利用できます。
この「認定」というプロセスが、介護保険サービス利用の大きな特徴です。「要支援1」「要介護5」といった段階で、どのようなサービスが、どれくらいの量、利用できるかが決まってきます。この認定を受けるためには、自治体の窓口に申請し、担当者による訪問調査や主治医の意見書などが必要となります。
利用できるサービスの内容
「介護保険と医療保険の違い」を具体的に理解するために、利用できるサービスの内容を比べてみましょう。医療保険で受けられるサービスは、主に治療に関わるものです。例えば、診察、検査、手術、薬の処方、リハビリテーション(病気やケガからの回復を目指すもの)などがあります。
一方、介護保険で受けられるサービスは、日常生活を支援するためのものが中心です。大きく分けて「居宅サービス」と「施設サービス」があります。居宅サービスには、自宅に来てもらう「訪問介護」(掃除や洗濯、調理などの生活援助、身体介護など)や、「訪問看護」(看護師が自宅に来て医療処置や健康管理を行う)、デイサービス(日帰りで施設に通い、食事や入浴、レクリエーションなどを楽しむ)などがあります。
| 保険の種類 | 主なサービス内容 |
|---|---|
| 医療保険 | 診察、検査、手術、投薬、医療的リハビリテーション |
| 介護保険 | 訪問介護、訪問看護、デイサービス、ショートステイ、施設入所(特別養護老人ホームなど)、福祉用具のレンタル |
施設サービスとしては、特別養護老人ホームや介護老人保健施設などに入所して、食事や入浴、排泄の介助、リハビリ、健康管理などを受けることができます。
保険料の財源
「介護保険と医療保険の違い」は、保険料がどのように集められ、使われているか、という財源の面でも見ることができます。医療保険の財源は、主に加入者からの保険料と、国や自治体からの公費(税金)で賄われています。患者さんが病院で支払う一部負担金も、医療保険制度を支える一部となっています。
介護保険の財源は、もう少し複雑です。こちらも、加入者からの保険料と、国・自治体からの公費(税金)が大きな柱となります。しかし、第1号被保険者(65歳以上)の保険料は、所得に応じて段階的に設定されており、所得の高い人ほど保険料も高くなる仕組みになっています。
さらに、第2号被保険者(40歳~64歳)の保険料は、医療保険料に上乗せされる形で徴収されます。このように、介護保険は、利用する可能性のある人、ない人も含めて、社会全体で支え合うという考え方が強く反映されています。
自己負担額の違い
最後に、「介護保険と医療保険の違い」として、実際にサービスを利用した際の自己負担額について見ていきましょう。医療保険の場合、原則としてかかった医療費の1割から3割(年齢や所得によって異なる)を自己負担します。例えば、1万円の医療費がかかった場合、1,000円から3,000円を支払うことになります。
一方、介護保険サービスを利用した場合の自己負担額は、原則としてサービス費用の1割です。ただし、これも所得によって上限が設けられています。例えば、所得の高い方(第1号被保険者で所得が高い方など)は、自己負担が2割や3割になる場合もあります。また、利用するサービスの種類や、要介護度によっても、自己負担額は変わってきます。
- 医療保険の自己負担 :原則1割~3割
- 介護保険の自己負担 :原則1割(所得により2割・3割の場合あり、上限あり)
この自己負担額の上限制度があることで、急な大きな出費があっても、家計への影響を和らげることができます。これは、介護保険が、利用者の生活を長期的に支えるための制度であるという側面を表しています。
いかがでしたでしょうか?「介護保険と医療保険の違い」について、それぞれの目的、対象、負担方法、サービス内容、財源、そして自己負担額といった様々な角度から解説してきました。この二つの保険制度を正しく理解しておくことは、将来にわたって安心して暮らすために、とても大切です。もし分からないことがあれば、お住まいの自治体の窓口や、かかりつけのお医者さんなどに相談してみてくださいね。