「貸方(かしかた)」と「借方(かりかた)」、この二つの言葉を聞くと、なんだか難しそう…と思うかもしれませんね。でも、実はこれ、お金の出入りを記録する「複式簿記」という仕組みの、とっても大切な基本なんです。 貸方 と 借方 の 違い をしっかり理解すれば、会社のお金の流れが、まるで地図を広げたように見えてきますよ。
お金の出入りを左右する「貸方」と「借方」
まず、基本中の基本として、帳簿には必ず「左側」と「右側」があります。この左側を「借方」、右側を「貸方」と呼びます。そして、 貸方 と 借方 の 違い は、それぞれの側が「何を表しているか」にあります。簡単に言うと、借方は「資産の増加」や「費用の発生」、貸方は「負債の増加」や「純資産の増加」、「収益の発生」を表します。
例えば、会社が銀行から100万円を借りたとしましょう。この場合、現金(資産)が100万円増えますから、これは「借方」に記入されます。一方で、借金(負債)も100万円増えていますので、これは「貸方」に記入されます。このように、一つの取引で必ず借方と貸方、両方に同じ金額が記入されるのが、複式簿記の面白いところです。
では、具体的な例を見てみましょう。
- 現金(資産)が増える時: 借方
- 借金(負債)が増える時: 貸方
- 売上(収益)があった時: 貸方
- 給料(費用)を払った時: 借方
「借方」の役割:財産の増加と費用の発生
借方は、主に「会社が持っている財産が増えたとき」や「何かにお金を使った(費用が発生した)とき」に記入する場所です。例えば、新しいパソコンを買って現金で支払ったとします。この場合、現金という財産は減りますが、パソコンという新たな財産が増えたと考えることもできます。しかし、会計上は「現金が減った」という結果を重視し、費用として計上することが多いです。
もう少し詳しく見てみましょう。
- 現金や預金が増える: 会社にお金が入ってきた場合、借方に記入します。
- 売掛金が増える: 商品などを売って、まだお金をもらっていない場合、この「売掛金」という権利が増えるので、借方に記入します。
- 固定資産が増える: 土地や建物、機械などを購入した場合、これらの財産が増えるので、借方に記入します。
- 仕入や経費が発生する: 商品を仕入れたり、家賃や給料を支払ったりといった、事業を行う上でかかる費用が発生した場合、借方に記入します。
「貸方」の源泉:財産の源泉と収益の発生
一方、貸方は「財産がどこから来たのか」という源泉を表したり、「会社がお金を生み出した(収益が発生した)とき」に記入する場所です。つまり、借方で増えた財産や発生した費用が、どういう理由でそうなったのか、その「原因」を貸方で説明するイメージです。
貸方の主な項目は以下の通りです。
| 勘定科目 | 意味 |
|---|---|
| 買掛金 | 商品などを仕入れて、まだ代金を払っていない場合 |
| 借入金 | 銀行などからお金を借りた場合 |
| 売上 | 商品やサービスを提供して、お金を得た場合 |
| 資本金 | 会社を設立する際に出資されたお金 |
具体的な取引で見る「貸方」と「借方」
では、いくつかの具体的な取引を通して、貸方と借方の関係を見ていきましょう。
例1:商品10,000円を現金で仕入れた場合
- 借方: 仕入 10,000円(費用が発生)
- 貸方: 現金 10,000円(現金が減少)
あれ?先ほどの説明と逆じゃない?と思われるかもしれませんが、ここで大切なのは「仕入」という費用が発生したことと、「現金」という資産が減ったこと、この二つを記録することです。仕入は費用なので借方、現金は資産なので減少は貸方、となります。
例2:商品20,000円を現金で販売した場合
- 借方: 現金 20,000円(現金が増加)
- 貸方: 売上 20,000円(収益が発生)
これは比較的イメージしやすいですね。現金が増えたので借方、売上という収益が発生したので貸方です。
「借方」と「貸方」のバランスが重要!
複式簿記の最も大切なルールは、「借方と貸方の合計金額は常に一致する」ということです。これは、どんな取引でも必ず、その取引によって増減する「二つの側面」があるからです。このバランスが取れていることで、帳簿の正確性が保たれるのです。
このバランスを保つために、以下の点を意識してみましょう。
- 原因と結果: 借方は「結果(資産の増加や費用の発生)」、貸方は「原因(負債の増加や収益の発生)」と考えると分かりやすいです。
- 反対側の動き: 資産が増えれば借方、減れば貸方。負債が増えれば貸方、減れば借方。費用が発生すれば借方、収益が発生すれば貸方。
「貸方」と「借方」で読み解く財務諸表
貸方と借方の概念は、最終的に「損益計算書」や「貸借対照表」といった財務諸表を理解するための基礎となります。これらの表は、会社の経営成績や財政状態を数字で表したもので、貸方と借方の原則に基づいて作られています。
具体的には、
- 損益計算書: 収益(貸方)から費用(借方)を差し引いて、利益を計算します。
- 貸借対照表: 会社の「財産(資産:借方)」と、「その財産がどこから来たのか(負債と純資産:貸方)」を示します。
このように、貸方と借方を理解することは、会社の健康状態を把握するために不可欠なのです。
まとめ:会計の基本は「貸方」と「借方」から!
「貸方 と 借方 の 違い」について、少しずつ理解が深まったでしょうか?最初は戸惑うかもしれませんが、一つ一つの取引を「これは何が増えた(減った)のか」「その原因は何だろう?」と考えていくことで、自然と感覚が掴めてきます。会計は、会社の「言葉」のようなものです。その言葉を理解できれば、会社の経営がよりクリアに見えてきますよ。