給与 と 所得 の 違い:知っておきたい基本のキ!

「給与」と「所得」、この二つの言葉、似ているようで実は大きく違います。日常生活でよく耳にする言葉ですが、その正確な意味を理解していますか?特に、税金や社会保険料の計算に関わる場面では、 給与 と 所得 の 違い をきちんと把握しておくことがとても大切です。この違いを知ることで、自分の手取り額がどう決まるのか、そしてなぜ税金がこんなに引かれるのか、といった疑問がスッキリ解決するはずです。

給与と所得、一体何が違うの? ~ 基本のキ~

まず、一番分かりやすいのは「給与」です。これは、会社やお店などから、働いたことに対して支払われるお金のこと。毎月決まった日に、お給料として振り込まれるものがこれにあたります。基本給はもちろん、残業代や各種手当、ボーナスなんかも、まとめて「給与」と考えることができます。つまり、 会社から直接受け取る「額面」のお金 のことですね。

一方、「所得」は、給与からいくつかの「経費」や「控除」を差し引いた後に残った、 実際に税金がかかる部分のお金 のこと。会社からもらった給与のすべてが所得になるわけではないのです。例えば、給与から所得税や社会保険料(健康保険料、年金保険料など)が引かれることがありますよね。これらは「必要経費」のようなものとして、所得を計算する際に差し引かれるのです。

この給与と所得の違いを理解することは、自分の手取り額を把握する上で非常に重要です。なぜなら、私たちが最終的に受け取る「手取り額」は、給与から税金や社会保険料などを差し引いたものですが、その税金や保険料の計算の基礎となるのが「所得」だからです。給与明細を見て、額面と手取りの差に「あれ?」と思ったことがある人もいるかもしれませんが、その差を生み出しているのが、この給与と所得の違いなのです。

給与所得とは?

給与所得というのは、文字通り「給与」から得られる「所得」のことです。会社員として働いている場合、毎月もらうお給料やボーナスは、そのまま所得になるわけではありません。給与所得を計算するには、まず 給与収入 があります。これは、1年間(1月1日から12月31日まで)に会社などから支払われた給与の総額のことです。

そして、この給与収入から「 給与所得控除 」というものを差し引くことで、給与所得が計算されます。給与所得控除というのは、働いて収入を得るためにかかった経費(例えば、通勤費、仕事で使うカバンや靴、セミナー代など)を、税法上「みなし経費」として差し引くことができる制度です。この給与所得控除額は、収入金額によって決まっています。

具体的には、以下のような計算式になります。

給与所得 = 給与収入 - 給与所得控除額

つまり、給与所得は、実際に手元に残るお金ではなく、税金計算の元となる金額ということになります。この給与所得に、他の所得(もしあれば)を合算して、さらに所得控除などを差し引いて、最終的な「課税所得」が計算されるのです。

所得控除って何?

所得控除とは、納税者の個人的な事情を考慮して、所得税額を計算する際に、課税される所得金額から差し引くことができる金額のことです。これは、給与所得控除とはまた別のものです。例えば、家族の扶養がいる場合や、医療費がたくさんかかった場合など、個々の状況に応じて税負担を軽減するための制度と言えます。

所得控除には、様々な種類があります。代表的なものとしては、以下のようなものがあります。

  • 基礎控除 :すべての人に適用される控除
  • 配偶者控除 :配偶者の所得が一定以下の場合に適用される控除
  • 扶養控除 :所得者の所得が一定以下で、一定の要件を満たす扶養親族がいる場合に適用される控除
  • 医療費控除 :1年間に支払った医療費が一定額を超える場合に適用される控除
  • 社会保険料控除 :支払った健康保険料や年金保険料などが控除される

これらの所得控除を適用することで、税金がかかる対象となる所得(課税所得)が減り、結果として所得税額も安くなります。

給与明細の見方 ~ どこを見ればわかる?~

給与明細は、自分の給与と所得、そしてそこから引かれているものの全体像を把握するのに役立ちます。「給与」と「所得」の違いを理解したら、次は給与明細で実際に確認してみましょう。まず、「支給」欄に書かれている金額が、あなたが会社から受け取る「給与」にあたるものです。ここには、基本給、残業代、各種手当などが含まれています。

次に、「控除」欄を見てみましょう。ここには、社会保険料(健康保険料、厚生年金保険料、雇用保険料など)や所得税、住民税などが記載されています。これらの控除額の合計が、支給総額から差し引かれ、最終的な「差引支給額」、つまり「手取り額」となります。

給与所得を計算する上では、「給与収入」が重要になります。これは、1年間の「支給」欄の合計額と考えて良いでしょう。そして、そこから「給与所得控除」や「所得控除」を差し引いたものが、税金計算の基礎となる「所得」となるわけです。給与明細には、直接「給与所得」という項目は書かれていないことが多いですが、この「支給」と「控除」の項目を理解することで、給与と所得の概念がつながってきます。

所得税と住民税、どう違うの?

所得税と住民税は、どちらも所得に対してかかる税金ですが、その管轄と計算方法に違いがあります。まず、 所得税 は国に納める税金です。計算の基礎となるのは、先ほど説明した「給与所得」や他の所得を合算した「総合課税所得」や、それぞれの所得ごとの「分離課税所得」です。給与所得者であれば、源泉徴収という形で毎月の給与から天引きされていることが多いでしょう。年末調整で最終的な税額が確定します。

一方、 住民税 は、住んでいる都道府県や市町村に納める税金です。住民税の計算も、所得税と同様に所得に基づいて計算されますが、計算方法や税率、控除の種類などが所得税とは異なります。住民税には、「均等割」と「所得割」の二つの部分があります。均等割は、所得に関わらず一定額かかるもので、所得割は、所得に応じてかかるものです。

給与所得の場合、住民税は通常、翌年の6月から1年かけて、毎月の給与から天引きされる「特別徴収」という形で納めることになります。給与明細の控除欄には、所得税と住民税がそれぞれ記載されていますので、これらを見比べることで、両者の違いをより実感できるでしょう。

社会保険料って何?

社会保険料は、給与から天引きされるものの中でも、税金とは少し性質が異なります。これは、病気やケガ、失業、老後など、人生における様々なリスクに備えるための「社会保険制度」を支えるためのお金です。具体的には、主に以下の4つの保険料が含まれます。

  • 健康保険料 :病気やケガをしたときの医療費を保障
  • 厚生年金保険料 :老齢、障害、死亡などの際に年金が支給される
  • 介護保険料 :40歳以上の方が対象。介護が必要になったときにサービスを受けられる
  • 雇用保険料 :失業したときに失業給付金を受け取れる

これらの社会保険料も、給与所得から差し引かれるため、手取り額に影響を与えます。ただし、社会保険料は、所得税の計算において「社会保険料控除」として、所得から差し引くことができるため、税負担を軽減する効果もあります。

年末調整と確定申告 ~ 最終的な税額の確認~

「年末調整」と「確定申告」は、どちらも最終的な税額を計算し、納めるべき税金を確定させるための手続きですが、対象者や時期が異なります。まず、 年末調整 は、会社員などの給与所得者が、1年間の所得税額を確定させるために、会社が行ってくれる手続きです。毎月の給与から源泉徴収された所得税額と、給与所得控除や各種所得控除を差し引いた後の最終的な所得税額を比較し、不足があれば追加で徴収、多ければ還付されます。

一方、 確定申告 は、給与所得者以外の人や、給与所得者であっても一定の条件に当てはまる人が、自ら税務署に所得の申告と納税を行う手続きです。例えば、副業で一定以上の所得がある場合や、医療費控除、住宅ローン控除などを自分で申告したい場合などが該当します。確定申告を行うことで、払いすぎた税金が還付されることもあります。

給与所得者であっても、生命保険料控除や地震保険料控除、ふるさと納税などの寄附金控除、医療費控除などを最大限に活用したい場合は、年末調整だけでは対応しきれない部分があるため、確定申告が必要になることもあります。これらの手続きを理解することで、より有利に税金を納めることができるのです。

「給与」と「所得」の違い、そしてそこから派生する様々な制度について、少しでも理解が深まったでしょうか。これらの知識は、単に給与明細を眺めるだけでなく、自分のライフプランを考える上でも非常に役立ちます。これからも、お金に関する知識を少しずつ身につけて、賢く家計を管理していきましょう。

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