「血清」と「血漿」、どちらも血液から作られるものですが、一体何が違うのでしょうか?この二つの違いを知ることは、医療の現場はもちろん、私たちの健康について理解する上でもとても大切です。今回は、この「血清 と 血漿 の 違い」を分かりやすく解説していきます。
血液を理解するための基本:血清と血漿の製造工程
まず、血清と血漿の最も大きな違いは、血液からそれらを取り出す過程で「凝固因子」というものが残っているかどうかです。血液は、ケガをした時に固まって出血を止める働きを持っています。この血液が固まる際に重要な役割を果たすのが凝固因子です。
血漿は、血液を採取した後に「 anticoagulants(抗凝固剤) 」という、血液を固まりにくくする薬を加えた試験管に入れて遠心分離機で回すことで得られます。この方法だと、血液の細胞成分(赤血球や白血球、血小板など)と、それ以外の液体部分である血漿をきれいに分けることができます。血漿には、タンパク質や栄養素、ホルモンなど、体にとって非常に大切なものがたくさん溶けています。
一方、血清は、血液を採取した後に何も加えず、そのまましばらく置いておくと、血液が自然に固まります。この固まった部分(血餅)を取り除いた後に残る、透明な液体が血清です。つまり、血清は血漿から凝固因子が取り除かれた状態と言えます。 この凝固因子の有無が、血清と血漿の決定的な違いなのです。
- 血漿:抗凝固剤を加えた血液から得られる液体部分
- 血清:血液を自然に固まらせてから得られる液体部分
それぞれの特性と用途
血漿は、その豊富な成分から、医療現場で輸血用製剤として直接使われることがあります。例えば、出血多量で失われた血液の量を補ったり、特定のタンパク質が不足している患者さんに補充したりする際に使われます。
また、血漿は、以下のような様々な検査に利用されます。
- 血糖値測定
- コレステロール値測定
- 肝機能検査
- 腎機能検査
一方、血清は、凝固因子が取り除かれているため、その後の検査結果に影響を与えにくいという特徴があります。そのため、多くの血液検査で血清が用いられます。
| 項目 | 血漿 | 血清 |
|---|---|---|
| 凝固因子 | 含む | 含まない |
| 主な用途 | 輸血用製剤、一部の検査 | 多くの血液検査 |
なぜ「凝固因子」が重要なのか?
凝固因子は、血液が固まるために不可欠なタンパク質群です。これらが正常に働くことで、傷口から血液が流れ出るのを防ぎ、生命を守っています。血漿にはこれらの凝固因子がそのまま含まれているため、血液の「固まる力」を保持しています。
しかし、血液検査を行う際には、この「固まる力」が邪魔になることがあります。例えば、血液を固まらせずにそのまま検査してしまうと、検査結果に影響が出てしまう可能性があるのです。そこで、検査の種類によっては、あえて凝固因子を取り除いた血清を使用するのです。
凝固因子は、体内では常にバランスを保って働いています。このバランスが崩れると、血栓ができやすくなったり、逆に止血がうまくいかなくなったりと、様々な病気につながることがあります。
凝固因子について、さらに詳しく見ていきましょう。
- 第VIII因子: 血友病に関わる因子
- 第IX因子: 血友病に関わる因子
- フィブリノーゲン: 血漿タンパク質の一種で、血栓形成の最終段階でフィブリンになる
検査での使い分け:知っておきたいポイント
「血清」と「血漿」のどちらを使うかは、行われる検査の種類によって厳密に決められています。これは、検査の精度を最大限に高めるための重要なステップなのです。
例えば、血液を採取した試験管に抗凝固剤が入っているかどうかが、その後の検査結果に大きく影響します。抗凝固剤が入っている試験管で採取されたものは「血漿」、入っていない試験管で採取されたもの(または自然に固まった後)は「血清」として扱われます。
医療従事者は、これらの違いを正確に理解し、適切な検体(血液や血漿、血清のこと)を採取・処理することで、信頼性の高い検査結果を得ています。
検査での使い分けは、以下のようになります。
- 血漿が使われる検査: 一部の凝固系検査、血中薬物濃度測定など
- 血清が使われる検査: 一般的な生化学検査(肝機能、腎機能、血糖、コレステロールなど)、血清学的検査(感染症の抗体検査など)
採血時の注意点
私たちが健康診断などで採血を受ける際、看護師さんや医師は、どの種類の試験管(抗凝固剤入りか、そうでないか)に血液を採取するかを、目的の検査に合わせて慎重に選んでいます。この選択を間違えると、せっかく採った血液も無駄になってしまう可能性があるのです。
例えば、血糖値を測りたいのに、抗凝固剤入りの試験管に採血してしまうと、結果が正確に出ないことがあります。逆に、凝固を調べる検査なのに、抗凝固剤を入れずに放置してしまうと、正しく固まらず、本来の機能が分からなくなってしまいます。
普段、私たちが採血を受ける際にはあまり意識しないかもしれませんが、医療現場ではこのような細かな配慮が、正確な診断や治療に繋がっているのです。
採血時の注意点として、以下の点が挙げられます。
- 検査目的に合わせた適切な試験管の選択
- 正確な採血量
- 採血後の速やかな処理
それぞれの成分の違い:さらに深く理解するために
血漿と血清の成分を比較すると、その違いがより明確になります。血漿には、凝固因子(フィブリノーゲン、プロトロンビンなど)が豊富に含まれています。これらは、血液が固まる過程で重要な役割を果たします。
一方、血清は、これらの凝固因子が取り除かれているため、血漿に比べてタンパク質の総量が若干少なくなります。しかし、アルブミンやグロブリン、その他様々な栄養素、ホルモン、電解質などは、血漿と血清の両方に含まれています。
それぞれの成分を一部比較してみましょう。
| 成分 | 血漿 | 血清 |
|---|---|---|
| フィブリノーゲン | あり | なし |
| プロトロンビン | あり | なし |
| アルブミン | あり | あり |
| グロブリン | あり | あり |
まとめ:健康管理の基本知識
血清と血漿の違い、そしてそれぞれの用途や特性について、ご理解いただけたでしょうか?「血清 と 血漿 の 違い」は、一見難しそうに思えるかもしれませんが、血液の基本的な仕組みを理解するための大切な一歩です。これらの知識は、ご自身の健康管理や、医療機関での検査結果を理解する上で、きっと役立つはずです。