「低所得者」と「非課税世帯」、どちらも所得が低い状況を表す言葉ですが、実は意味や対象となる範囲が少し異なります。この二つの違いを正しく理解することは、受けられる支援や制度を把握する上でとても大切です。この記事では、 低所得者と非課税世帯の違い を、皆さんが分かりやすいように、具体的な例を交えながら詳しく解説していきます。
低所得者と非課税世帯、ここが違う！
まず、一番大切なのは「所得」の捉え方です。低所得者というのは、一般的に「収入が少ない人」を指します。これは、給料が低い会社員や、パート・アルバイトで働く方など、生活に必要なお金が限られている状態のことです。一方、非課税世帯というのは、「住民税がかからない世帯」のことを指します。住民税がかからないということは、収入が一定額以下である、つまり「所得が一定額以下」であるという基準で決まるんです。
ですから、収入が少ない＝低所得者というイメージは合っていますが、低所得者だからといって必ずしも非課税世帯になるとは限りません。例えば、夫婦二人で働いていて、二人合わせての収入はそれほど多くなくても、一人ひとりの所得が住民税のかかる基準を超えている場合、非課税世帯にはならないのです。逆に、一人で働いているけれど、その収入が住民税の非課税基準を下回っている場合は、低所得者であり、かつ非課税世帯ということになります。
この違いを理解しておけば、ご自身やご家族がどのような支援を受けやすいのか、どの制度の対象になるのかが見えてきます。
- 低所得者： 収入が相対的に少ない状態。
- 非課税世帯： 住民税がかからない世帯。所得が一定額以下。
住民税の仕組みと非課税世帯
非課税世帯になるかどうかを判断する上で、住民税の仕組みを知ることが重要です。住民税は、前年の1月1日から12月31日までの所得に対して課税されます。この所得から、扶養家族がいる場合などの「所得控除」を差し引いた「課税所得金額」に税率をかけて計算されます。非課税世帯となるためには、この課税所得金額が一定額以下である必要があります。
具体的には、住民税がかからない基準額は、お住まいの自治体や、扶養している家族の人数によって異なります。一般的には、独身の方であれば年収100万円前後、扶養家族がいる場合は年収がさらに低くなります。つまり、住民税がかからないということは、それだけ所得が低いということの証明にもなるのです。
非課税世帯であると、以下のようなメリットがあります。
- 大学の授業料や入学金が減免される制度を利用できる場合がある。
- 奨学金制度の受給資格を得やすくなる場合がある。
- 公共料金の割引や、福祉サービスを受けられる場合がある。
このように、非課税世帯であることが、経済的な負担を軽減する様々な制度の利用につながることがあります。
低所得者と非課税世帯、支援制度はどう違う？
低所得者と非課税世帯では、受けられる支援制度が異なる場合があります。なぜなら、支援制度が「所得」を基準にしているのか、「住民税」を基準にしているのかで、対象者が変わってくるからです。例えば、児童手当などの一部の給付金は、世帯全体の所得で判断されるため、低所得者であっても非課税世帯でなくても受け取れることがあります。
しかし、高等教育の無償化制度や、一部の奨学金制度などでは、「非課税世帯」であることを要件としている場合があります。これは、非課税世帯であることが、経済的に困難な状況にあることの客観的な証明となるからです。
支援制度を利用する際には、まずご自身やご家族が「低所得者」に該当するのか、それとも「非課税世帯」に該当するのかを確認し、それぞれの制度の要件をしっかりと確認することが重要です。
| 支援制度の種類 | 主な判断基準 | 該当する可能性が高い人 |
|---|---|---|
| 児童手当 | 世帯の所得 | 低所得者、非課税世帯、それ以外でも所得による |
| 高等教育の無償化 | 非課税世帯 | 非課税世帯 |
所得の把握：収入と所得の違い
「収入」と「所得」は、しばしば混同されがちですが、この二つは明確に区別する必要があります。「収入」とは、働いて得た給料や、事業で得た売上など、手元に入ってきたお金の総額のことです。一方、「所得」とは、収入から必要経費（例えば、仕事をするためにかかった交通費や、事業に必要な仕入れ代など）を差し引いた金額のことです。そして、税金が計算されるのは、この「所得」に対してなのです。
非課税世帯になるかどうかを判断する基準は、この「所得」です。住民税を計算する際には、さらに「所得控除」というものがあり、扶養家族がいる場合や、病気で医療費がかさんだ場合などに、所得から一定額を差し引くことができます。最終的に税金がかかる「課税所得」を計算し、それでも一定額を超えるかどうかで、非課税世帯かどうかが決まります。
- 収入： 稼いだお金の総額
- 所得： 収入から経費を引いたもの
- 課税所得： 所得から所得控除を引いたもの
ですので、「年収が100万円です」と言っても、そこから経費や所得控除を差し引くと、住民税がかからない「所得」になる場合と、そうでない場合があります。
非課税世帯になるための手続きと確認方法
自分が非課税世帯になるためには、特別な手続きが必要なわけではありません。住民税は、お住まいの自治体が前年の所得を元に計算してくれます。しかし、ご自身が非課税世帯に該当するかどうかを確認したい場合や、証明が必要な場合は、いくつか方法があります。
- 住民税決定通知書（納税通知書）を確認する： 毎年6月頃に自治体から送られてくる書類で、前年の所得に対する住民税の金額が記載されています。ここに住民税が「0円」と記載されていれば、非課税世帯です。
- お住まいの自治体に問い合わせる： 直接、役所の税務課などに問い合わせて、ご自身の世帯が非課税世帯に該当するかどうかを確認することができます。その際、本人確認書類などが必要になる場合があります。
- 「非課税証明書」を取得する： 支援制度の申請などで必要になる場合、自治体で「非課税証明書」を発行してもらうことができます。これがあれば、客観的に非課税世帯であることを証明できます。
非課税世帯であることを証明する書類は、支援制度ごとに必要とされるものが異なる場合があるので、申請先の指示に従ってください。
低所得者向けの支援制度の例
低所得者向けの支援制度は、非課税世帯でなくても利用できるものがあります。これらの制度は、生活保護制度のようなセーフティネットとしての役割も担っています。例えば、以下のようなものが挙げられます。
- 失業給付（雇用保険）： 仕事を探している間、一定期間、収入の一部が支給されます。
- 生活福祉資金貸付制度： 低所得世帯や失業者などが、一時的に生活費に困窮した場合に、無利子または低金利で資金を借りられる制度です。
- 住居確保給付金： 離職などにより住居を失うおそれのある方に、家賃相当額を自治体が家主に支払う制度です。
これらの制度は、世帯の所得が一定額以下であることなどが条件となります。ご自身の状況に合わせて、お住まいの自治体の窓口や、ハローワークなどで相談してみると良いでしょう。
まとめ：自分に合った支援を見つけよう
「低所得者」と「非課税世帯」の違い、そしてそれぞれに関連する支援制度について解説してきました。低所得者というのは収入の状況、非課税世帯というのは税金がかからないという状況を指し、重なる部分もありますが、完全に同じではありません。どちらの言葉が当てはまるか、そしてどのような支援制度があるのかは、ご自身の収入や家族構成、さらにはお住まいの自治体の制度によっても異なります。
この記事が、皆さんがご自身の状況を正しく理解し、必要な支援へとつながるための一助となれば幸いです。もし分からないことがあれば、一人で悩まず、自治体の窓口や相談機関に積極的に相談してみてください。