「ギプスシーネ」と「ギプス」、どちらも骨折などの治療で使われるものですが、実はそれぞれ役割や特徴が違うんです。今日は、この ギプスシーネ と ギプス の 違い について、分かりやすく解説していきますね!
ギプスシーネとギプスの基本的な役割の違い
まずは、一番大事な「役割」の違いから見ていきましょう。ギプスシーネは、まさに「固定」が主な役割。骨折した部分が動かないように、一時的にしっかりと支えるために使われます。例えば、整復といって、ずれた骨を正しい位置に戻した直後などに、その状態を保つために使われることが多いです。 この一時的な固定が、その後の本格的な治療をスムーズに進める上で非常に重要 なのです。
一方、ギプスは、より長期的な固定を目的としています。ギプスシーネで初期の固定が終わった後、骨がしっかりとくっつくまで、数週間から数ヶ月にわたって患部を保護し、動かないようにします。ギプスは、腕全体や足全体を覆うような、より広範囲で頑丈な作りになっているのが一般的です。
まとめると、ギプスシーネは「初期の応急処置的な固定」、ギプスは「本格的で長期的な固定」というイメージで捉えると分かりやすいでしょう。
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ギプスシーネ
:
- 役割:一時的な固定、整復位の保持
- 期間:比較的短い
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ギプス
:
- 役割:長期的な固定、骨癒合の促進
- 期間:比較的長い
ギプスシーネの素材と構造
ギプスシーネは、その名の通り「シーネ」という、細長い板状のものを複数組み合わせて作られます。このシーネは、石膏やプラスチックなどの素材でできており、硬く丈夫なのが特徴です。患部の周りに、数本から十数本程度のシーネを配置し、包帯やテープで固定して使います。
この構造の利点は、必要に応じてシーネの数を調整したり、取り外したりしやすいことです。例えば、腫れがひどい場合などは、シーネを緩めることも可能です。また、ギプスに比べて通気性が良い場合もあり、皮膚のトラブルを軽減する効果も期待できます。
シーネの数や配置は、骨折の場所や状態によって医師が判断します。患者さん自身が勝手に触ったり、外したりしないように注意が必要です。
| 素材 | 構造 | 特徴 |
|---|---|---|
| 石膏、プラスチックなど | 細長い板状の「シーネ」を複数使用 | 取り外しや調整が比較的容易、通気性が良い場合がある |
ギプスの素材と構造
ギプスは、石膏やグラスファイバーといった素材を、患部全体に巻き付けて固めて作られます。ギプスシーネに比べて、より広範囲を覆い、一枚の板のように一体化して強固に固定するのが特徴です。そのため、一度固まってしまうと、患者さん自身で取り外したり、調整したりすることはできません。
ギプスは、骨折した部分が動かないように、また、外部からの衝撃から守るために、非常に頑丈に作られています。腕全体を覆う「腕ギプス」や、足全体を覆う「脚ギプス」など、部位によって形も様々です。ギプスが完成するまでの間は、まだ固まっていない石膏などが肌に触れないように、ガーゼなどを挟むこともあります。
ギプスをしている間は、汗をかいたり、皮膚が蒸れたりすることもあります。清潔を保つことが大切ですが、基本的には医師の指示に従って、ギプスを濡らさないように注意しましょう。
- 素材:石膏、グラスファイバーなど
- 構造:患部全体を覆い、一体化させる
- 特徴:強固な固定、外部からの保護
- 注意点:水に濡らさない、自己判断で外さない
ギプスシーネのメリット・デメリット
ギプスシーネのメリットとして、まず挙げられるのは、先ほども触れた「調整のしやすさ」です。腫れがある場合や、術後しばらくは腫れが引くことを想定して、ギプスシーネを調整することが可能です。これにより、血行障害などの合併症のリスクを減らすことができます。
また、ギプスシーネは、ギプスに比べて「軽量」であることが多く、患者さんの負担を軽減できる場合もあります。そして、取り外しや交換が比較的容易であるため、レントゲン検査などで患部の状態を確認する際にも便利です。
一方、デメリットとしては、ギプスほど「完全な固定」ではないという点が挙げられます。そのため、患者さん自身が無理な動きをしてしまうと、骨折部位に負担がかかってしまう可能性があります。また、シーネの間に隙間ができやすく、そこからゴミやホコリが入り込むことも考えられます。
ギプスのメリット・デメリット
ギプスの最大のメリットは、その「強固な固定力」にあります。一度固まったギプスは、骨折部位をしっかりと固定し、外部からの衝撃からも保護してくれます。これにより、骨が正常な位置でくっつくのを助け、治癒を促進します。
また、ギプスは広範囲を覆うため、患部をしっかりと守ることができます。日常生活でのちょっとした接触や、意図しない動きから骨折部位を守り、痛みを軽減する効果も期待できます。長期間の固定が必要な骨折の場合、ギプスは非常に有効な治療法となります。
デメリットとしては、まず「重さ」が挙げられます。特に脚ギプスなどは、その重さで移動が制限され、身体への負担となることがあります。また、ギプス内は蒸れやすく、汗をかきやすい皮膚トラブル(かぶれ、かゆみなど)が起こりやすいという点も無視できません。
さらに、一度装着すると「自己判断で外すことができない」ため、医師の指示なしに動かすことは危険です。定期的な診察で、ギプスの状態や患部の治癒具合を確認してもらう必要があります。
ギプスシーネの適応
ギプスシーネが使われるのは、主に骨折の初期段階です。骨折の整復(骨を正しい位置に戻すこと)を行った直後や、手術の直後など、一時的に強固な固定が必要だけれど、腫れが予想される場合などに適しています。例えば、足首の捻挫で腫れがひどい場合などにも、シーネで固定することがあります。
また、骨折が比較的軽度で、厳密な固定がそれほど必要ない場合にも、ギプスシーネが選択されることがあります。患者さんの状態や骨折の種類によって、医師が最適な判断を下します。
ギプスシーネは、取り外しや調整が比較的容易なため、リハビリテーションの初期段階で、段階的に固定を緩めていく際にも活用されることがあります。このように、ギプスシーネは、治療の初期段階から回復期にかけて、幅広い用途で使われる便利なものです。
ギプスの適応
ギプスは、より複雑な骨折や、長期間の固定が必要な場合に主に使用されます。例えば、太ももの骨(大腿骨)や、すねの骨(脛骨)などの大きな骨の骨折、関節に近い部分の骨折で、関節の動きも固定する必要がある場合などです。
また、手術で骨折部をプレートやネジで固定した場合でも、さらに強度を高めるためにギプスが併用されることもあります。ギプスは、患者さんの日常生活での負担を最小限にしつつ、骨折部位を確実に保護し、骨がしっかりとくっつくまで安静を保つことを目的としています。
ギプスが選択されるかどうかは、骨折の重症度、部位、患者さんの年齢や活動レベルなど、様々な要因を考慮して医師が決定します。一般的には、ギプスシーネよりも重症度が高い骨折や、より確実な固定が求められる場合に用いられると考えて良いでしょう。
ギプスシーネとギプス、いつ交換するの?
ギプスシーネは、一般的に数日から1週間程度で、ギプスに交換されることが多いです。これは、初期の腫れが引き、患部の状態が安定してくるためです。腫れが引いた状態でギプスシーネをそのままにしていると、かえって緩くなり、固定力が低下してしまう可能性があるからです。
ギプスに交換するタイミングは、患者さんの回復具合によって異なります。医師がレントゲン写真などで骨折部の状態を確認し、最適な交換時期を判断します。頻繁な交換は皮膚への負担も大きいため、必要最低限の交換にとどめるのが一般的です。
どちらの場合も、交換の際には医師や看護師の指示をよく聞き、安全に処置してもらうことが大切です。
ギプスシーネとギプスの合併症
ギプスシーネやギプスを使用している際に、注意すべき合併症がいくつかあります。まず、最も注意すべきは「ギプス症候群」です。これは、ギプスが患部を締め付けすぎることによって、神経や血管が圧迫され、痛み、しびれ、腫れ、麻痺などが生じる状態です。もし、ギプスがきつすぎると感じたり、異常な痛みやしびれを感じたりした場合は、すぐに医師に伝えましょう。
また、ギプス内は湿気がこもりやすく、皮膚のトラブルも起こりやすいです。かゆみやただれ、床ずれ(褥瘡)などを起こす可能性もあります。皮膚を清潔に保つことが重要ですが、無理に掻いたり、刺激したりしないように注意が必要です。
さらに、長期間ギプスで固定していると、筋肉が弱ってしまったり、関節が硬くなってしまったりする「廃用症候群」も起こり得ます。これは、リハビリテーションで改善していくものですが、予防のためにも、可能な範囲で医師の指示に従い、適度な運動を取り入れることが大切です。
これらの合併症は、早期発見・早期対処が重要です。気になる症状があれば、自己判断せず、必ず医療機関を受診してください。
このように、「ギプスシーネ」と「ギプス」は、どちらも骨折治療に不可欠なものですが、その役割や使われるタイミング、固定の強さなどに違いがあります。それぞれの特徴を理解することで、ご自身の治療に対する不安も軽減されるはずです。もし分からないことがあれば、遠慮なく医師や看護師に質問してみてくださいね。