医療現場でよく耳にする「MR」と「CT」。これらはどちらも体の中を詳しく調べるための検査方法ですが、実は仕組みや得意なことが全く違います。 MRとCTの違い を理解することは、ご自身の検査についてより深く知るため、そして不安を解消するためにとても大切です。
MRIとCT、それぞれの基本原理
MR(MRI:Magnetic Resonance Imaging)は、強力な磁石と電波を使って、体の中の水分に反応して発生する信号を画像化する検査です。CT(Computed Tomography:コンピュータ断層撮影)は、X線を体の周りから当てて、その透過度(どれくらいX線が通り抜けるか)の違いをコンピュータで画像化します。このように、MRとCTは全く異なる原理で体の内部を映し出しているのです。
MRの最大のメリットは、X線被ばくがないことです。そのため、妊娠中の方や小さなお子さんでも比較的安心して受けられます。また、軟部組織(筋肉、神経、血管、脳など)の描出に優れており、病変の早期発見や詳細な状態把握に役立ちます。一方で、検査に時間がかかること、金属類を持ち込めないこと、閉所が苦手な方には苦痛に感じられる場合があることがデメリットとして挙げられます。
CTは、短時間で広範囲の撮影が可能で、骨や肺、出血などの異常を捉えるのに非常に適しています。緊急性の高い検査(例えば、事故による外傷や脳卒中など)で迅速な診断が必要な場合に活躍します。しかし、X線を使用するため被ばくがあること、軟部組織の描出はMRIに比べて劣るという特徴があります。MRとCT、どちらの検査が適しているかは、調べる目的や体の部位によって決まります。
MRとCTの主な違いをまとめると以下のようになります。
| 検査方法 | 原理 | 得意な部位・病変 | メリット | デメリット |
|---|---|---|---|---|
| MR (MRI) | 磁石と電波 | 軟部組織(脳、筋肉、靭帯など) | X線被ばくがない、軟部組織の描出に優れる | 検査時間が長い、閉所恐怖症には不向き、金属類持ち込み不可 |
| CT | X線 | 骨、肺、出血 | 短時間で撮影可能、骨や出血の診断に優れる | X線被ばくがある、軟部組織の描出はMRに劣る |
MR(MRI)でできること、得意なこと
MR検査は、特に脳や脊髄、関節、筋肉といった、やわらかい組織の状態を詳しく見たい場合に威力を発揮します。例えば、脳腫瘍や脳梗塞、椎間板ヘルニア、靭帯の損傷などの診断に欠かせません。
- 脳の検査: 脳腫瘍、脳梗塞、脳出血、認知症の原因特定など
- 脊椎・脊髄の検査: 椎間板ヘルニア、脊髄腫瘍、神経の圧迫など
- 関節・筋肉の検査: 靭帯損傷、半月板損傷、筋肉の炎症、関節の炎症など
MRは、造影剤を使わなくても血管の状態を映し出すことができる「MRA(Magnetic Resonance Angiography)」という検査も可能です。これにより、脳動脈瘤や血管の狭窄などを非侵襲的に評価できます。
CTでできること、得意なこと
CT検査は、骨折や内臓の出血、肺の病気(肺炎や肺がんなど)、腹部の腫瘍などの診断に非常に役立ちます。骨の細かな構造や、突然の出血による血のかたまり(血腫)などを迅速に捉えることができます。
- 骨の検査: 骨折、骨の変形、骨腫瘍など
- 肺の検査: 肺炎、肺がん、気胸など
- 腹部の検査: 腹部臓器の腫瘍、炎症、結石、消化管の異常など
CT検査は、救急外来での患者さんの状態把握や、手術前の精密な計画立案にも不可欠な検査となっています。
MRとCT、どちらを選ぶか?
MRとCTのどちらの検査が適しているかは、病気の疑いや、体のどの部分を詳しく調べたいかによって医師が判断します。例えば、頭痛がして脳の出血が疑われる場合は、迅速に撮れるCTが選ばれることが多いでしょう。一方、めまいや手足のしびれがあり、脳や脊髄の神経の異常が疑われる場合は、より詳細な画像が得られるMRが選ばれることがあります。
MR(MRI)の注意点
MR検査を受ける際には、いくつかの注意点があります。まず、強力な磁石を使用するため、体内にペースメーカーなどの金属製の医療機器が入っている方は検査ができない場合があります。また、アクセサリーや装飾品、衣類についた金属なども取り外す必要があります。検査中は、狭い空間でじっとしている必要があるため、閉所恐怖症の方は事前に医師に相談しましょう。検査音が大きいため、耳栓やヘッドホンが用意されるのが一般的です。
CTの注意点
CT検査ではX線を使用するため、妊娠中の方は、胎児への影響を考慮して、原則として検査を避けるか、医師の慎重な判断のもとで行われます。また、造影剤を使用する検査では、アレルギー反応や腎臓への影響がないか、事前に確認が必要です。検査自体は短時間で終わることが多いですが、検査部位によっては息を止める必要がある場合もあります。
MRとCT、検査の進め方の違い
MR検査は、筒状の装置の中に入って横になり、検査を行います。検査中は、大きな音がしますが、リラックスして安静にしていることが大切です。検査時間は、部位にもよりますが、CTよりも長くなる傾向があります。CT検査は、ドーナツ状の装置の中をベッドが移動しながら撮影します。検査中は、医師や技師の指示に従って、呼吸を止めたり、じっとしていたりします。検査時間は、MRに比べて短時間で済むことが多いのが特徴です。
MRとCT、それぞれの検査には、このように異なる特徴があります。どちらの検査がご自身の症状や状態に合っているのか、不安な点があれば、遠慮なく医師や看護師に質問してみてください。正確な情報と理解は、安心して検査を受けるための第一歩です。