テレビの配線でよく耳にする「分波器」と「分配器」。一見似ているように思えますが、実はそれぞれ役割が大きく異なります。この二つの「分波器と分配器の違い」を正しく理解することで、テレビ視聴環境をより快適にすることができます。この記事では、その違いを分かりやすく解説します。
信号を「分ける」か「分ける」か?分波器と分配器の核心的な違い
まず、最も重要な「分波器と分配器の違い」は、信号の「種類」を分けるか、「数」を分けるかという点です。分波器は、テレビ放送を受信するために必要な「地上デジタル放送」と「衛星放送」という異なる周波数帯の信号を、それぞれ別のケーブルに振り分ける役割を担います。一方、分配器は、一つの信号を複数の機器に均等に分ける役割を持ちます。どちらも「分ける」という言葉は共通していますが、その「分ける」対象が全く違うのです。
具体的に見ていきましょう。
- 分波器の役割 :テレビアンテナから来る一本のケーブルには、地上デジタル放送の信号と衛星放送の信号が混ざっています。分波器は、この混ざった信号を「地上デジタル放送用」と「衛星放送用」の二つに分け、それぞれの信号に合ったチューナーに接続するためのものです。 この信号の「種類」を分ける機能こそが、分波器の最も重要な役割であり、テレビが正しく映像を映し出すために不可欠です。
- 分配器の役割 :分配器は、一本の信号線を複数に分岐させ、それぞれの分岐先に同じ信号を送ります。例えば、リビングと寝室の二つの部屋で同じテレビ放送を見たい場合などに使われます。
この違いを理解することは、テレビの配線トラブルを解決したり、将来的にアンテナ工事や配線変更をする際に非常に役立ちます。
分波器の仕組みと使い方
分波器は、その名の通り「波(信号)」を「分ける」装置です。テレビ放送の信号は、地上デジタル放送と衛星放送で周波数が異なります。分波器は、この周波数の違いを利用して、それぞれの信号を分離します。
- アンテナからのケーブルを分波器の「入力」端子に接続します。
- 分波器には通常、「地上デジタル」と「衛星(BS/CS)」といった出力端子が分かれています。
- それぞれの出力端子から、地上デジタルチューナーや衛星チューナー(BS/CSチューナー)へとケーブルを接続します。
これにより、それぞれのチューナーは、自分が必要とする信号だけを受け取ることができるようになります。例えば、BS/CS放送が見られない場合は、分波器の接続が間違っているか、分波器自体に問題がある可能性が考えられます。
分配器の仕組みと使い方
分配器は、一本の信号を「分ける」ため、どの出力端子にも同じ信号が流れます。ただし、信号を分ける数が増えるにつれて、各端子に届く信号の強さ(レベル)は弱くなります。
表で見てみましょう。
| 分配器の種類 | 出力端子の数 | 信号の減衰(目安) |
|---|---|---|
| 2分配器 | 2 | 約3〜4dB |
| 3分配器 | 3 | 約5〜6dB |
| 4分配器 | 4 | 約6〜7dB |
このように、分配器で信号を分けると、どうしても信号レベルは低下します。そのため、分配器を複数使う場合や、信号が弱くなりそうな場合は、ブースター(増幅器)の設置が必要になることもあります。
分波器と分配器を併用する場合
テレビの配線では、分波器と分配器が併用される場面も少なくありません。例えば、地上デジタル放送と衛星放送の両方を受信し、さらにそれらを複数の部屋に分配したい場合などです。
この場合、まずは分波器で地上デジタルと衛星放送の信号をそれぞれ分離します。その後、分離されたそれぞれの信号を、さらに分配器を使って各部屋へと送ります。
-
例
:
- アンテナから一本のケーブルを 分波器 に入力。
- 分波器から出た「地上デジタル」信号を 分配器 (例:2分配器)に接続。
- 分波器から出た「衛星」信号を別の 分配器 (例:2分配器)に接続。
- それぞれの分配器から、各部屋のテレビへケーブルを接続。
このように、目的に応じて適切な機器を組み合わせることが重要です。
分波器と分配器の選び方
「分波器と分配器の違い」を理解した上で、次にそれぞれの選び方について説明します。どちらの機器を選ぶかは、お使いのテレビやアンテナの種類、そして「何を」「いくつに」分けたいかによって決まります。
分波器を選ぶ際は、以下の点に注意しましょう。
- 対応する放送の種類 :地上デジタル放送と衛星放送(BS/CS)の両方に対応しているか確認しましょう。
- 入力・出力端子の形状 :お使いのケーブルに合った端子形状(F型コネクタなど)を選びましょう。
- シールド性能 :外部からのノイズの影響を受けにくい、シールド性能の高いものを選ぶと、より安定した受信が期待できます。
分配器を選ぶ際は、以下の点に注意しましょう。
- 分配数 :何台のテレビや機器に信号を分けたいかに合わせて、必要な分配数(2分配、3分配、4分配など)を選びます。
- 周波数帯域 :地上デジタル放送だけでなく、BS/CS放送にも対応しているか確認しましょう。最近の分配器はほとんど対応していますが、古いものだと対応していない場合もあります。
- 信号レベルの低下 :分配数が増えるほど信号は弱くなるため、必要に応じてブースターの併用も検討しましょう。
「分波器」「分配器」以外の関連機器
テレビの配線には、「分波器」や「分配器」以外にもいくつかの関連機器があります。これらの機器と「分波器と分配器の違い」を理解しておくと、よりスムーズな配線作業ができるでしょう。
代表的なものとしては、以下のようなものがあります。
- 混合器(ミキサー) :分波器とは逆の役割で、異なる周波数帯の信号を一つにまとめる機器です。例えば、地上デジタルアンテナと衛星アンテナからのケーブルを一本にまとめたい場合などに使われます。
- ブースター(増幅器) :アンテナから受信した信号が弱い場合に、信号レベルを増幅する機器です。分配器で信号が弱くなった場合や、アンテナの設置場所からテレビまでの距離が遠い場合などに使用されます。
「分波器と分配器の違い」だけでなく、これらの機器の役割も理解しておくと、テレビの配線に関する知識が深まります。
まとめると、「分波器と分配器の違い」は、信号の「種類」を分けるか、「数」を分けるかという点にあります。分波器は地上デジタルと衛星放送の信号を分けるために、分配器は一つの信号を複数の機器に分けるために使われます。この二つの機器の役割を正しく理解し、目的に合ったものを選ぶことで、テレビの視聴環境をより快適にすることができます。