「検察官」と「警察官」。どちらも事件に関わるお仕事ですが、具体的にどんな違いがあるのでしょうか? 検察官と警察官の違いを理解することで、日本の司法制度がどのように機能しているのか、より深く知ることができます。
事件解決への道のり:それぞれの役割
検察官と警察官は、犯罪捜査においてそれぞれ異なる、しかし連携しあう重要な役割を担っています。警察官は、犯罪が発生した際に現場に駆けつけ、証拠を集めたり、容疑者を逮捕したりする「捜査の第一線」とも言える存在です。一方、検察官は、警察が集めた証拠を精査し、事件が法に基づいて適切に処理されるように指示を出したり、裁判で犯罪者を訴追したりする「事件の最終的な判断者」と言えます。
この二者の違いを具体的に見ていきましょう。警察官の主な仕事は以下の通りです。
- 犯罪の認知と捜査
- 証拠の収集と保全
- 被疑者の逮捕
- 事件の概要を検察官に送致(送検)
そして、検察官の主な仕事は以下のようになります。
- 警察から送致された事件の捜査指揮
- 証拠の吟味
- 起訴・不起訴の判断
- 裁判での公訴提起(起訴)
- 裁判での論告・求刑
このように、 事件を法廷に持ち込むかどうかの判断や、法廷で国の代表として訴える役割を担うのが検察官 であり、その前段階の捜査を主導するのが警察官なのです。
権限と責任の範囲
検察官と警察官には、それぞれ異なる権限と責任があります。警察官は、犯罪の現行犯逮捕や、裁判官の発行する令状に基づいた捜索・差押えなどの強制捜査を行う権限を持ちます。しかし、その権限の行使は、法によって厳しく制限されており、人権を侵害しないよう細心の注意が払われます。
一方、検察官は、警察官が収集した証拠を基に、被疑者を起訴するかどうかを最終的に決定する権限を持っています。これは非常に重い責任を伴う判断であり、公平かつ客観的な視点が求められます。検察官が起訴しなければ、裁判は開かれず、犯罪者が処罰されることはありません。したがって、 検察官の「起訴・不起訴」の判断は、事件の行方を左右する極めて重要な権限 と言えるでしょう。
権限の範囲をまとめると、以下のようになります。
| 警察官 | 犯罪捜査、逮捕、証拠収集 |
|---|---|
| 検察官 | 捜査指揮、起訴・不起訴の判断、公訴提起 |
資格と任命
検察官と警察官になるためには、それぞれ異なる資格や任命プロセスを経る必要があります。警察官になるためには、まず警察学校に入校し、必要な知識や技術を習得する必要があります。これは、国民の安全を守るという使命を果たすために、十分な訓練を受けることが不可欠だからです。
対して、検察官になるためには、司法試験に合格し、司法修習を終えた後に、検察官任官試験に合格する必要があります。これは、法律の専門家として、高度な知識と倫理観が求められるためです。 検察官は「法曹」と呼ばれる専門職 であり、裁判官や弁護士と同じように、法に基づいて公正な判断を下すことが期待されています。
組織と指揮系統
検察官と警察官は、それぞれ異なる組織に属し、異なる指揮系統を持っています。警察官は、都道府県警察に所属し、そのトップは警察本部長や警視総監といった役職者です。警察庁という国の機関もありますが、個々の事件捜査においては、各都道府県警察の指揮系統に従って活動します。
一方、検察官は、法務省の外局である検察庁に所属します。検察庁には、最高検察庁、高等検察庁、地方検察庁、区検察庁といった階層があり、上級の検察庁の指揮を受けることになります。 検察官の指揮系統は、より全国的かつ統一された基準で事件を扱うために整備 されています。
指揮系統の違いは、以下のようなイメージで捉えられます。
- 警察官 :各都道府県警察が中心となり、現場での捜査を遂行。
- 検察官 :検察庁という全国組織の中で、より上位の検察庁の指示を仰ぎながら、公訴権の行使を決定。
事件の終結とその後の流れ
事件がどのように終結していくかは、検察官と警察官の役割分担によって決まります。警察官は、捜査で収集した証拠や調書を検察官に「送致(送検)」します。検察官は、その送致された資料を元に、被疑者を起訴するかどうかを判断します。この判断を「不起訴処分」とする場合、事件はそこで終了となります。
もし検察官が「起訴」と判断した場合、事件は裁判へと進みます。裁判では、検察官が被告人の有罪を立証するために証拠を提出し、弁護士(被告人の味方)がそれを争います。 裁判官は、検察官の主張と弁護士の主張を聞き、最終的な判決を下す ことになります。警察官は、裁判が開かれる前段階での捜査や逮捕が主な役割であり、裁判そのものに直接関わることは少なくなります。
まとめ
検察官と警察官は、どちらも法の下の正義を実現するために欠かせない存在です。警察官が現場で証拠を集め、犯罪の疑いのある人物を逮捕する「捜査の担い手」であるのに対し、検察官は、その捜査結果を基に、裁判で犯罪を訴追するかどうかを判断する「公正な裁きの番人」と言えます。この二者の違いを理解することで、より一層、日本の司法制度への理解が深まるでしょう。