「社会保険」と「国保(国民健康保険)」、どちらも病気やケガをしたときに助けてくれる保険ということは知っていても、具体的に何が違うのか、意外と知らない人も多いのではないでしょうか。ここでは、この「社会保険と国保の違い」を分かりやすく、そして詳しく解説していきます。
社会保険と国保の基本的な違い
社会保険と国保の最も大きな違いは、加入する資格がある人の範囲と、運営している組織にあります。社会保険は、主に会社員や公務員など、雇用されている人が加入するもので、健康保険、年金保険、雇用保険、介護保険などが含まれます。一方、国保は、会社員や公務員以外の、自営業者、フリーランス、無職の人などが加入する、いわば「国民皆保険」を支えるための保険制度なのです。 この加入者の違いが、保険料の決まり方や受けられるサービスにも影響を与えます。
- 社会保険: 主に会社員・公務員など、雇用されている人が対象。
- 国保: 自営業者、フリーランス、無職の人など、それ以外の人々が対象。
社会保険は、企業が従業員のために保険料の一部を負担してくれる場合が多いのですが、国保は基本的に自分で保険料の全額を負担する必要があります。ただし、国や自治体からの補助もあるため、全く自己負担というわけではありません。
それぞれの保険制度は、国の医療や福祉を支える上で、非常に重要な役割を担っています。どちらに加入するかによって、毎月の負担額や、万が一の際の給付内容が変わってくるため、自分の状況に合わせて理解しておくことが大切です。
加入できる人の違い:社会保険と国保
社会保険と国保の加入資格について、もう少し詳しく見ていきましょう。社会保険には、さらにいくつかの種類がありますが、一般的に「社会保険」と言われたときにイメージされるのは、会社員などが加入する「健康保険」や「厚生年金保険」などです。
国保は、地域ごとに市町村などが運営しており、その地域に住んでいる人で、以下のいずれかに該当しない人が加入します。
- 会社の健康保険に加入している人(社会保険加入者)
- 後期高齢者医療制度に加入している75歳以上の人
- 生活保護を受けている人
つまり、会社員でなければ、基本的には国保に加入することになります。フリーランスで働いている方や、主婦・主夫の方、学生さんなども、国保の加入対象者となります。
この加入者の違いは、保険料の計算方法にも大きく影響します。社会保険の保険料は、給料(標準報酬月額)によって決まりますが、国保の保険料は、前年の所得や加入人数など、世帯の状況によって計算されることが一般的です。
保険料の決まり方:社会保険と国保
保険料の決まり方も、社会保険と国保の大きな違いの一つです。社会保険の場合、保険料は一般的に、被保険者の給与額(標準報酬月額)に基づいて計算されます。会社員の方であれば、毎月のお給料から一定の割合で保険料が天引きされているはずです。この保険料は、会社と被保険者で折半(半分ずつ負担)されることが一般的です。
一方、国保の保険料は、前年の所得や加入している人数、医療費の状況など、世帯ごとの状況によって計算されます。そのため、所得が高い世帯や、加入人数が多い世帯では、保険料が高くなる傾向があります。自治体によって計算方法や料率が異なるため、お住まいの市区町村のウェブサイトなどで確認することが重要です。
| 項目 | 社会保険 | 国保 |
|---|---|---|
| 計算基準 | 給与額(標準報酬月額) | 前年の所得、加入人数など(世帯ごと) |
| 負担割合 | 会社と被保険者で折半(一部負担) | 原則、全額自己負担(自治体や国からの補助あり) |
国保の保険料は、所得が低い方や、加入人数が少ない世帯にとっては、負担が軽くなる場合もあります。また、失業などで所得が減少した場合には、保険料の減免制度が適用されることもありますので、ご自身の状況に合わせて確認してみましょう。
受けられる医療サービスの質:社会保険と国保
医療サービスの内容自体に、社会保険と国保で大きな違いがあるわけではありません。どちらの保険に加入していても、病気やケガをした際には、健康保険証を提示すれば、原則として窓口で支払う医療費は一部負担(自己負担割合)のみとなります。自己負担割合は、一般的に年齢や所得によって異なりますが、多くの場合は3割負担となります。
しかし、保険料の負担額が異なるため、間接的に受けられるサービスに影響が出る可能性はあります。例えば、社会保険に加入している場合、会社が保険料の一部を負担してくれるため、実質的な負担額は国保よりも少なくなることがあります。
また、社会保険には「傷病手当金」や「出産手当金」といった、病気や出産で働けなくなった場合に給与の一部が補償される制度があります。国保には、これらの手当金に直接対応する制度はありません。ただし、国保にも「高額療養費制度」や「出産育児一時金」など、医療費の負担を軽減するための制度はしっかり用意されています。
給付内容の違い:手当金など
給付内容、特に病気や出産などで働けなくなった際の金銭的な補償には、社会保険と国保で違いがあります。社会保険、特に健康保険には、「傷病手当金」という制度があります。これは、病気やケガで会社を休み、給与が支払われない場合に、健康保険から生活費の補填として一定額が支給されるものです。
- 傷病手当金: 病気やケガで働けない期間、給与の代わりに支給される。
- 出産手当金: 出産のため会社を休み、給与が支払われない期間、支給される。
これらの手当金は、自営業者などが加入する国保には、原則としてありません。ただし、国保にも「高額療養費制度」があり、1ヶ月の医療費の自己負担額が高額になった場合に、上限額を超えた分が払い戻される制度はあります。これは社会保険の加入者も利用できる制度です。
また、国保には「出産育児一時金」があり、子供が生まれた際にまとまった金額が支給されます。これは社会保険の健康保険にも同様の制度があります。
休業時の保障:傷病手当金と国保
社会保険の大きなメリットの一つに、病気やケガで働けなくなった際の「傷病手当金」があります。これは、給与が支払われない期間の生活を支えるための大切な制度です。例えば、病気で長期間入院することになった場合、傷病手当金があることで、収入の減少による経済的な不安を軽減することができます。
一方、国保には、この傷病手当金に直接相当する制度はありません。そのため、自営業者などで国保に加入している方が病気やケガで働けなくなった場合、収入が途絶えてしまうリスクが高くなります。ただし、国民年金に加入している方であれば、「障害基礎年金」や「遺族基礎年金」などの公的年金制度が、病気や死亡による所得の喪失に備える役割を担っています。
国保加入者でも、任意で加入できる民間の保険(生命保険や医療保険など)を活用することで、休業時の収入減少に備えることができます。
退職後の手続き:社会保険と国保
会社を退職すると、社会保険から国保に切り替える手続きが必要になります。退職した会社で加入していた健康保険は、一定の条件を満たせば、最長2年間「任意継続」という形で継続することも可能ですが、保険料が全額自己負担になるため、多くの場合、国保に加入する方が経済的にお得になることがあります。
国保への加入手続きは、お住まいの市区町村の役場で行います。退職後14日以内に手続きを行うのが原則ですが、遅れても加入は可能です。手続きの際には、離職票や退職証明書など、退職を証明できる書類が必要になります。
- 退職後、会社から「健康保険資格喪失証明書」などを受け取る。
- お住まいの市区町村の役場(国民健康保険担当窓口)へ行く。
- 必要書類(資格喪失証明書、本人確認書類、マイナンバーカードなど)を提出し、加入手続きを行う。
退職後の医療保険について、ご自身の状況に合わせて最適な選択をすることが重要です。市町村の窓口で相談することもできますので、不明な点は遠慮なく質問しましょう。
まとめ:自分に合った保険を選ぼう
社会保険と国保、それぞれの違いを理解していただけたでしょうか?どちらの保険制度も、私たちの健康と生活を守るために欠かせないものです。ご自身の働き方やライフスタイルに合わせて、どちらの保険がより適しているのかを理解し、適切に活用していくことが大切です。