建築物の基礎や骨組みを支える重要な素材である「鉄筋」と「鉄骨」。一見似ているようで、その役割や使われ方には大きな違いがあります。この違いを理解することは、建築に興味を持つ方にとって、また、住宅を建てる・購入する際に役立つ知識となります。今回は、そんな「鉄筋 と 鉄骨 の 違い」について、分かりやすく解説していきます。
構造における役割の違い
まず、最も大きな「鉄筋 と 鉄骨 の 違い」は、構造物の中でどのような役割を担っているかという点です。鉄筋は、主にコンクリートの引張強度を高めるために使われます。コンクリートは圧縮には強いのですが、引っ張られる力には弱いという性質があります。そこに鉄筋を埋め込むことで、引っ張られる力にも強くなり、地震などの揺れに耐えられる丈夫な構造物を作ることができるのです。 この鉄筋の存在が、建物の安全性を大きく左右します。
- 鉄筋:コンクリートに埋め込まれ、引張強度を補強する。
- 鉄骨:建物の骨組み(柱や梁)を形成し、建物を支える。
例えるなら、鉄筋はコンクリートという「筋肉」を、より強く、しなやかにするための「血管」のような存在です。一方、鉄骨は建物を支える「骨格」そのものと言えるでしょう。
このように、鉄筋と鉄骨は、それぞれ異なる役割を果たすことで、安全で頑丈な建築物を実現しています。どちらか一方だけでは、建物の性能を十分に発揮することはできません。
材料としての特性
「鉄筋 と 鉄骨 の 違い」は、材料としての特性にも現れます。鉄筋は、一般的に丸い棒状で、表面に凹凸(リブ)が付いています。この凹凸は、コンクリートとの付着性を高めるための工夫です。鉄骨は、H形鋼や角形鋼管など、様々な断面形状のものがあります。これは、建物が受ける力に合わせて、最も効率よく強度を発揮できる形状が選ばれるためです。
| 項目 | 鉄筋 | 鉄骨 |
|---|---|---|
| 主な形状 | 丸棒(表面にリブ付き) | H形鋼、角形鋼管など多様 |
| 主な役割 | コンクリートの引張強度補強 | 建物の骨組み(柱、梁) |
鉄筋は、コンクリートに一体化して強度を発揮するため、加工性や溶接性はそれほど重視されません。一方、鉄骨は、部材同士をボルトで接合したり、溶接したりして組み立てていくため、加工性や接合のしやすさも重要な要素となります。
つまり、鉄筋は「コンクリートとの一体化」を、鉄骨は「部材としての組み立てやすさ」を重視した材料設計がされていると言えます。
使われる建築物の種類
「鉄筋 と 鉄骨 の 違い」は、どのような建築物に主に使用されるかという点でも見えてきます。鉄筋コンクリート造(RC造)の建物では、鉄筋とコンクリートを組み合わせて構造体を作ります。これは、マンションや学校、病院など、比較的大規模で、耐火性や遮音性も求められる建物に多く採用されます。一方、鉄骨造(S造)の建物は、鉄骨を骨組みとして使用します。これは、工場や倉庫、木造住宅の軸組工法など、様々な建物で利用されます。
- 鉄筋コンクリート造(RC造):鉄筋とコンクリートの組み合わせ。
- 鉄骨造(S造):鉄骨を骨組みとする。
また、最近では、鉄骨と鉄筋コンクリートを組み合わせた鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造)という工法もあります。これは、鉄骨の強度と鉄筋コンクリートの耐火性・耐震性を兼ね備えた、より強固な構造です。
このように、建物の規模や用途、求められる性能によって、最適な構造工法が選択され、それに伴って鉄筋や鉄骨の使われ方も変わってきます。
強度の発揮の仕方
「鉄筋 と 鉄骨 の 違い」を語る上で、強度の発揮の仕方も重要なポイントです。鉄筋は、コンクリートの中に埋め込まれることで、その真価を発揮します。コンクリートにひび割れが生じても、鉄筋がそれを食い止めることで、構造全体の崩壊を防ぐことができます。この「互いに補い合う」関係が、鉄筋コンクリートの強みです。
- 鉄筋:コンクリートのひび割れを抑え、全体の強度を保つ。
- 鉄骨:部材単体での高い強度を持ち、建物を支える。
鉄骨は、部材そのものが高い強度を持っているため、比較的細い部材でも大きな力を支えることができます。これにより、建物のデザインの自由度が高まったり、大空間を作ることが可能になったりします。
しかし、鉄骨は熱に弱いという弱点もあります。そのため、火災の際には、鉄骨が変形してしまい、建物が倒壊する危険性があります。これを防ぐために、鉄骨には耐火被覆(耐火材で覆うこと)などの対策が施されます。
加工と施工の違い
「鉄筋 と 鉄骨 の 違い」は、加工や施工のしやすさにも影響します。「鉄筋」は、現場で曲げたり切断したりして、コンクリートの型枠の中に配置していきます。作業は比較的容易ですが、複雑な形状に対応するためには、熟練した技術が必要な場合もあります。
- 鉄筋の加工:現場での切断・曲げ加工が主。
- 鉄骨の加工:工場での切断・穴あけ加工が主。
一方、「鉄骨」は、多くの場合、工場で一定の精度で加工されて現場に運ばれてきます。現場では、その加工された部材をボルトで接合したり、溶接したりして組み立てていきます。このため、現場での作業は比較的迅速に進むことが多いですが、工場での精密な加工が不可欠です。
このように、鉄筋は現場での「柔軟な対応」が、鉄骨は工場での「効率的な製造」が特徴と言えます。
まとめ
ここまで「鉄筋 と 鉄骨 の 違い」について、様々な角度から見てきました。鉄筋はコンクリートの弱点を補強し、鉄骨は建物の骨格を形成する、という根本的な役割の違いを理解していただけたかと思います。どちらも現代の建築に欠かせない素材であり、それぞれの特性を活かして、私たちの安全で快適な生活を支えています。建築に触れる機会があれば、ぜひ、この「鉄筋 と 鉄骨 の 違い」を思い出しながら、建物を観察してみてください。