介護保険制度において、要介護4と要介護5は、どちらも日常生活においてかなりの支援が必要な状態ですが、その支援の度合いには明確な違いがあります。今回は、この「要介護 4 と 5 の 違い」を分かりやすく解説し、それぞれの認定が持つ意味や、どのような状況で認定されるのかについて詳しく見ていきましょう。
要介護4と要介護5の基本的な違い
要介護4と要介護5の最も大きな違いは、日常生活における「介助の必要度」です。要介護4は、ほとんどの日常生活動作(食事、入浴、排泄、着替え、移動など)において、ご自身だけでは行うことが難しく、かなりの介助が必要な状態を指します。一方、要介護5は、さらに重度化し、ほぼ全ての日常生活動作において、ご本人の能力だけでは行うことが極めて困難で、常に全面的な介助が必要となる状態です。 この介助の必要度の違いは、受けられるサービスの内容や量、そして介護者の負担にも大きく影響するため、非常に重要です。
具体的に見ていきましょう。
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要介護4
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- 食事: ほとんどのご自身で食べられますが、食材の切り分けや配膳、後片付けなどに介助が必要な場合が多い。
- 排泄: トイレへの移動や衣服の着脱、後始末などに介助が必要。
- 入浴: 浴槽への出入りや洗身、洗髪などに介助が必要。
- 着替え: 衣服の着脱に介助が必要。
- 移動: 寝返りや起き上がり、立ち上がり、歩行などに介助が必要。家の中での移動も、支えや手すりが必要な場合が多い。
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要介護5
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- 食事: ご自身で食べることはほぼ不可能で、スプーンやフォークなどの操作も困難。介助者が食事を口に運ぶ必要がある。
- 排泄: トイレへの移動や衣服の着脱、後始末など、全ての動作に介助が必要。おむつが必要となる場合も多い。
- 入浴: 浴槽への出入り、洗身、洗髪など、全ての動作に介助が必要。部分浴や清拭となることも多い。
- 着替え: 衣服の着脱に全面的な介助が必要。
- 移動: 寝返り、起き上がり、立ち上がり、歩行など、全ての動作において介助が必要。ベッド上での体位変換なども介助が必要。
このように、要介護5では、ご本人の身体能力や認知機能の低下がさらに進み、より専門的で継続的な介護が必要となります。そのため、要介護5と認定された方には、より手厚いサービスが提供されることになります。
認定基準における具体的な違い
要介護4と要介護5の認定は、主治医意見書と認定調査員の調査結果に基づき、コンピューターによる一次判定と、介護認定審査会による二次判定を経て行われます。この判定においては、身体機能だけでなく、認知機能や精神状態、生活環境なども総合的に考慮されます。
判定の際に用いられる「特記事項」という項目は、要介護認定の判断に重要な要素となります。この特記事項には、以下のような内容が含まれます。
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身体機能
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- 歩行能力: 独歩、介助歩行、車椅子など
- 起居動作: 寝返り、起き上がり、立ち上がりなどの難易度
- 食事摂取能力: 自分で食べられるか、介助が必要か
- 排泄・入浴・整容: どの程度介助が必要か
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認知機能
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- 記憶力、見当識、判断力、理解力など
- 徘徊、物盗られ妄想、興奮などの行動の有無
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意思疎通
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- 話す、聞く、理解する能力
- 意思表示の方法
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意欲・自発性
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- 活動への意欲、自分から何かをしようとするか
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介助の頻度・困難性
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- 日常生活動作ごとに、どのくらいの頻度で、どの程度の介助が必要か
- 介護者の身体的・精神的負担
要介護5と認定されるためには、これらの項目において、より重度の日常生活への支障が認められる必要があります。例えば、歩行能力では、要介護4では「介助があれば歩ける」レベルでも、要介護5では「車椅子、またはそれ以上の移動手段が必要」となる場合が多くなります。
サービス利用における違い
要介護4と要介護5では、利用できる介護サービスの量や種類にも違いがあります。介護保険制度では、要介護度ごとに1ヶ月あたりに利用できるサービス費用の上限額(支給限度額)が定められています。
| 要介護度 | 月額支給限度額(地域によって異なります) |
|---|---|
| 要介護4 | 約30,930単位 |
| 要介護5 | 約36,230単位 |
この支給限度額の差は、要介護5の方がより多くの、そしてより専門的なサービスを受けることができることを意味します。例えば、24時間体制での訪問介護や、より手厚い看護、リハビリテーションなど、個々のニーズに合わせたきめ細やかなサービスが利用可能になります。
また、サービスの内容も、要介護5では、より医療的なケアや、生活全体を支えるための包括的な支援が重視される傾向があります。
利用できる施設の種類と特徴
要介護4と要介護5の認定を受けると、利用できる介護施設の種類や、入居の条件にも違いが生じることがあります。一般的に、要介護度が高くなるほど、より専門的なケアを提供できる施設への入居が推奨されます。
主な施設としては、以下のものが挙げられます。
- 特別養護老人ホーム(特養) : 常に介護が必要な方(原則として要介護3以上)が入居できる施設です。要介護4、5の方は優先的に入居を検討できる施設と言えます。
- 介護老人保健施設(老健) : 医療的管理下での看護・介護やリハビリテーションを提供し、在宅復帰を目指す施設です。要介護1以上の方が対象ですが、要介護度が高い方ほど、より長期の入所となる場合もあります。
- 介護医療院 : 医療機能と療養機能、そして介護機能を併せ持つ施設です。長期療養が必要な方や、看取りまで含めたケアが必要な方に向いています。要介護4、5の方で、医療依存度が高い場合に選択肢となります。
- 有料老人ホーム(特定施設入居者生活介護) : 民間が運営する施設で、介護サービスが付いています。施設によって受け入れられる要介護度は異なりますが、要介護4、5の方を積極的に受け入れている施設も多くあります。
要介護5の認定を受けた方は、ご自身だけでの生活が極めて困難なため、施設での生活が中心となるケースが多くなります。施設選びにおいては、ご本人の状態や希望、そしてご家族の意向などを総合的に考慮し、最適な施設を見つけることが重要です。
家族への影響とサポート体制
要介護4、そして特に要介護5の認定を受けるということは、ご家族の介護負担が非常に大きくなることを意味します。ご本人の身体的な介助はもちろんのこと、精神的なケア、そして日常生活全般のサポートが必要となるため、介護者の負担は深刻なものとなりがちです。
このような状況において、ご家族が一人で抱え込まないためのサポート体制は非常に重要です。
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公的な相談窓口
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- 地域包括支援センター: 介護に関するあらゆる相談に乗ってくれます。
- 市区町村の介護保険課: 制度の利用や手続きについて相談できます。
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専門職からのアドバイス
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- ケアマネージャー: 介護サービス計画の作成や、関係機関との調整を行います。
- 医療従事者: 健康状態の管理や、医療的なケアについて相談できます。
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介護者同士の交流
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- 介護者サロンや家族会: 同じような悩みを持つ方と情報交換をしたり、悩みを共有したりすることで、精神的な支えになります。
要介護5の認定を受けたご家族を介護されている方は、ご自身の休息や健康維持のためにも、積極的に外部のサポートを活用していくことが大切です。無理のない範囲で、ご本人とご家族双方にとってより良い形での介護を目指しましょう。
まとめ
要介護4と要介護5の主な違いは、日常生活における介助の必要度と、それに伴う利用できるサービス量や種類、そして施設入居の条件などです。どちらの認定も、ご本人とご家族にとって大きな影響がありますが、それぞれの違いを理解し、利用できる制度やサービスを最大限に活用することで、より安心できる生活を送ることが可能になります。ご不明な点があれば、遠慮なく専門機関に相談することをお勧めします。