「社会保険」と「厚生年金」、これらの言葉を聞いたことはありますか?どちらも私たちの生活を支える大切な制度ですが、具体的にどのような違いがあるのでしょうか。このページでは、「社会保険と厚生年金の違い」を分かりやすく解説します。
社会保険とは? 厚生年金との関係性
まず、社会保険という言葉は、実はもっと大きな枠組みを指しています。社会保険とは、病気やケガ、高齢、失業、労働災害など、人生で起こりうる様々なリスクに備えるための公的な保険制度の総称です。この社会保険の中には、いくつかの種類があり、その一つが厚生年金保険なのです。
つまり、 社会保険は大きな箱、厚生年金はその箱の中に入っている一部の制度 、と考えると分かりやすいでしょう。社会保険には、主に以下の4つの種類があります。
- 健康保険(病気やケガの際の医療費を保障)
- 厚生年金保険(老齢、障害、死亡による所得の減少に備える年金)
- 雇用保険(失業した際の生活を保障、スキルアップの支援)
- 労災保険(労働災害によるケガや病気、死亡に備える)
このように、厚生年金は社会保険の一部として、私たちの将来の生活を支える重要な役割を担っているのです。
厚生年金保険の役割
厚生年金保険は、会社員や公務員など、会社などに雇用されている人が加入する年金制度です。この制度の最も基本的な役割は、 加入期間や保険料の納付額に応じて、将来、老齢になったときに年金を受け取れるようにすること です。これにより、老後の生活資金の不安を軽減します。
また、厚生年金保険は老齢給付だけでなく、万が一、病気やケガで重い障害を負ってしまった場合に支給される障害給付、そして、加入者が亡くなった場合に遺族に支給される遺族給付といった、様々な給付制度も備えています。これは、加入者本人だけでなく、その家族の生活をも守るための大切な仕組みです。
厚生年金保険料は、給与から天引きされる形で支払われ、会社と加入者が折半して負担するのが一般的です。この保険料が、現在の年金受給者への支払いや、将来の自身の年金原資として積み立てられていきます。
| 給付の種類 | 概要 |
|---|---|
| 老齢厚生年金 | 一定期間加入し、65歳以上になった時に受け取れる年金。 |
| 障害厚生年金 | 病気やケガで一定の障害状態になった時に受け取れる年金。 |
| 遺族厚生年金 | 加入者が亡くなった場合に、その遺族に受け取れる年金。 |
健康保険:社会保険のもう一つの柱
社会保険のもう一つの大きな柱が、健康保険です。これは、私たちが病気やケガで病院にかかったときに、 医療費の負担を軽減してくれる制度 です。もし健康保険がなかったら、ちょっとした病気でも高額な医療費がかかってしまい、生活が立ち行かなくなる人も出てくるでしょう。
健康保険に加入していると、医療機関で支払う医療費は、原則として自己負担が3割(年齢や所得により1割~2割の場合もあり)になります。残りの7割(または8割・9割)は、健康保険組合や協会けんぽなどが負担してくれます。これは、国民皆保険制度によって、誰もが必要な医療を受けられるようにするための、非常に重要な仕組みです。
健康保険料も、給与から天引きされるのが一般的で、こちらも会社と加入者が折半して負担します。この保険料によって、日々の医療費や、病気で働けなくなった際の傷病手当金などが賄われています。
- 病院で診察を受ける。
- 保険証を提示し、自己負担額(例:3割)を支払う。
- 残りの費用は健康保険が負担する。
雇用保険:働く人のためのセーフティネット
雇用保険は、働く人のためのセーフティネットとして、 失業した際の生活を支えることや、働く能力の維持・向上のための支援 を目的としています。もし、突然仕事を失ってしまっても、雇用保険があれば、一定期間、失業給付を受け取ることができます。これにより、次の仕事を探すための時間と心の余裕が生まれます。
失業給付(基本手当)以外にも、教育訓練給付金という制度もあります。これは、スキルアップのための講座を受講した際に、その費用の一部が支給されるもので、キャリアチェンジやキャリアアップを目指す人々を応援します。また、育児休業給付金や介護休業給付金など、ライフイベントに伴う休業期間中の所得を保障する給付もあります。
雇用保険料は、給与から天引きされますが、こちらは会社と加入者の負担割合が異なります(一般的には会社負担の方が大きい)。
労災保険:仕事中の事故から守る
労災保険は、 仕事中や通勤途中に発生した事故(業務災害・通勤災害)によって、ケガをしたり、病気になったり、あるいは亡くなったりした場合に、治療費や休業補償、障害補償などを支給する制度 です。これは、労働者の安全と健康を守るための、非常に大切な保険です。
労災保険の保険料は、原則として会社が全額負担します。これは、労働災害が発生しないように、会社に安全管理を徹底させるため、という目的もあります。もし、仕事でケガをしてしまった場合、労災保険が適用されることで、自己負担なく治療を受けることができます。
労災保険の給付には、以下のようなものがあります。
- 療養(補償)給付:治療費や薬代など
- 休業(補償)給付:働けない間の賃金の一部
- 障害(補償)給付:障害が残った場合の給付
- 遺族(補償)給付:亡くなられた場合の遺族への給付
まとめ:社会保険と厚生年金、それぞれの役割を理解しよう
このように、「社会保険」という大きな枠組みの中に、「厚生年金保険」をはじめとする様々な公的保険制度が存在します。それぞれの制度は、私たちが人生で遭遇する可能性のある様々なリスクに備え、安心して生活を送るための重要な役割を担っています。社会保険と厚生年金の違いを正しく理解し、これらの制度を上手に活用していくことが、将来への安心につながります。