MDD と MDR の 違い:知っておきたい基本を徹底解説!

「MDD」と「MDR」、この二つの言葉、医療機器に関わる場面でよく耳にしませんか?でも、具体的に何が違うのか、はっきりと説明できる人は意外と少ないかもしれません。この記事では、 mdd と mdr の 違い を、皆さんが理解しやすいように、分かりやすく、そして丁寧に解説していきます。医療機器の安全性を保つために、この二つの概念はとても重要なんですよ。

MDD:旧指令から読み解く、医療機器の品質管理の土台

MDDとは、「Medical Device Directive」の略で、かつて欧州で医療機器の販売に適用されていた指令のことです。これは、医療機器が安全で、かつ意図された性能を発揮できるようにするための基本的なルールを定めていました。製造業者は、このMDDの要求事項を満たすことで、CEマークを製品に貼付し、欧州市場で販売することができていたのです。

MDDの下では、医療機器はリスクの高さに応じてクラス分けされていました。例えば、クラスIはリスクが低く、クラスIIIはリスクが最も高いとされていました。それぞれのクラスごとに、要求される適合性評価の手続きが異なっていました。 MDDにおける主な要求事項には、以下のようなものがあります。

  • 安全性と性能に関する基本要件
  • 品質管理システムの構築
  • 臨床評価の実施
  • ラベリングと取扱説明書の整備

MDDは、長年にわたり医療機器の品質と安全性を確保するための重要な枠組みとして機能してきました。しかし、技術の進歩や医療現場のニーズの変化に伴い、より厳格で包括的な規制が必要とされるようになり、後継となるMDRへと移行していくことになったのです。MDDの時代から培われた品質管理の考え方は、MDRにおいても非常に重要な基礎となっています。

MDR:新時代を切り拓く、より厳格な医療機器規制

MDRとは、「Medical Device Regulation」の略で、MDDに取って代わる形で2021年5月26日から適用が開始された、欧州連合(EU)の新しい医療機器規制です。MDRは、MDDよりもさらに厳格で包括的な規制を目指しており、医療機器の安全性と性能の向上、そして透明性の確保を目的としています。

MDRでは、MDDに比べて以下のような点が強化されています。

  1. より広範な対象範囲: 美容機器など、これまでMDDの対象外だった機器もMDRの規制対象に含まれるようになりました。
  2. 厳格な臨床評価: 製品の安全性と性能を証明するために、より詳細で質の高い臨床データが求められるようになりました。
  3. サプライチェーン全体での責任: 製造業者だけでなく、輸入業者や販売業者など、サプライチェーンに関わる全ての関係者に責任が課されるようになりました。
  4. ユニーク識別子(UDI)の導入: 製品のトレーサビリティを向上させるために、製品にユニークな識別子を付与することが義務付けられました。

MDRの導入は、医療機器の市場における安全性と信頼性をさらに高めるための大きな一歩と言えます。製造業者は、MDRの要求事項を満たすために、製品開発から販売後までのプロセス全体を見直し、強化する必要があります。

MDRにおける「上市前」の要件強化

MDRでは、医療機器が市場に出る「前」の段階での要求事項が、MDD時代と比べて格段に厳しくなっています。これは、製品の安全性をできる限り高め、リスクを最小限に抑えるための重要な変更点です。

具体的には、以下のような点が強調されています。

  • リスクマネジメントの強化: 製品のライフサイクル全体にわたるリスクを特定し、評価し、管理するプロセスが、より網羅的かつ継続的に実施される必要があります。
  • 臨床評価の拡充: 製品の安全性と性能を裏付けるための臨床データは、より信頼性が高く、網羅的であることが求められます。既存のデータだけでなく、必要に応じて新たな臨床試験の実施も検討されます。
  • 技術文書の質向上: 製品の設計、製造、性能、安全性に関する詳細な技術文書は、より厳密に作成・維持される必要があります。

これらの「上市前」の要件をクリアすることは、MDR認証を取得し、EU市場で製品を販売するための必須条件です。製造業者は、これらの要求事項を正確に理解し、遵守することが求められます。

MDRにおける「上市後」の監視体制

MDRでは、製品が市場に出た「後」の監視体制も大幅に強化されています。これは、製品が市場に出てからも、その安全性と性能が継続的に維持されているかを確認し、万が一問題が発生した場合に迅速に対応できるようにするためです。

主な強化点は以下の通りです。

監視項目 MDDとの違い
市販後監視(PMS) より体系的で、データ収集・分析・報告の義務が強化されました。
市販後臨床追跡(PMCF) 継続的な臨床データの収集がより重視されるようになりました。
重大インシデント報告 報告義務の範囲と報告期限がより厳格化されました。

これらの「上市後」の監視体制は、医療機器の安全性を長期的に確保するために不可欠です。製造業者は、これらの活動を適切に実施し、当局に報告することが求められます。

MDRにおける「サプライヤー」と「輸入業者」の役割

MDRでは、製品のサプライチェーン全体にわたる責任が明確化されており、特に「サプライヤー」や「輸入業者」の役割が重要視されています。これまで製造業者の責任が中心でしたが、MDRでは、製品がEU市場に流通するまでの各段階での責任分担がより明確になりました。

具体的には、以下の点が挙げられます。

  • 輸入業者の責任: EU域外から製品を輸入する業者は、製造業者がMDRの要求事項を満たしていることを確認し、製品がEUの規則に適合していることを保証する責任を負います。
  • 代理人(AR)の役割: EU域外の製造業者は、EU域内に代理人を任命することが義務付けられています。代理人は、当局との連絡窓口となり、製品の規制遵守をサポートします。
  • サプライヤーの協力義務: サプライヤーも、MDRの要求事項に沿った製品を提供し、製造業者のコンプライアンスを支援する義務があります。

このように、MDRはサプライチェーン全体での協力と責任を促すことで、医療機器の安全性をより強固なものにしようとしています。

MDRにおける「UDI」と「EUDAMED」の重要性

MDRでは、医療機器のトレーサビリティ(追跡可能性)を向上させるために、ユニーク識別子(UDI: Unique Device Identification)の導入と、欧州医療機器データベース(EUDAMED: European Database on Medical Devices)の活用が非常に重要視されています。

UDIシステム は、各医療機器に固有の識別コードを付与することで、製品のライフサイクル全体での追跡を可能にします。これにより、製品の出所、製造履歴、流通経路などを正確に把握できるようになります。

EUDAMED は、UDIシステムと連携し、医療機器に関する様々な情報を一元管理するためのデータベースです。MDRの下では、製造業者、輸入業者、代理人、そして規制当局などがEUDAMEDを通じて情報を共有し、市場監視やインシデント管理を効率化することが期待されています。

これらのシステムは、医療機器の安全性を確保し、問題発生時の迅速な対応を可能にするための、MDRにおける最先端の取り組みと言えるでしょう。

まとめ:MDDからMDRへ、より安全な医療機器を目指して

これまで見てきたように、「MDD」と「MDR」の最も大きな違いは、MDRがMDDに比べて、より厳格で包括的な規制であり、医療機器の安全性と性能をさらに高めることを目指している点にあります。技術の進歩や医療現場のニーズに対応するため、規制も進化し続けているのです。MDDの時代から培われた経験を活かしつつ、MDRの要求事項をしっかりと理解し、遵守していくことが、安全で高品質な医療機器を患者さんに届けるために不可欠です。

関連記事: