連帯債務と連帯保証の違いをわかりやすく徹底解説!知っておくべきポイント

「連帯債務」と「連帯保証」、どちらも借金に関わる言葉で、似ているようで実は大切な違いがあります。この違いをわかりやすく理解することは、将来お金を借りたり、誰かの借金の保証人になったりする際に、とても重要です。ここでは、連帯債務と連帯保証の違いを、専門用語をなるべく使わずに、皆さんが「なるほど!」と思えるように解説していきます。

【1】根本的な違い:誰が「本来の借金」を負っているのか?

まず、一番大きな違いは、「誰が本来の借金を負う義務があるか」という点です。連帯債務の場合、複数の人が「同じ借金」を、それぞれが「全部」返済する義務を負います。つまり、皆が最初から、対等な立場で借金を背負っているのです。例えば、友達3人でお金を借りて、その借金を3人で「連帯債務」として背負ったとします。この場合、もし誰か一人が返済できなくなっても、残りの2人は借金全額を返済しなければなりません。

一方、連帯保証の場合は、本来の借金(主たる債務)を負っているのは「本人」だけです。保証人は、あくまで「本人が返済できなくなった場合に、代わりに返済する」という約束をした人になります。だから、保証人は「もしもの時のためのバックアップ」というイメージが強いです。 この「本来の義務を負うのは誰か」という点が、連帯債務と連帯保証を区別する上で最も重要なポイントです。

  • 連帯債務:
    1. 複数の人が「同じ借金」を負う
    2. 全員が最初から「全部」返済する義務がある
  • 連帯保証:
    1. 本来の借金は「本人」が負う
    2. 本人が返済できない場合に「代わりに」返済する

表にまとめると、以下のようになります。

項目 連帯債務 連帯保証
借金の本来の義務者 連帯債務者全員 主たる債務者(本人)
保証人の役割 (なし) 本人が返済できない場合に代位

【2】返済義務の範囲:どこまで責任を負う?

返済義務の範囲についても、連帯債務と連帯保証には違いがあります。

連帯債務者の場合、先ほども触れましたが、借金した金額の「全額」について、他の連帯債務者と関係なく返済する義務を負います。つまり、Aさん、Bさん、Cさんの3人が連帯債務者で、100万円を借りたとします。もしAさんが「自分は3分の1の33万円しか払わない」と言っても、債権者(お金を貸した人)は、BさんやCさんに100万円全額の支払いを請求できるのです。

これは、連帯保証人の場合と大きく異なります。連帯保証人は、原則として、主たる債務者(借金した本人)が返済できなくなった場合に、その「未払い分」について責任を負います。もし主たる債務者が50万円しか返済できず、残りが50万円だった場合、連帯保証人はその残りの50万円を支払う義務が生じます。ただし、連帯保証人にも「検索の抗弁権」や「分別の利益」といった、本来は認められる権利が一部制限される場合があります。

具体的に、返済義務の範囲について整理してみましょう。

  • 連帯債務:
    1. 各債務者は、債権者に対して、債務の「全額」について直接責任を負う
    2. 他の債務者の返済状況に関わらず、全額請求される可能性がある
  • 連帯保証:
    1. 主たる債務者が返済できない「一部」または「全額」について責任を負う
    2. 主たる債務者より、責任の範囲が限定される(原則として)

このように、連帯債務の方が、より重い責任を負うと言えます。

【3】他の関係者への影響:内側の関係はどうなる?

連帯債務と連帯保証では、債務者同士、あるいは債務者と保証人の間の関係にも違いが出てきます。

連帯債務の場合、もし一人の連帯債務者が借金を全額返済してしまったとします。この場合、その返済した人は、他の連帯債務者に対して、「自分の代わりに払ってくれた分」を請求することができます。これを「求償権(きゅうしょうけん)」といいます。つまり、内部的には、借金は本来の負担割合に応じて分けられるのです。この求償権の存在は、連帯債務者間での公平性を保つための重要な仕組みです。

一方、連帯保証の場合は、保証人が代わりに返済した場合、その保証人は主たる債務者に対して、支払った金額を請求する「求償権」を持ちます。しかし、連帯債務者同士のような、互いに「本来の借金」を分担し合うという感覚とは少し異なります。保証人はあくまで「借金した本人」に請求することになります。 この「内部的な負担の分け方」も、両者の違いを理解する上で役立つ視点です。

図でイメージすると、以下のようになります。

  • 連帯債務:
    1. 債務者A → 債権者(全額返済)
    2. 債務者A → 債務者B, C(求償)
  • 連帯保証:
    1. 保証人 → 主たる債務者(求償)

このように、連帯債務では、債務者間で「借金を分担する」という側面がより強くあります。

【4】債権者の権利:誰に、いつ、いくら請求できる?

債権者(お金を貸した側)から見ると、連帯債務と連帯保証では、請求できる権利の範囲やタイミングに違いがあります。

連帯債務の場合、債権者は、連帯債務者全員のうち、誰にでも、いつでも、借金全額の支払いを請求できます。これは、債権者にとって非常に有利な状況です。例えば、一番返済能力がありそうな連帯債務者に、すぐに全額請求することも可能です。また、連帯債務者の一人が債務の一部を返済しても、残りの債務は他の債務者全員に残ります。これは、連帯債務の「連帯」という言葉が示す通り、全員で債務を「連ねて」負っているからです。

一方、連帯保証人の場合、債権者は、原則としてまず主たる債務者(借金した本人)に返済を請求し、それでも返済されない場合に保証人に請求することになります。ただし、連帯保証契約においては、この「催告の抗弁権(さいこくのこうべんけん)」や「検索の抗弁権(けんさくのこうべんけん)」が免除されていることが多く、実質的には連帯債務と似たような状況になることもあります。それでも、契約書の内容によって、請求の順番や条件が異なる場合があるのです。

債権者の権利について、ポイントをまとめると以下のようになります。

  • 連帯債務:
    1. 債権者は、どの連帯債務者にも、いつでも、全額の支払いを請求できる
    2. 一部返済されても、残りの債務は他の債務者に残る
  • 連帯保証:
    1. 原則として、まず主たる債務者に請求
    2. 主たる債務者が返済しない場合に保証人に請求(ただし、契約で免除されている場合が多い)

このように、債権者から見ると、連帯債務の方がより迅速かつ確実に債権回収ができる可能性が高くなります。

【5】時効の効力:借金の返済義務が消えるまでの期間

借金には「時効」があり、一定期間が経過すると返済義務が消滅します。この時効が、連帯債務と連帯保証ではどのように働くのかも、知っておくべき重要な違いです。

連帯債務の場合、もし一人の連帯債務者の中に、時効の援用(援用:時効によって権利が消滅したことを主張すること)をした人がいたとしても、その効果は他の連帯債務者には及びません。つまり、他の連帯債務者は、たとえ時効期間が経過していても、債権者から請求されれば返済しなければならないのです。これは、連帯債務者それぞれが独立して債務を負っているからです。 この時効に関する扱いは、連帯債務の厳しさを象徴する点の一つと言えます。

一方、連帯保証の場合、主たる債務者(本人)に時効の援用があった場合、その効果は保証人にも及びます。つまり、主たる債務者の借金に時効が成立すれば、保証人も原則として返済義務を免れることになります。ただし、保証人自身が時効の援用を主張しなければならない場合もあります。また、保証債務自体の時効期間が、主たる債務の時効期間と異なる場合も考えられます。

時効の効力について、比較してみましょう。

項目 連帯債務 連帯保証
一人の時効援用 他の債務者には及ばない 主たる債務者への効果は保証人にも及ぶ(原則)
保証債務自体の時効 (なし、債務全体で考慮) 保証債務自体に独立した時効が適用される場合がある

このように、時効の援用に関する効果の範囲が、両者で異なることがわかります。

【6】弁済による影響:誰かが払ったらどうなる?

誰か一人が借金を弁済(べんさい:借金を支払うこと)した場合、その後の関係がどうなるかという点も、連帯債務と連帯保証で異なります。

連帯債務の場合、先ほども少し触れましたが、一人(例えばAさん)が借金全額を弁済した場合、Aさんは他の連帯債務者(Bさん、Cさん)に対して、それぞれが負担すべき分(例えば3分の1ずつ)を請求する「求償権」を持ちます。つまり、Aさんは債権者に対しては責任を果たしましたが、内部的にはBさん、Cさんに負担してもらうことになります。

連帯保証の場合、保証人が主たる債務者に代わって弁済した場合、その保証人は主たる債務者に対して求償権を持ちます。もし複数の保証人がいる場合は、保証人同士の負担割合についても、契約内容や法律に基づいて決まることになります。 この「弁済後の内部的な権利関係」を理解することは、関係者間のトラブルを防ぐ上で非常に大切です。

弁済による影響を整理すると、以下のようになります。

  • 連帯債務:
    1. 一人が弁済した場合、他の債務者に対して求償権を行使できる
    2. 債務者間で、本来の負担割合に応じた清算が行われる
  • 連帯保証:
    1. 保証人が弁済した場合、主たる債務者に対して求償権を行使できる
    2. 複数の保証人がいる場合は、保証人同士の関係も考慮される

このように、誰かが借金を肩代わりした場合、その後の関係性がどうなるのか、という視点でも違いが見られます。

【7】保証人の地位:連帯保証人は「強い」?

「連帯保証」という言葉はよく聞きますが、実は「連帯」という言葉がついていることで、保証人の責任が重くなっているのです。ここを理解しておくと、安易に連帯保証人にならない方が良い理由がわかります。

普通の保証人であれば、債権者はまず借金をした本人(主たる債務者)に返済を請求し、それでも返済されなければ保証人に請求することになります。これを「催告の抗弁権(さいこくのこうべんけん)」といいます。また、本人に返済できる資産があるのに保証人に請求された場合、保証人は「まずは本人の財産から差し押さえてください」と主張できる「検索の抗弁権(けんさくのこうべんけん)」を持つことができます。

しかし、「連帯保証」の場合、これらの「催告の抗弁権」や「検索の抗弁権」が原則として認められません。つまり、債権者は、借金をした本人を飛び越して、いきなり連帯保証人に借金全額の支払いを請求できるのです。これは、連帯債務者と同じような立場になり得るということです。 だからこそ、連帯保証は「安易に引き受けてはいけない」と言われるほど、保証人にとってリスクが高いものなのです。

連帯保証人の地位について、まとめると以下のようになります。

  • 普通の保証人:
    1. 催告の抗弁権がある(まず本人へ請求)
    2. 検索の抗弁権がある(本人の財産から差し押さえを主張できる)
  • 連帯保証人:
    1. 催告の抗弁権が原則ない(本人を飛ばして請求可能)
    2. 検索の抗弁権が原則ない(本人の財産からの差し押さえを主張できない)

このように、「連帯」という言葉が付くだけで、保証人の立場は格段に厳しくなるのです。

連帯債務と連帯保証の違いは、一見難しく感じるかもしれませんが、それぞれの言葉の意味や、誰がどのように借金に関わっているのかを理解することで、ぐっと分かりやすくなります。どちらも、借金をする側、あるいは保証人になる側にとっては、非常に重要な意味を持つ制度です。この違いをしっかり理解し、賢くお金との付き合い方を考えていきましょう。

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