英語で「それ」や「あれ」を指すときに、it と that のどちらを使えばいいのか迷ったことはありませんか? 実は、it と that の違いには、それぞれの役割があります。この二つの単語を正しく使い分けることで、より自然で分かりやすい英語を話せるようになりますよ! この記事では、it と that の違いを、具体的な例を交えながら、分かりやすく解説していきます。
it と that の基本的な役割の違い
it と that の根本的な違いは、指し示す対象への「距離感」と「強調」にあります。it は、すでに話題に出ているものや、漠然とした状況、あるいは主語がない場合に便宜上使われることが多いです。「そこにいる」というような、近くにあるものや、具体的に何かを指すというよりは、もっと一般的な「それ」というニュアンスです。一方、that は、話し手から少し離れた場所にあるものや、特定のものを指し示すときに使われます。また、「あれこそが重要なんだ!」のように、何かを強調したいときにも使われます。
この違いを理解するために、いくつかのポイントを見てみましょう。
- it:
- すでに会話に出てきたもの(代名詞として)
- 時間、天候、距離など、漠然とした状況を表す主語
- 感情や考えを表す「こと」
- that:
- 話し手から物理的に離れているもの
- 特定のものを指し示したいとき
- 強調したいとき
この距離感と強調のニュアンスを掴むことが、it と that の違いを理解する上で非常に重要です。
| 単語 | 主な役割 | ニュアンス |
|---|---|---|
| it | 代名詞、漠然とした主語 | 近く、一般的 |
| that | 指示代名詞、強調 | 遠く、特定的 |
it が「代名詞」として使われる場合
it が最もよく使われるのは、すでに会話に出てきた名詞を指す代名詞としてです。例えば、「I have a book. It is interesting.」のように、「book」を繰り返す代わりに「it」を使います。これは、日本語でも「それ」と言うのと同じ感覚ですね。
この場合、it は「 指示されたもの 」を指しています。文脈から誰でも理解できる、ごく自然な流れで使われます。以下の例を見てみましょう。
- Tom bought a new car. It is red. (トムは新しい車を買った。 それ は赤い。)
- She loves cats. It is very cute. (彼女は猫が好きだ。 それ はとてもかわいい。)
このように、it は前の文で出てきた特定の「もの」や「こと」を代わりに受ける役割を担います。 it を使うことで、文章が簡潔になり、スムーズに読めるようになります。
it が「漠然とした主語」として使われる場合
it は、時間、天候、距離などを表すときに、文の主語として使われます。この場合の it は、特に何も具体的なものを指しているわけではありません。例えば、「It is sunny today.」や「It is late.」のように使われます。
このような it は、英語で「 空主語 (dummy subject) 」と呼ばれることもあります。文法的に主語が必要なため、便宜上置かれているのです。日本語では「今日は晴れです」のように主語を省略することが多いですが、英語ではそうはいきません。
- 時間: It is 3 o'clock.
- 天候: It is raining.
- 距離: It is far from here.
- その他: It is important to study English. (英語を勉強することは大切だ。)
これらの文では、it を他の単語に置き換えることはできません。
that が「指示代名詞」として使われる場合
that は、話し手から少し離れた場所にあるものを指し示すときに使われます。「This」が「これは」という近いものを指すのに対し、「that」は「あれは」という少し離れたものを指します。例えば、窓の外にある木を指して「Look at that tree!」のように使います。
この場合、that は「 指し示すもの 」を明確に示します。相手に「どれか」を具体的に伝えたいときに有効です。また、会話の中で「あれ、あの時のことだよ」のように、過去の出来事を指して使うこともあります。
- That building is very tall. ( あの 建物はとても高い。)
- What is that? ( あれ は何ですか?)
that を使うことで、相手にどのものについて話しているのかを具体的に伝えることができます。
that が「強調」として使われる場合
that は、何かを強調したいときにも使われます。「That's great!」は「それは素晴らしい!」という意味ですが、「That's what I mean.」のように「まさにそれこそが私の言いたいことだ」というように、内容を強調するニュアンスになります。
また、文と文を繋ぐ接続詞としても使われ、その場合も「〜ということ」というように、ある事実や考えを提示し、それを強調する意味合いが含まれることがあります。
- 強調の例:
- That's exactly right! ( まさに その通り!)
- It was that teacher who helped me. (私を助けてくれたのは、 まさにあの 先生だった。)
強調したい内容を that を使うことで、より強く相手に伝えることができます。
it と that の違いをまとめた表
ここで、it と that の違いをさらに分かりやすく、表にまとめてみましょう。
| it | that | |
|---|---|---|
| 主な役割 |
代名詞 (前のものを指す)
漠然とした主語 (時間、天気など) |
指示代名詞 (離れたものを指す)
強調 |
| 距離感 | 近い、または文脈で特定 | 遠い、または特定のものを指す |
| ニュアンス | 一般的、説明的 | 特定的、強調的 |
| 例文 |
I saw a dog.
It
was running.
It is cold today. |
Look at
that
car.
That is why I like it. |
この表を参考に、どのような状況でどちらを使うべきか判断してみてください。
it と that の区別が難しい例文
中には、it と that のどちらを使っても意味が通じる、あるいはどちらでも自然に聞こえるような例文もあります。しかし、微妙なニュアンスの違いは存在します。例えば、「It's a cat.」と「That's a cat.」です。
「It's a cat.」は、単に「それは猫です」という事実を述べている場合に使われます。一方、「That's a cat.」は、指をさして「あれは猫だよ」と相手に教えたり、「(あの動物は)猫なんだよ」と、相手が犬か猫か迷っている状況で「あれこそが猫だ」と示したりするような、少し指示的・強調的なニュアンスを含みます。
- It's a cat. (それは猫です。← 事実の提示)
- That's a cat. (あれは猫です。← 指示・強調)
文脈によって、より適切な方を選ぶことが大切です。
まとめ:it と that を使いこなして英語力アップ!
it と that の違いは、指し示す対象への「距離感」と「強調」が鍵となります。it は身近なものや漠然とした状況を、that は少し離れたものや特定のものを指し示し、強調する際に使われます。これらの違いを理解し、意識して使うことで、あなたの英語表現は格段に自然で豊かになるはずです。ぜひ、今日からこの知識を実践してみてくださいね!