「契約書」と「誓約書」、どちらも「約束」に関する書類ですが、実はその意味合いや使われる場面には違いがあります。契約書と誓約書の違いを理解することは、日々の生活やビジネスシーンで、後々トラブルにならないためにとても大切です。
法的拘束力と目的で見る契約書と誓約書の違い
まず、一番分かりやすい違いは、その「法的拘束力」と「目的」にあります。契約書は、お互いが合意した内容を実行することを法的に保証するものです。例えば、家を借りる時の賃貸借契約書や、会社で働く時の雇用契約書などがこれにあたります。 この契約書にサインすることで、書かれている内容を守る義務が生じ、もし破った場合には法的な責任を問われることがあります。
一方、誓約書は、特定の行動を約束する際に使われることが多いです。例えば、企業に入社する際に、会社の規則を守ります、秘密を守ります、といった内容の誓約書にサインすることがあります。これは、契約書ほど厳密な法的責任を伴わない場合もありますが、道義的な責任や、場合によっては損害賠償につながる可能性も秘めています。
具体的に、両者の違いをまとめると以下のようになります。
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契約書
- 当事者間の権利・義務を明確にする
- 法的な拘束力が強い
- 例:売買契約、賃貸借契約、雇用契約
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誓約書
- 特定の行動や守秘義務などを約束する
- 法的な拘束力は契約書より弱い場合があるが、状況による
- 例:入社誓約書、秘密保持誓約書
契約書:お互いの約束を「形」にする
契約書は、まさに「契約」という言葉が示す通り、二者以上の間で何らかの「取引」や「約束」を行う際に作成されるものです。この取引には、お金が絡むこともあれば、物やサービスが対象になることもあります。契約書があることで、後から「言った」「言わない」といったトラブルを防ぐことができます。
契約書に記載される主な内容は、契約の目的、契約金額、引き渡しの時期や方法、そして万が一、約束が守られなかった場合の対応(損害賠償など)です。これらの項目を細かく定めておくことで、安心して取引を進めることができるのです。
例えば、以下のような場面で契約書が使われます。
- 不動産の売買
- 商品の購入・販売
- サービスの提供・利用
- 仕事の請負
| 契約内容 | 主な記載事項 |
|---|---|
| 売買契約 | 品名、数量、価格、引渡時期、支払い方法 |
| 賃貸借契約 | 物件、賃料、契約期間、敷金・礼金 |
誓約書:自分の「決意」や「誓い」を表明する
一方、誓約書は、どちらか一方が、あるいは複数人が、特定の事柄について「誓います」「約束します」と表明する書類です。契約書のように、相手との間で何らかの「交換」があるとは限りません。どちらかというと、自分自身の良心や責任感に基づいて、ある行動をすることを約束するニュアンスが強いです。
誓約書は、特に個人の意思表示として重要視される場面で使われます。例えば、学生が学校の規則を守ることを誓う誓約書や、スポーツ選手がドーピングをしないことを誓う誓約書などが考えられます。これらは、その行動をしないこと、あるいは守ることを誓うことで、信頼関係を築いたり、事故を防いだりする目的があります。
誓約書が使われる代表的な例としては、以下のようなものが挙げられます。
- 入社時に提出する誓約書(会社の規則を守る、秘密を守るなど)
- 退職時に提出する誓約書(在職中の機密情報を漏らさないなど)
- 学校への入学・在籍に関する誓約書
- 特定の活動への参加にあたっての誓約書
契約書と誓約書、それぞれの「効力」の違い
法的な効力という点で考えると、一般的に契約書の方が誓約書よりも強い拘束力を持つとされます。契約書は、民法などの法律に基づいて、当事者間の権利義務を明確に定め、履行されない場合の法的措置(損害賠償請求など)の根拠となりやすいからです。
しかし、誓約書も、その内容によっては法的な効力を持つことがあります。例えば、秘密保持義務に関する誓約書は、その義務に違反した場合、損害賠償責任を負う可能性があります。また、企業が従業員に提出させる誓約書の中には、労働契約の一部とみなされ、法的な拘束力を持つものもあります。
重要なのは、書類の名称だけでなく、その「内容」と「作成された経緯」です。どのような約束が、どのような意思で交わされたのかが、効力を判断する上で重要になります。
「約束」を交わす上での注意点
契約書にしろ誓約書にしろ、サインをする前には必ず内容をしっかりと確認することが大切です。特に、自分が不利になるような条項や、理解できない部分があれば、安易にサインせず、相手に確認したり、専門家(弁護士など)に相談したりすることをおすすめします。
また、口頭での約束も重要ですが、後々のトラブルを防ぐためには、やはり「書面」として残すことが最も確実な方法です。自分が守るべきこと、相手が守るべきことを明確にしておくことで、お互いに安心して関係を続けることができます。
確認すべきポイントは以下の通りです。
- 誰と、誰の間での約束か
- 約束の内容は具体的に何か
- 約束を守れなかった場合、どうなるか
- いつから、いつまでの約束か
まとめ:どちらも「信頼」を形にするためのもの
結局のところ、契約書も誓約書も、お互いの「信頼」や「約束」を明確にし、それを「形」にするためのものです。どちらも、後々の誤解やトラブルを防ぎ、円滑な人間関係やビジネスを進める上で欠かせない役割を果たします。
契約書と誓約書の違いを理解し、それぞれの書類の目的や効力を把握した上で、適切に活用していくことが、賢い社会生活を送る上で重要と言えるでしょう。
最後に、契約書と誓約書の違いを理解することは、自身の権利を守り、責任を果たすための第一歩です。不明な点があれば、専門家に相談することをためらわないようにしましょう。