社会福祉と社会保障、その違いを分かりやすく解説!

「社会福祉」と「社会保障」、どちらも私たちの暮らしを支える大切な言葉ですが、具体的に何が違うのか、意外と知らない方も多いのではないでしょうか。この二つの言葉、実は密接に関連していますが、それぞれ役割や目的が異なります。今回は、この「社会福祉と社会保障の違い」を、皆さんが理解しやすいように、一つずつ丁寧に紐解いていきましょう。

目的と対象の違い:誰のために、何を目指すのか?

まず、社会福祉と社会保障の最も大きな違いは、その「目的」と「対象」にあります。社会保障は、病気、失業、高齢、障害など、私たちが人生で遭遇する様々なリスクに備え、所得や生活を保障することで、国民生活の安定を図ることを目指しています。一方、社会福祉は、社会保障だけでは支えきれない、より個別的で複雑なニーズを持つ人々(高齢者、障害者、子ども、生活困窮者など)に対して、その人らしい自立した生活を送れるように支援することを目的としています。

具体的に見てみましょう。

  • 社会保障
    • 目的 :国民の生活の安定と向上
    • 対象 :原則として国民全体
    • 主な制度 :年金、医療保険、雇用保険、労災保険など
  • 社会福祉
    • 目的 :支援を必要とする人々への自立支援
    • 対象 :高齢者、障害者、子ども、生活困窮者など
    • 主なサービス :介護サービス、障害福祉サービス、児童福祉サービス、生活保護など

つまり、社会保障は「みんなのためのセーフティネット」、社会福祉は「困っている人をピンポイントで支える手厚い支援」と考えると分かりやすいかもしれません。 この両輪が、私たちの社会を支える基盤となっているのです。

財源の違い:どこからお金は来ているの?

次に、それぞれの財源についても違いがあります。社会保障の主な財源は、国民が支払う保険料と、税金(国や地方自治体からの公費負担)です。例えば、健康保険料や年金保険料は、社会保障制度を維持するための直接的な負担となります。これに対して、社会福祉の財源は、税金が中心となります。もちろん、一部には利用者の自己負担や寄付なども含まれますが、公的なサービスとして提供される部分が大きいため、税金が重要な役割を果たしています。

これを表にまとめると、以下のようになります。

制度 主な財源
社会保障 保険料、税金
社会福祉 税金(中心)、自己負担、寄付など

このように、財源の違いは、それぞれの制度がどのような考え方で成り立っているのかを示しています。社会保障は「相互扶助」の精神が強く、社会福祉は「公的な責任」による支援という側面が強いと言えるでしょう。

提供されるサービスの違い:具体的にどんなことをしてくれるの?

提供されるサービスの内容にも違いがあります。社会保障制度から給付されるものとしては、例えば病気になった時の医療費の自己負担額が減る、働けなくなった時に失業給付金がもらえる、年金を受け取れる、といったものが挙げられます。これらは、ある程度「決まったルール」に基づいて、誰にでも公平に提供される性質のものです。

一方、社会福祉サービスは、もっと個別的で多様なニーズに応えるためのものです。例えば、高齢者が自宅で安心して暮らせるように、ヘルパーさんが食事の世話や掃除をしてくれる「訪問介護」、障害のある方が社会参加するための「就労支援」、子育てに悩む親御さんへの「相談支援」などがあります。これらのサービスは、個々の状況や抱える課題に合わせて、専門職が計画を立てて提供していきます。

具体例をいくつか見てみましょう。

  1. 社会保障の例
    • 具合が悪くなった時に病院にかかる際の医療費負担軽減
    • 病気やケガで働けない間の所得保障(傷病手当金など)
    • 老齢になった時の生活費の保障(年金)
  2. 社会福祉の例
    • 高齢者のためのデイサービスや施設入所
    • 障害のある人のための相談窓口や移動支援
    • 一人親家庭への経済的支援や学習支援

このように、社会保障は「いざという時の備え」としての側面が強く、社会福祉は「日々の生活をより良く、そして地域で共に生きるための支え」としての側面が強いと言えます。

担い手の違い:誰が中心となって行っているの?

社会保障制度の運営や実施の中心となるのは、国や地方自治体、そして社会保険組合といった公的な機関です。年金制度や医療保険制度などは、法律に基づいて国が中心となって整備・運営されています。これは、国民全体の生活を保障するという、国の責任が大きいからです。

対して、社会福祉の担い手は、公的な機関だけでなく、社会福祉法人やNPO、ボランティア団体など、多様な主体が関わっています。もちろん、行政も重要な役割を担いますが、地域に根差したきめ細やかなサービスを提供するためには、民間や地域の力が不可欠なのです。例えば、地域包括支援センターでは、行政、医療機関、福祉施設などが連携して、高齢者の生活を総合的に支援しています。

この担い手の違いは、それぞれの制度の性格を表しています。

  • 社会保障 :公的機関(国、自治体、社会保険組合など)が中心
  • 社会福祉 :公的機関に加え、社会福祉法人、NPO、ボランティア団体なども重要な担い手

それぞれの得意分野を活かし、連携することで、より効果的な支援が実現しています。

法的な位置づけの違い:どのような法律で定められているの?

社会保障と社会福祉は、それぞれ異なる法律に基づいて位置づけられています。社会保障は、主に「社会保険制度」や「公的扶助制度」、「社会福祉」を包括する概念として、日本国憲法第25条の「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。」という基本的人権の保障に基づいています。具体的な制度としては、「国民健康保険法」「年金法」「失業保険法」など、個別の法律によって規定されています。

一方、社会福祉は、社会福祉法という法律によってその基本理念や制度が定められています。「福祉」という言葉が示すように、より個別的で人間的な支援に焦点を当てています。また、高齢者福祉法、児童福祉法、障害者総合支援法など、対象となる人々に応じた個別の福祉に関する法制度も数多く存在します。これらの法律は、社会福祉が目指す、すべての人々が尊厳を持って生きられる社会の実現に向けた枠組みを提供しています。

それぞれの法的位置づけをまとめると、以下のようになります。

  1. 社会保障
    • 憲法第25条(生存権)に基づく
    • 「社会保険」や「公的扶助」といった様々な制度の総称
    • 個別制度ごとに個別の法律(健康保険法、年金法など)
  2. 社会福祉
    • 「社会福祉法」によって基本理念や制度が定められる
    • 高齢者、児童、障害者など、対象者ごとの個別福祉法も存在

このように、法的な裏付けが、それぞれの制度が社会の中で果たすべき役割を明確にしています。

結論:両者は「車の両輪」

「社会福祉と社会保障の違い」について、ここまで様々な側面から見てきました。目的、対象、財源、サービス内容、担い手、そして法的な位置づけ。それぞれの違いはありますが、どちらも私たちの安全で安心な暮らしを守るために不可欠な存在です。社会保障が、万が一の事態に備える「セーフティネット」としての役割を担い、社会福祉が、そのセーフティネットだけではカバーしきれない、より個々人に寄り添った支援を行う。まさに、この二つは「車の両輪」のように、一体となって機能し、私たちの社会を支えているのです。

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