「陶器」と「陶磁器」、どちらも「焼き物」として私たちの生活に馴染み深いものですが、実は明確な違いがあります。この違いを知ることで、器選びがもっと楽しくなり、それぞれの素材が持つ魅力にもっと気づけるようになるはずです。今回は、そんな 陶器 と 陶磁器 の 違い を分かりやすく解説していきます。
原料と焼成温度で決まる!陶器と陶磁器の根本的な違い
陶器と陶磁器の最も大きな違いは、使われる原料と、それを焼き上げる温度にあります。陶器は、比較的低温で焼かれるため、吸水性があり、独特の温かみや風合いを持っています。一方、陶磁器は、陶器よりも高温で焼かれるため、強度が高く、硬くて緻密な性質を持ちます。この違いが、それぞれの器の特性を大きく左右するのです。
具体的に見ていきましょう。
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陶器
:
- 原料:粘土(石を砕いたもの)
- 焼成温度:約800℃~1250℃
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特徴:
- 吸水性がある(染み込みやすい)
- 土の温かみを感じる
- 独特の肌触り
- 割れやすい(陶磁器に比べて)
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陶磁器
:
- 原料:陶石(粘土と長石、石英などが混ざったもの)
- 焼成温度:約1250℃~1300℃以上
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特徴:
- 吸水性がほとんどない(染み込みにくい)
- 丈夫で硬い
- 光沢がある
- 薄く作ることができる
この原料と焼成温度の違いこそが、陶器 と 陶磁器 の 違いの根幹をなしています。
見分け方のポイント:触って、見て、感じてみよう!
では、実際に普段使っている器が陶器なのか、陶磁器なのか、どうすれば見分けられるのでしょうか? いくつか分かりやすいポイントがあります。
- 重さ :一般的に、陶磁器の方が陶器よりも密度が高いため、同じくらいの大きさでも重く感じることが多いです。手に取った時のずっしりとした重みは、陶磁器のサインかもしれません。
- 光沢(ツヤ) :陶磁器は、高温で焼かれるため表面がガラス質になり、ツルツルとした光沢が出やすいです。一方、陶器は、釉薬(ゆうやく:器の表面を覆うガラス状のコーティング)のかけ方によってはツヤがないものもあり、マットな質感のものが多いです。
- 吸水性 :これは少し実験が必要ですが、水滴を垂らしてみると分かりやすいです。陶器は水が染み込みやすいので、しばらくするとシミになります。陶磁器はほとんど吸水しないので、水滴は表面に残ります。
- 音 :陶器の器を指で軽く叩いてみると、鈍く「ポテッ」というような柔らかい音がします。陶磁器の場合は、硬く澄んだ「コン、コン」というような音がする傾向があります。
陶器の魅力:素朴さと温かさを食卓に
陶器の最大の魅力は、その素朴で温かい風合いにあります。土の持つ自然な質感や、釉薬のムラなどが、一つ一つ異なる表情を生み出し、使うほどに愛着が湧いてきます。
陶器には、以下のような種類があります。
| 代表的な陶器 | 特徴 |
|---|---|
| 信楽焼(しがらきやき) | 荒々しい土の風合い、自然釉の景色が特徴。タヌキの置物でも有名。 |
| 美濃焼(みのやき) | 多様な技法があり、日常使いしやすいものから芸術的なものまで幅広い。 |
| 益子焼(ましこやき) | 素朴で丈夫な作り。温かみのある土色や釉薬が魅力。 |
陶器ならではの、使い込むほどに変化していく「育てる楽しみ」も、陶器の大きな魅力と言えるでしょう。
陶磁器の魅力:機能性と美しさを兼ね備えて
陶磁器は、その美しさと実用性を兼ね備えている点が魅力です。丈夫で水に強く、汚れも落としやすいため、毎日の食卓で気兼ねなく使えます。
陶磁器は、さらに細かく分類されます。
- 磁器(じき) :陶石を原料とし、1300℃以上の高温で焼成されたもの。白く硬く、透光性があるのが特徴。
- 炻器(せっき) :陶石と粘土を混ぜ、1200℃~1300℃で焼成されたもの。陶器より硬く、吸水性は少ない。
特に磁器は、その白さや繊細な絵付けの美しさから、高級感のある器としても愛されています。
普段使いの器選び:どちらを選ぶ?
では、普段使いの器を選ぶとき、陶器と陶磁器のどちらが良いのでしょうか? これは、使うシーンや個人の好みによって変わってきます。
例えば、
- 温かい飲み物を入れるカップ :陶器は保温性が高く、手に持った時の温かみも心地よいのでおすすめです。
- カレーやパスタ皿 :陶磁器は油汚れなども落としやすく、日常使いに便利です。
- お茶碗や小鉢 :どちらも使われますが、陶器はご飯の温かさが程よく冷め、陶磁器は軽くて扱いやすいというメリットがあります。
大切なのは、自分のライフスタイルや、どんな風に使いたいかを考えて選ぶことです。
お手入れ方法の違い:知っておくと長持ち!
陶器と陶磁器では、お手入れ方法にも少し違いがあります。それぞれの特性を理解して、正しくお手入れすることで、器をより長く美しく保つことができます。
陶器のお手入れ :
- 吸水性があるため、使い始めに米のとぎ汁で煮沸すると、貫入(かんにゅう:釉薬にできる細かいひび)に汚れがつきにくくなります。
- 使用後はすぐに洗い、よく乾燥させることが大切です。湿ったままにしておくとカビの原因になります。
- 油汚れなどが気になる場合は、重曹などを使ってみるのも良いでしょう。
陶磁器のお手入れ :
- 基本的には、食器用洗剤で洗っていただくだけで大丈夫です。
- 傷つきやすい金彩や絵柄がある場合は、柔らかいスポンジで優しく洗ってください。
- 食洗機対応のものも多いですが、念のため表示を確認しましょう。
このお手入れの違いも、陶器 と 陶磁器 の 違いを理解する上で重要なポイントです。
まとめ:それぞれの良さを活かして、器のある暮らしを楽しもう
陶器と陶磁器、それぞれの違いは、原料や焼成温度に由来するものであり、それが器の質感、強度、吸水性といった特性に大きく影響しています。陶器はその温かみや素朴さ、陶磁器はその機能性や美しさが魅力です。どちらが良いということではなく、それぞれの良さを理解し、自分の食卓に合う器を選んでいくことが、器のある暮らしをより豊かにしてくれるでしょう。ぜひ、この機会に、お気に入りの器について改めて思いを巡らせてみてください。