「形成外科と整形外科の違いって、正直よくわからない…」そう思っている人も多いのではないでしょうか。実は、どちらも体の「形」や「機能」に関わる分野ですが、アプローチや得意とする領域には明確な違いがあります。ここでは、形成外科と整形外科の違いについて、分かりやすく解説していきます。
形成外科と整形外科、それぞれの得意分野とは？
形成外科と整形外科の違いを理解するには、まずそれぞれの専門分野を知ることが大切です。形成外科は、主に「外見の改善」や「生まれつきの異常の修復」に焦点を当てています。例えば、顔の怪我の跡をきれいに治したり、口唇裂（こうしんれつ）や顎裂（がくれつ）といった生まれつきの顔の奇形を修正したりすることが得意な分野です。
一方、整形外科は「骨、関節、筋肉、神経などの運動器の機能回復」を目指す診療科です。骨折や脱臼、腰痛、肩こり、関節炎など、体の動きに関わる様々なトラブルを治療します。 体の動きをスムーズにし、痛みを軽減させることが整形外科の大きな目標です。
このように、形成外科は「見た目の美しさや機能の再建」、整形外科は「体の動きや痛みの改善」を重視する傾向があります。もちろん、両方の分野が重なる部分もありますが、根本的な考え方には違いがあるのです。
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形成外科の主な対象
- 先天異常（口唇裂、小耳症など）
- 顔面や体の外傷後の再建
- 皮膚のできもの（良性・悪性腫瘍）の切除と再建
- やけどの治療
- 美容外科的な手術
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整形外科の主な対象
- 骨折、脱臼
- 腰痛、肩こり、膝の痛み
- 関節リウマチ、変形性関節症
- スポーツによる怪我
- 神経の圧迫による症状（手根管症候群など）
「再建」と「機能回復」：目指すゴールが違う
形成外科と整形外科の違いをさらに掘り下げると、それぞれが目指すゴールが異なります。形成外科では、失われた機能や形態を「再建」することに重きを置きます。例えば、病気や事故で失った乳房を再建したり、皮膚がんを切除した後に傷跡が目立たないように皮膚を移植したりする手術などがこれにあたります。
一方、整形外科は、損傷した運動器の「機能回復」を目指します。骨折した骨をしっかりと固定して元通りに動くようにしたり、関節の痛みを和らげて歩けるようにしたりすることが主な目的です。リハビリテーションも整形外科では非常に重要な要素となります。
例えるなら、形成外科は「失われたものを新しく作り直す」イメージ、整形外科は「壊れたものを修理して、元の性能を取り戻す」イメージと言えるかもしれません。
| 分野 | 主な目標 | アプローチ |
|---|---|---|
| 形成外科 | 機能・形態の再建、外見の改善 | 移植、皮弁形成、微細手術など |
| 整形外科 | 運動器の機能回復、痛みの軽減 | 手術（骨接合、関節置換など）、薬物療法、リハビリテーション |
「見た目」へのこだわり：形成外科の強み
形成外科の大きな特徴は、「見た目の美しさ」へのこだわりです。単に病気や怪我を治すだけでなく、手術の跡をできるだけ目立たなくしたり、より自然な形に近づけたりすることを目指します。そのため、皮膚の縫合技術や、組織をうまく利用する技術に長けている医師が多いのが特徴です。
例えば、顔にできた傷跡をきれいに治す「傷跡修正手術」や、生まれつき鼻や耳の形に悩みがある方への「形成手術」は、形成外科の専門性が光る分野です。美容外科も形成外科から発展した分野であり、その美への追求は形成外科の根幹をなすものと言えます。
「体の動き」の専門家：整形外科の役割
整形外科は、まさに「体の動きの専門家」です。私たちの日常生活において、歩く、走る、物を持つといった基本的な動作は、骨、関節、筋肉、神経といった運動器が連携して初めて可能になります。整形外科医は、これらの運動器に問題が生じた際に、的確な診断と治療を行い、患者さんが再び自由に動けるようにサポートします。
例えば、スポーツで膝を痛めたアスリートの治療や、高齢者の骨粗しょう症による骨折の治療、長年の腰痛に悩む方のケアなど、幅広い年齢層の患者さんの「動ける体」を取り戻すために尽力しています。
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整形外科でよく行われる治療
- 骨折の固定（ギプス、プレート、ボルトなど）
- 関節鏡手術（膝や肩の関節を小さく切って治す）
- 人工関節置換術（傷んだ関節を人工のものに替える）
- 薬物療法（痛み止め、炎症を抑える薬など）
- リハビリテーション（理学療法士、作業療法士との連携）
「皮膚」と「軟部組織」：形成外科の得意技
形成外科は、皮膚や筋肉、脂肪といった「軟部組織」の扱いに非常に長けています。これらの組織は、体の表面を覆い、形を保つだけでなく、体を動かすためにも不可欠なものです。形成外科医は、これらの組織を損傷から守り、失われた部分を補うための専門的な技術を持っています。
特に、やけどの治療においては、広範囲の皮膚が損傷するため、形成外科の技術が不可欠です。皮膚移植はもちろんのこと、瘢痕（はんこん）組織の盛り上がりを抑えたり、関節の動きを妨げるつっぱりを改善したりする治療も行います。
「骨」と「関節」のスペシャリスト：整形外科の真骨頂
整形外科といえば、やはり「骨」と「関節」のイメージが強いでしょう。骨折した骨を正確に元通りに繋げたり、変形してしまった関節を滑らかに動くように手術したりするのが得意分野です。レントゲンやCT、MRIなどの画像診断を駆使して、骨や関節の状態を詳細に把握し、最適な治療法を選択します。
また、スポーツ外傷にも強く、アスリートのパフォーマンスを最大限に引き出すための治療や、復帰に向けたリハビリテーションの指導も行います。怪我をしても、できるだけ早く、そして以前と同じように動けるようになることを目指します。
「先天性の異常」へのアプローチ：両科の連携も
形成外科は、口唇裂や小耳症、多指症など、生まれつき体に現れる異常の治療も得意としています。これらの異常は、見た目の問題だけでなく、食事や発音、聴力など、様々な機能に影響を与えることがあります。形成外科医は、成長に合わせて段階的に手術を行い、患者さんのQOL（生活の質）の向上を目指します。
一方で、先天性の骨や関節の異常（例えば、股関節形成不全など）は、整形外科が担当することもあります。このように、先天性の異常に対しては、形成外科と整形外科が連携して治療にあたるケースも少なくありません。医師に相談する際は、どのような症状で悩んでいるのかを具体的に伝えることが大切です。
「がん治療」における役割：形成外科と整形外科の連携
がん治療においても、形成外科と整形外科は重要な役割を担っています。例えば、骨にできたがんを切除した場合、その部分の機能や形を再建するために形成外科が関わることがあります。また、皮膚がんや軟部組織のがんの切除後には、形成外科による皮膚移植や再建手術が行われることが多いです。
一方、骨や関節のがん（骨肉腫など）は、整形外科が専門としています。がんの進行状況によっては、患部の切断が必要になることもありますが、その後の義肢装具の選定やリハビリテーションを含めて、患者さんの社会復帰をサポートします。がん治療の現場では、多科連携が非常に重要であり、形成外科と整形外科も密に協力して患者さんを支えています。
まとめ：どちらの科を受診すべき？
形成外科と整形外科の違いについて、ここまで詳しく見てきました。どちらの科を受診すべきか迷った場合は、まず「何に困っているのか」を考えてみましょう。もし、見た目の悩みや、生まれつきの体の異常、やけどの傷跡などが気になる場合は、形成外科を検討してみてください。一方、骨折、関節の痛み、腰痛、肩こりなど、体の動きや痛みに悩んでいる場合は、整形外科が適しています。
もちろん、症状によっては両方の科で診てもらうのが良い場合もあります。迷ったときは、かかりつけ医に相談したり、各病院のウェブサイトで診療内容を確認したりすることをおすすめします。