SSL と SSH の 違い:インターネットを安全に使うための基本

SSL と SSH の違いについて、インターネットを安全に使う上で欠かせないこの二つの技術は、しばしば混同されがちです。しかし、ssl と ssh の違いを理解することは、オンラインでのプライバシーとセキュリティを守るために非常に重要です。それぞれの役割と目的を明確にすることで、より安心してインターネットを活用できるようになります。

SSL/TLS と SSH:それぞれの役割

SSL(Secure Sockets Layer)と SSH(Secure Shell)は、どちらも通信を暗号化するための技術ですが、その用途と目的には明確な違いがあります。SSL/TLS は主にウェブブラウザとウェブサーバー間の通信を保護するために使われ、ウェブサイトの安全性を証明します。一方、SSH はサーバーへのリモートログインやファイル転送など、よりシステム管理に近い場面で利用されることが多いです。
  • SSL/TLS の役割:
    1. ウェブサイトの閲覧時、ブラウザとサーバー間のデータを暗号化し、第三者による盗聴や改ざんを防ぎます。
    2. ウェブサイトの運営者が正規のものであることを証明し、フィッシング詐欺などを防ぐ役割もあります。
    3. URL が `https` で始まるウェブサイトは、SSL/TLS による保護を受けている証拠です。

SSL/TLS による暗号化は、私たちが普段インターネットで買い物をしたり、個人情報を入力したりする際に、その情報が安全にやり取りされていることを保証してくれる、非常に重要な役割を担っています。

対照的に、SSH は主にシステム管理者などが、遠隔地にあるサーバーに安全に接続して操作を行うために使われます。例えば、ウェブサイトの管理や、プログラムの更新などを行う際に、SSH を使ってサーバーにログインし、コマンドを実行します。

技術名 主な用途 保護対象
SSL/TLS ウェブブラウザとウェブサーバー間の通信 ウェブサイト閲覧時のデータ
SSH リモートログイン、ファイル転送 サーバーへの接続・操作時のデータ

SSL/TLS が活躍する場面

SSL/TLS(Secure Sockets Layer / Transport Layer Security)は、インターネット通信における「信頼の証」のようなものです。皆さんが普段、オンラインショッピングをしたり、銀行のウェブサイトにアクセスしたりする際に、URL が `http` ではなく `https` で始まっているのを見たことがあるでしょう。あの `s` が、SSL/TLS による暗号化が有効になっていることを示しています。

具体的には、SSL/TLS はあなたのコンピューター(ブラウザ)と、ウェブサイトを提供しているサーバーとの間で、送受信される情報をすべて「秘密の鍵」を使って暗号化します。これにより、もし悪意のある第三者がその通信を傍受しようとしても、暗号化されているため内容を理解することはできません。

SSL/TLS のもう一つの重要な役割は、ウェブサイトの「身元確認」です。 SSL/TLS 証明書というものがあり、これはウェブサイトの運営者が確かにそのウェブサイトを所有していることを証明するものです。これにより、偽のウェブサイトにアクセスしてしまったり、個人情報を盗まれたりするリスクを減らすことができます。

  • SSL/TLS が保護する情報の例:
    1. クレジットカード情報
    2. ログインIDとパスワード
    3. 個人情報(氏名、住所、電話番号など)
    4. メールの内容

SSH が活躍する場面

SSH(Secure Shell)は、コンピューターネットワーク上で、安全にリモート(遠隔地)にあるコンピューターに接続し、操作するためのプロトコル(約束事)です。皆さんがウェブサイトを見るときに SSL/TLS が活躍するように、SSH は主にサーバーの管理者などが、自分のオフィスや自宅から、遠く離れた場所にあるサーバーに「ログイン」して、そこで色々な作業をするために使われます。

例えば、ウェブサイトのプログラムを更新したり、新しいコンテンツを追加したり、サーバーの設定を変更したりといった作業は、SSH を通じて行われることが多いです。SSH は、このリモート接続の際の通信全体を強力に暗号化してくれるため、パスワードやコマンドなどが第三者に漏れる心配がありません。

SSH は単にログインするだけでなく、安全なファイル転送(SCPやSFTPという形式)や、他のネットワーク通信を暗号化するトンネルを作成する(SSHトンネリング)といった、さまざまな用途にも利用されます。 SSH は、サーバーを安全に管理・運用するための「鍵」とも言える存在です。

  1. SSH を使う主な理由:
  2. 安全なリモートログイン
  3. 安全なファイル転送
  4. ネットワーク通信の暗号化

SSL/TLS と SSH の目的の違い

SSL/TLS と SSH の最も大きな違いは、それぞれの「目的」にあります。SSL/TLS は、主に「ウェブブラウザ」と「ウェブサーバー」という、一般のインターネットユーザーが日常的に利用するサービス間の通信を保護するために設計されています。つまり、皆さんがインターネットで何かを「閲覧」したり、「購入」したりする際に、そのやり取りが安全であることを保証するのが SSL/TLS の主な役割です。

一方、SSH は、より「システム管理」や「開発」といった、専門的な用途で使われることが多いです。サーバーの「管理者」や「開発者」が、遠隔地にあるサーバーに「接続」して、そこで「コマンド」を実行したり、「ファイル」を操作したりする際の通信を保護するのが SSH の主な目的です。

目的 SSL/TLS SSH
一般ユーザー向けの安全な通信 △ (間接的に利用される場合もある)
システム管理者・開発者向けの安全な操作 △ (ウェブサーバー管理など限定的)

この目的の違いを理解することが、ssl と ssh の違いを明確に把握する上で非常に重要です。 SSL/TLS は「見えないところで通信を守る」、SSH は「直接サーバーを操作するために安全な道を作る」というイメージで捉えると分かりやすいでしょう。

SSL/TLS と SSH で使われる技術

SSL/TLS と SSH は、どちらも公開鍵暗号方式や共通鍵暗号方式といった暗号技術を組み合わせて利用していますが、その仕組みやプロトコル(通信のルール)には違いがあります。SSL/TLS は、主に TCP/IP プロトコルスタックのアプリケーション層とトランスポート層の間で動作し、ウェブブラウザとウェブサーバーの間で安全な通信路を確立します。HTTPS(HTTP over SSL/TLS)という形で、HTTP 通信を暗号化します。

SSH は、TCP ポート 22 番を標準として利用し、クライアントとサーバーの間で認証を行い、セキュアなシェルセッションを確立します。SSH は、単なる暗号化だけでなく、ユーザー認証やデータの完全性保証(データが改ざんされていないかの確認)といった機能も備えています。 SSH が提供する暗号化は、通信経路全体を保護することに特化しています。

  • SSL/TLS で利用される主な技術:
    1. 公開鍵暗号方式(RSA, ECCなど)
    2. 共通鍵暗号方式(AES, ChaCha20など)
    3. ハッシュ関数(SHA-256など)

一方、SSH も同様に公開鍵暗号方式や共通鍵暗号方式を利用しますが、そのプロトコルの設計思想は、リモートでのコマンド実行やファイル転送といった、よりシステムレベルでの安全な操作に重点を置いています。

SSL/TLS と SSH の証明書

SSL/TLS では、「SSL/TLS証明書」というものが非常に重要な役割を果たします。これは、ウェブサイトの運営者の身元を証明し、そのウェブサイトが正規のものであることを保証するためのデジタル文書です。ブラウザは、ウェブサイトにアクセスする際に、その SSL/TLS 証明書を信頼できる認証局(CA: Certificate Authority)によって発行されたものであるかを確認します。

SSH にも「SSHキー」と呼ばれるものがあり、これも公開鍵と秘密鍵のペアで構成されます。SSHキーは、SSH接続におけるユーザー認証の仕組みで利用されます。パスワード認証の代わりにSSHキーを使うことで、より強固な認証が可能になります。 SSHキーによる認証は、パスワードが漏洩するリスクを軽減してくれるため、サーバー管理のセキュリティを向上させる上で非常に有効です。

しかし、SSL/TLS 証明書が「ウェブサイトの身元」を証明するものであるのに対し、SSHキーは「ユーザーの身元」を証明したり、サーバーとの間で安全な接続を確立するための「鍵」としての役割が強いと言えます。

SSL/TLS と SSH のポート番号

インターネット通信では、各サービスが特定の「ポート番号」を使って通信を行います。SSL/TLS による暗号化されたウェブ通信(HTTPS)は、通常、TCP のポート番号 443 番を使用します。そのため、ウェブブラウザで `https` のウェブサイトにアクセスすると、この 443 番ポートを通じて安全な通信が行われます。

一方、SSH は、標準として TCP のポート番号 22 番を使用します。システム管理者などが SSH クライアントを使ってサーバーに接続する際には、この 22 番ポートを通じて認証やコマンドのやり取りを行います。 SSH の 22 番ポートは、リモートサーバーへの安全なアクセスを可能にするための、いわば「裏口」のようなものですが、不正アクセスを防ぐために、ポート番号を変更したり、アクセス制限をかけたりするなどのセキュリティ対策が一般的です。

このように、SSL/TLS と SSH は、それぞれ異なるポート番号を利用することで、異なる種類の通信を識別し、適切に処理しています。

SSL/TLS と SSH の併用

SSL/TLS と SSH は、それぞれ異なる目的で利用されますが、状況によっては併用されることもあります。例えば、ウェブサーバーを管理しているシステム管理者は、SSH を使ってサーバーにリモートログインし、そこでウェブサーバーの設定を変更したり、SSL/TLS 証明書をインストールしたりします。この場合、SSH はサーバーへの安全な接続を提供し、SSL/TLS はウェブサイトの閲覧者を保護するという、それぞれの役割を果たします。

また、SSH の機能を使って、SSL/TLS で暗号化された通信をさらに保護する「SSHトンネリング」という技術もあります。これは、本来暗号化されていない通信(例えば、古いプロトコルを使った通信)を、SSH のトンネルを通すことで暗号化し、安全に通信できるようにするものです。 このように、ssl と ssh の違いを理解しつつ、それぞれの技術を適切に使い分けることで、より強固なセキュリティ体制を構築することが可能になります。

これらの技術は、インターネットの安全性を支える基盤であり、私たちが安心してオンライン活動を行うために不可欠なものです。

SSL と SSH の違いは、インターネットを安全に利用するための重要な知識です。SSL/TLS がウェブサイトの安全を守り、SSH がサーバーへの安全なアクセスを可能にすることを知っていれば、オンラインでの活動がより安全で安心なものになるはずです。

関連記事: