徹底解説!栽培漁業と養殖漁業の違いをわかりやすく!

「栽培漁業」と「養殖漁業」、どちらも海や川で魚などを育てるイメージがあるけれど、実はその進め方には大きな違いがあります。 この二つの違いを理解することは、持続可能な水産業を考える上でとても重要です。 この記事では、この「栽培漁業と養殖漁業の違い」について、小学生にもわかるくらい優しく解説していきますよ!

種苗生産と育成のプロセスを比較

まず、栽培漁業と養殖漁業の最も大きな違いは、魚などを育てるための「種(たね)」、つまり「種苗(しゅびょう)」をどうやって手に入れるかにあります。栽培漁業では、自然界から採卵・採苗した稚魚や稚貝を放流し、自然の環境で大きく育てていきます。一方、養殖漁業では、親魚を管理して人工的に卵を産ませ、それを孵化させて稚魚や稚貝を育てるところから始めます。この「種苗を人工的に作るかどうか」が、両者の根本的な違いと言えるでしょう。

具体的に見てみましょう。

  • 栽培漁業:
    • 自然界から採卵・採苗
    • 稚魚や稚貝を一定期間育てて放流
    • その後は自然の環境に任せる
  • 養殖漁業:
    • 親魚の管理
    • 人工授精による受精卵の確保
    • 孵化・育成・種苗生産(すべて人工的に行う)

このように、栽培漁業は自然の力を借りる部分が大きいですが、養殖漁業はより人工的な管理のもとで、生産から育成までを一貫して行います。 どちらの方法にも、それぞれのメリットとデメリットがあります。

漁獲対象と放流・管理方法の違い

次に、どのような魚や貝を対象としているか、そしてどのように放流・管理しているかという点でも違いが見られます。栽培漁業は、もともと自然界に生息しているけれど、漁獲量が増えすぎたり、環境の変化で減ってしまったりした資源を、人工的に育てて補うことを目的としています。そのため、放流先も基本的には自然の海や川です。

一方、養殖漁業は、人工的に管理された環境(生け簀や施設)で、魚などを計画的に生産・育成します。対象となる魚種も、需要の高いものや、自然界では減少しやすいものが選ばれることが多いです。養殖漁業の大きな特徴は、 「種苗生産から漁獲までの全行程を管理できる」 という点にあります。

いくつか例を挙げてみましょう。

項目 栽培漁業 養殖漁業
主な対象 アワビ、ウニ、ノリ、ワカメ、一部の魚類 マグロ、タイ、ハマチ、エビ、カキ、真珠
育成場所 自然の海・川 生け簀、養殖場、陸上施設
管理レベル 比較的低い(放流後の管理は自然に委ねる部分が多い) 高い(餌やり、水質管理、病気対策など)

このように、管理の度合いや対象となる生物、そして育成場所にも違いがあるのです。

自然環境への依存度

栽培漁業は、その名の通り、自然の恵みや環境を「栽培」するように利用する側面が強いです。そのため、台風などの自然災害や、海流の変化、餌となるプランクトンの発生状況など、 自然環境の影響を大きく受けやすい という特徴があります。それでも、減ってしまった魚を増やしたり、地域特有の海産資源を維持したりする上で、重要な役割を果たしています。

対照的に、養殖漁業は、ある程度管理された環境で行われるため、自然災害の影響を軽減できる場合があります。しかし、水質汚染や病気の発生など、人工的な環境だからこそ起こりうる問題も存在します。 どちらの漁業も、持続可能な形で発展していくためには、自然環境との調和が不可欠です。

生産コストと価格への影響

生産コストや最終的な価格にも、両者の違いは表れます。栽培漁業は、自然の餌を利用したり、放流後の管理が比較的簡便であったりするため、養殖漁業に比べて生産コストが抑えられる場合があります。しかし、自然に依存するため、収穫量が天候に左右されやすく、安定した供給が難しいという側面もあります。

一方、養殖漁業は、種苗生産から餌、施設管理、人件費など、多くのコストがかかります。そのため、一般的に栽培漁業で生産されたものよりも価格が高くなる傾向があります。ただし、計画的に生産でき、品質を一定に保ちやすいため、消費者にとっては安定した供給と品質が期待できるというメリットがあります。

資源管理と持続可能性

資源管理という観点からも、栽培漁業と養殖漁業は異なります。栽培漁業は、減少した資源を回復させ、自然の漁業資源を「増やす」ことを目指す側面が強いです。放流によって、本来なら獲れなくなっていたはずの魚が再び漁獲できるようになることもあります。

養殖漁業は、自然の資源を直接利用するのではなく、人工的に生産することで、自然の資源への圧迫を減らすことができます。例えば、天然のマグロの漁獲規制が厳しくなる中で、養殖マグロは安定した供給源となっています。 どちらの漁業も、乱獲を防ぎ、将来にわたって水産資源が利用できるようにするための、重要な役割を担っています。

地域経済への貢献

栽培漁業と養殖漁業は、どちらも地域経済に大きく貢献しています。栽培漁業は、その地域の海や川の生態系を維持・回復させることで、漁業資源の安定化に繋がり、漁師さんの収入を支えます。また、地域特有の海産物ブランドの育成にも繋がることがあります。

養殖漁業は、新たな雇用を生み出したり、地域で生産された水産物を国内外に販売することで、地域経済の活性化に貢献します。特に、近年では技術開発が進み、高付加価値な養殖魚の生産も増えています。 地域社会と連携し、その地域に合った漁業の形を模索していくことが大切です。

まとめ

ここまで、栽培漁業と養殖漁業の違いについて、様々な角度から見てきました。簡単にまとめると、栽培漁業は「自然の力を借りて、減った資源を補う」、養殖漁業は「人工的に管理された環境で、計画的に生産する」というイメージです。どちらの漁業も、私たちの食卓を豊かにしてくれるだけでなく、海の恵みを未来に繋いでいくために、なくてはならない存在なのです。

関連記事: