PTSD と トラウマ の 違い:心の傷を正しく理解しよう

PTSDとトラウマの違い、気になったことはありませんか?実は、この二つは密接に関連していますが、全く同じものではありません。この記事では、「PTSDとトラウマの違い」を分かりやすく解説し、心の傷について理解を深めていきましょう。

トラウマとは?心の傷の原点

まず、「トラウマ」について説明します。トラウマとは、人が耐え難いほどの精神的な衝撃や苦痛を受けた体験そのものを指します。これは、命の危険を感じるような出来事だけでなく、精神的に非常に辛い経験も含まれます。

  • 交通事故
  • 自然災害
  • いじめや虐待
  • 大切な人を失う経験

これらの出来事は、一時的に強いストレスや恐怖を感じさせます。 トラウマ体験は、誰にでも起こりうるものであり、その後の心の状態に影響を与える可能性があります。

トラウマ体験の感じ方は人それぞれです。

体験の性質 受け止め方
生命の危機を感じる 強い恐怖、無力感
精神的に追い詰められる 絶望感、孤独感

トラウマ体験が、その後の心の健康にどのような影響を与えるかを見ていきましょう。

PTSDとは?トラウマが引き起こす「こころの病」

次に、「PTSD(心的外傷後ストレス障害)」についてです。PTSDは、トラウマ体験をした後に起こりうる、こころの病気の一つです。トラウマ体験そのものではなく、その体験によって引き起こされる、様々な症状の集まりを指します。

PTSDの主な症状には、以下のようなものがあります。

  1. 再体験症状: トラウマ体験をフラッシュバックのように思い出したり、悪夢を見たりすること。
  2. 回避症状: トラウマを思い出すような場所、人、状況を避けること。
  3. 過覚醒症状: 常に神経が過敏になり、驚きやすくなったり、集中力が低下したりすること。
  4. 認知や気分・感情の変化: 自分や他人に対する否定的な考えが強くなったり、感情が麻痺したりすること。

PTSDは、トラウマ体験をしたすべての人がなるわけではありません。 しかし、これらの症状が長く続き、日常生活に支障が出ている場合は、PTSDの可能性があります。

PTSDの症状は、時間とともに自然に改善することもありますが、専門家の助けが必要な場合も少なくありません。

トラウマ体験の「原因」とPTSDの「結果」

トラウマ体験は、PTSDの「原因」となります。つまり、トラウマ体験がなければ、PTSDになることはありません。しかし、トラウマ体験をしたからといって、必ずPTSDになるわけでもありません。個人差があります。

トラウマ体験の例をいくつか挙げてみましょう。

  • 災害: 地震、津波、火災などの被災体験。
  • 事故: 交通事故、転落事故、暴力事件の目撃。
  • 人為的なもの: 戦争、テロ、犯罪被害、家庭内暴力、児童虐待。
  • その他: 手術などの医療的処置、病気による危機的状況。

トラウマ体験の深刻さや、その後のサポート体制などが、PTSDの発症に影響を与えることがあります。

PTSDは、トラウマ体験による「結果」として現れる症状群です。

PTSDの「診断基準」とトラウマの「体験」

PTSDの診断は、専門家である精神科医などによって行われます。診断には、特定の基準があり、トラウマ体験の有無だけでなく、その後の症状の持続期間や程度が考慮されます。

PTSDの診断基準には、一般的に以下のような項目が含まれます。

  1. 曝露基準: 死、重傷、または性的な暴力に関する、現実に、または深刻に誤って体験した、目撃した、または繰り返し接した出来事。
  2. 侵入基準: これらの出来事に関する、意図しない、侵入的で苦痛な記憶、反復する悪夢、フラッシュバックなど。
  3. 回避基準: これらの出来事に関連する、刺激(思考、感情、会話、場所、人、経験など)の回避。
  4. 否定的認知・気分・感情の障害: 出来事に関連する、記憶の重要な側面を思い出せない、持続的で歪んだ否定的信念や期待、出来事の原因や結果についての持続的な歪んだ考え、出来事に関連する、主要な感情(恐怖、恐怖、怒り、罪悪感、恥など)の持続的な状態、活動への興味や関心の著しい低下、他者との隔絶感、肯定的な感情の体験の著しい低下。
  5. 覚醒・反応性亢進の障害: 易刺激性や、怒りの爆発、向こう見ずまたは自己破壊的な行動、過度の警戒心、驚愕反応の過剰性、集中困難、不眠。

トラウマ体験そのものは、これらの診断基準に直接含まれるものではありません。 PTSDは、あくまでトラウマ体験によって引き起こされる「病状」なのです。

「治療法」と「原因」の関係性

PTSDの治療法は、トラウマ体験そのものをなくすのではなく、トラウマ体験による心の傷を癒し、症状を軽減することを目指します。様々な治療法がありますが、代表的なものをいくつか紹介します。

  • 心理療法(カウンセリング):
    • トラウマに焦点を当てた認知行動療法(TF-CBT)
    • 眼球運動による脱感作と再処理法(EMDR)
  • 薬物療法:
    • 抗うつ薬
    • 抗不安薬

これらの治療法は、トラウマ体験の「原因」がもたらした苦痛や症状に、「結果」としてアプローチします。 トラウマ体験の「原因」を根本的に変えることはできませんが、その「結果」であるPTSDを乗り越えるためのサポートを行います。

「回復」への道のりとトラウマの「影響」

PTSDからの「回復」は、直線的なものではありません。時間がかかり、波があることも珍しくありません。しかし、適切なサポートと本人の努力によって、多くの人が回復し、より良い生活を送れるようになります。

トラウマ体験がもたらす「影響」は、PTSDの症状だけでなく、以下のようなものにも及びます。

影響の側面 具体的な例
精神的健康 うつ病、不安障害、睡眠障害
身体的健康 慢性的な痛み、消化器系の問題、心血管系の問題
対人関係 孤立、人間不信、関係の断絶
社会生活 仕事や学業への集中力低下、休職・休学

回復の過程では、トラウマ体験が「原因」となったこれらの影響を、一つずつ理解し、対処していくことが重要です。

PTSDとトラウマの違いを理解することは、心の健康について考える上で非常に大切です。トラウマは体験そのものを指し、PTSDはその体験によって引き起こされる可能性のある病気です。どちらも、一人で抱え込まず、専門家や周りの人に相談することが、回復への第一歩となります。

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