「葬儀」と「告別式」、この二つの言葉、なんとなく似ているけれど、実際にはどう違うのでしょうか？ 葬儀 と 告別 式 の 違い を理解することは、いざという時に慌てないためにとても大切です。この記事では、それぞれの意味や目的、そして両者がどのように組み合わされているのかを、皆さんにわかりやすくお伝えしていきます。
祭壇に手を合わせる「儀式」としての葬儀
まず、葬儀とは、亡くなった方を弔い、冥福を祈るための仏式や神道式などの「儀式」そのものを指します。これは、故人の魂を鎮め、あの世へと送り出すための大切なプロセスです。宗教や宗派によって内容は異なりますが、読経や焼香、玉串奉奠（たまぐしほうてん）といった、故人への感謝や別れを捧げる一連の所作が含まれます。
葬儀は、一般的に近親者や親しい友人が中心となって行われます。故人を偲び、悲しみを分かち合うための、より個人的な意味合いが強いものです。その形式は、宗教や宗派によって細かく定められています。
- 仏教式：読経、焼香、戒名授与など
- 神道式：祝詞奏上（のりとそうじょう）、玉串奉奠、撤饌（てっせん）など
- キリスト教式：聖書朗読、祈祷、献花など
故人を弔うための宗教的・儀式的な側面を重視するのが葬儀 と言えるでしょう。
故人を社会へ送り出す「お別れ」としての告別式
一方、告別式は、故人が生前お世話になった方々が、故人に最後の別れを告げるための「お別れの会」といった性格が強いものです。こちらは、近親者だけでなく、仕事関係者、友人、知人など、故人と関わりのあった多くの方々が参列し、故人の功績を称え、冥福を祈ります。葬儀よりも、より広い範囲の人々が故人を偲ぶ場となります。
告別式では、弔辞や弔電の紹介、弔花（ちょうか）の献花などが行われ、故人の人柄や思い出を語り合う時間も設けられます。現代では、葬儀と告別式は一体化して行われることがほとんどですが、本来はこのような意味合いの違いがあります。以下に、告別式における一般的な流れをまとめました。
| 時間 | 内容 |
|---|---|
| 開式 | 司会者による開式の言葉 |
| 弔辞・弔電 | 故人に宛てた弔辞を読んだり、届いた弔電を紹介したりする |
| 焼香 | 参列者が順に焼香を行う |
| 閉式 | 司会者による閉式の言葉 |
参列者全員で故人を偲び、社会へ送り出すための場が告別式 です。
葬儀と告別式はどのように行われる？
現代の日本の葬儀では、多くの場合、葬儀と告別式は連続して行われます。つまり、まず故人を弔うための宗教的な儀式である「葬儀」が執り行われ、その後に、参列者全員で故人に別れを告げる「告別式」が行われる、という流れが一般的です。そのため、参列者としては、どちらか一方だけに参加するということは少なく、両方の儀式に出席することになります。
では、具体的にどのような順序で行われるのでしょうか。多くの場合は、以下のようになります。
- 出棺の儀 ：故人を棺に納め、火葬場へ送り出す儀式です。
- 葬儀・読経 ：僧侶などによる読経や、宗教的な儀式が執り行われます。
- 告別式 ：弔辞、弔電、焼香などが行われ、参列者全員で故人に別れを告げます。
- 出棺 ：棺が霊柩車に運ばれます。
この流れは、あくまで一般的なものであり、地域や宗派、葬儀社によって多少異なる場合があります。
地域や宗派による違い
地域によっては、葬儀と告別式を区別せず、まとめて「葬儀・告別式」と呼ぶこともあります。また、宗派によっては、告別式よりも葬儀を重視し、その中で弔辞や焼香が行われる場合もあります。例えば、仏教の浄土真宗では、阿弥陀仏に救われるという教えから、死は悲しいものではなく、浄土への旅立ちと捉えるため、告別式というよりは「帰敬式（ききょうしき）」といった儀式が中心になることもあります。
葬儀とお別れの形
最近では、形式にとらわれず、故人の遺志を尊重した、より個人らしいお別れをしたいというニーズが高まっています。そのため、葬儀の形式も多様化しています。
- 家族葬 ：近親者のみで行う小規模な葬儀です。
- 一日葬 ：火葬までの儀式を1日で行う簡略化された葬儀です。
- 無宗教葬 ：特定の宗教儀式にとらわれず、故人の好きだった音楽を流したり、思い出の品を飾ったりする自由な形式のお別れ会です。
これらの新しい形式の葬儀でも、故人を偲び、感謝の気持ちを伝えるという根本的な目的は変わりません。
参列者が知っておくべきこと
葬儀や告別式に参列する際は、いくつかのマナーがあります。服装は、男性は黒のスーツに白のワイシャツ、黒のネクタイ。女性は黒のワンピースやスーツなど、露出の少ない落ち着いた服装を選びます。アクセサリーも結婚指輪以外は控えるのが一般的です。
香典（こうでん）については、相手との関係性や地域によって相場が異なります。一般的には、友人や知人であれば3,000円～10,000円程度、親族であれば10,000円～50,000円程度と言われています。香典袋の表書きや、渡し方にも注意が必要です。
参列者の心得
- 服装 ：喪服を着用し、華美な装飾品は避ける。
- 香典 ：不祝儀袋（ぶしゅうぎぶくろ）を使用し、表書きや金額、氏名を正しく記入する。
- 焼香 ：数珠（じゅず）を左手に持ち、右手の指で数珠を繰りながら行う。宗派によって回数が異なる場合があるため、周りの人の様子を見ながら行うと良いでしょう。
- 振る舞い ：必要以上に騒いだり、私語を慎む。
まとめ：故人への想いを形にする大切な時間
「葬儀」は故人を弔い、冥福を祈るための宗教的・儀式的な側面が強く、「告別式」は故人に別れを告げ、社会へ送り出すためのお別れの場という違いがあります。しかし、現代ではこれらは一体化して行われることがほとんどであり、どちらも故人を偲び、感謝の気持ちを伝えるための大切な時間です。これらの違いを理解し、心を込めて参列することが、故人への何よりの供養となるでしょう。