「自閉症」と「発達障害」、これらの言葉を聞いたことがありますか?似ているようで、実はそれぞれ意味が異なります。今回は、 自閉症と発達障害の違い を、皆さんに分かりやすくお伝えします。
自閉症と発達障害の関係性:包含される関係を理解しよう
まず、一番大切なのは、自閉症は発達障害という大きな枠組みの中の一つである、ということです。つまり、自閉症は発達障害に含まれるものなのです。
発達障害というのは、脳の発達がゆっくりだったり、他の人と少し違っていたりすることによって、日常生活や社会生活で困りごとが生じることがある状態を指します。そして、その発達障害の中には、いくつかの種類があります。その代表的なものの一つが、自閉症スペクトラム(ASD)なのです。
だから、「自閉症と発達障害の違い」というよりも、「発達障害という大きなカテゴリーの中に、自閉症というものがある」と理解するのが正しいと言えるでしょう。具体的に、発達障害には以下のようなものがあります。
- 自閉症スペクトラム(ASD)
- 注意欠如・多動症(ADHD)
- 学習障害(LD)
- 知的障害
自閉症スペクトラム(ASD)の特徴:コミュニケーションと興味の偏り
自閉症スペクトラム(ASD)は、先ほども触れたように発達障害の一つです。ASDのある方は、大きく分けて二つの特徴が見られることが多いです。
一つ目は、「社会的コミュニケーションの困難さ」です。これは、相手の気持ちを読み取ったり、言葉だけでなく表情やジェスチャーから意図を理解したりすることが苦手な場合がある、ということです。また、自分の気持ちをうまく伝えられないこともあります。
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具体例:
- アイコンタクトが苦手
- 言葉の裏を読むのが難しい
- 冗談や比喩が通じにくい
- 自分の話ばかりしてしまうことがある
二つ目は、「限定された興味や、こだわり」です。特定の物事に強い興味を持ち、それについて深く掘り下げていく一方で、それ以外のことにあまり関心を示さないことがあります。また、物事の順序ややり方に強いこだわりを持つこともあります。
例えば、以下のような様子が見られます。
| 特徴 | 具体的な様子 |
|---|---|
| 限定された興味 | 電車の時刻表をすべて覚える、特定のキャラクターに夢中になる |
| こだわり | いつも決まった道順でしか通らない、食事はいつも同じものしか食べない |
ADHD(注意欠如・多動症)との違い:衝動性と不注意
発達障害の中でも、ADHD(注意欠如・多動症)はASDとは異なる特徴を持っています。ADHDの主な特徴は、「不注意」と「多動性・衝動性」です。
不注意とは、集中力が続かなかったり、忘れ物が多かったり、物事を順序立てて行うのが苦手だったりすることです。例えば、授業中に他のことに気が散ってしまったり、宿題をやり忘れてしまったりすることがあります。
多動性・衝動性とは、じっとしているのが苦手で落ち着きがなかったり、思いついたことをすぐに行動に移してしまったりすることです。例えば、授業中に席を立ってしまったり、順番を待てずに人の話を遮ってしまったりすることがあります。
ADHDの人は、ASDの人と違って、社会的なコミュニケーションに大きな困難を抱えていない場合も多く、むしろ多弁で社交的な人もいます。しかし、行動の衝動性から、人間関係でトラブルを起こしてしまうこともあります。
学習障害(LD)との違い:読む、書く、計算する
学習障害(LD)は、知的な遅れはないにも関わらず、「読む」「書く」「計算する」といった特定の学習能力に困難を抱える状態です。この困難さも、発達障害の一つとして理解されています。
例えば、以下のようなタイプがあります。
- ディスレクシア(書字表字障害): 文字を読むことや、書くことに困難があります。文字が鏡文字になってしまったり、単語を読み飛ばしてしまったりすることがあります。
- ディスグラフィア(書字障害): 文字を書くことに困難があります。字が乱雑になったり、漢字の書き順を間違えたり、文章を構成するのが苦手だったりします。
- ディスカルキュリア(計算障害): 計算することに困難があります。簡単な足し算や引き算ができず、数字の概念を理解するのが難しい場合があります。
学習障害は、外見からは分かりにくいことも多く、本人の努力不足だと誤解されてしまうこともあります。しかし、これは脳の機能の特性によるものであり、適切なサポートによって学習を進めることが可能です。
知的障害との違い:知的な発達の遅れ
発達障害の中には、「知的障害」も含まれます。知的障害は、一般的に、知的な発達が平均よりも遅れている状態を指します。そのため、学習や日常生活を送る上で、様々な場面で支援が必要となることがあります。
知的障害の程度は人によって異なり、日常生活のほとんどで支援が必要な方から、ある程度の自立ができる方まで様々です。ASDやADHDなどの発達障害と併存して、知的障害がある場合もあります。
知的障害のある方は、新しいことを学ぶのに時間がかかったり、抽象的な思考が苦手だったりすることがあります。また、感情のコントロールや、社会的なルールを理解することが難しい場合もあります。
まとめ:多様な特性を理解することの大切さ
ここまで、自閉症と発達障害の違いについて、それぞれの特徴を説明してきました。重要なのは、「自閉症は発達障害という大きな傘の中の一つである」ということです。
発達障害には、ASD、ADHD、学習障害、知的障害など、様々な種類があり、それぞれに異なる特性があります。これらの特性は、その人の個性であり、優劣ではありません。 多様な特性を理解し、一人ひとりが生きやすい社会を作っていくこと が大切です。
もし、周りに少し変わった行動をする人や、勉強や生活で困っている人がいたら、それはもしかしたら発達障害の特性によるものかもしれません。温かい目で見守り、理解しようと努めることが、より良い人間関係や社会に繋がるはずです。