徹底解説!余剰金と剰余金の知っておきたい違い

「余剰金」と「剰余金」、どちらも「余りのお金」というイメージがありますが、実はそれぞれ意味するところが異なります。この二つの言葉の「余剰金と剰余金の違い」を正しく理解することは、特にビジネスや会計の場面で非常に重要です。今回は、この二つの用語を分かりやすく解説し、その違いを明確にしていきましょう。

1. 余剰金と剰余金、何が違う?基本を押さえよう

「余剰金」と「剰余金」の根本的な違いは、その発生源と性質にあります。一般的に、会社が本業で得た利益から、税金や経費を差し引いた後に残ったお金を指す場合、より広い意味で使われるのが「剰余金」です。一方、「余剰金」は、企業会計においては、決算の結果、当期純利益から配当金などを支払った後、さらに残った利益剰余金のうち、特定の目的のために積み立てられたり、あるいはまだ処分方法が決まっていない利益を指すこともあります。
  • 余剰金 :決算で残った利益のうち、まだ使い道が決まっていない部分や、特定の目的のために確保されたお金。
  • 剰余金 :会社が事業活動で得た利益から、経費などを差し引いた残りの部分。
この「余剰金と剰余金の違い」を理解することは、会社の財務状況を把握する上で欠かせません。例えば、株主への配当や将来の投資に回せるお金がどれくらいあるのかを知るためには、これらの用語の区別が大切になってきます。

具体的に見ていきましょう。

  1. 利益の発生 :会社は商品やサービスを提供し、売上を上げます。
  2. 経費の差し引き :売上から、仕入れ代金、人件費、家賃などの経費を差し引きます。
  3. 税金の支払い :法人税などの税金を支払います。
  4. 最終的な利益 :これらの計算を経て、最終的な利益(当期純利益)が確定します。

この最終的な利益のうち、株主への配当金などに充てられたり、会社に留保されたりするのが「剰余金」と呼ばれるものです。

2. 発生源から見る「余剰金と剰余金の違い」

「余剰金」と「剰余金」の最も分かりやすい違いは、その「発生源」です。剰余金は、企業の活動によって生み出された「利益そのもの」を指す場合が多いのに対し、余剰金は、その利益が確定し、一定の処理を経た後、まだ最終的な配分や処分が決まっていない、あるいは特定の目的のために一時的に確保された状態のお金を指すことが多いのです。
用語 主な発生源 性質
剰余金 事業活動による売上から経費や税金を差し引いた後の「利益」 会社の儲け
余剰金 剰余金のうち、まだ処分方法が確定していない部分や、特定の目的のために積み立てられた部分 一時的、あるいは特定の目的を持つ「利益の残り」

つまり、剰余金は「利益の総体」として捉えられることが多く、余剰金は「その利益の中の、まだどうするか決まっていない、あるいは一時的に取っておかれた部分」といったニュアンスになります。

3. 会計上の取り扱いによる「余剰金と剰余金の違い」

会計上、「余剰金」と「剰余金」の扱いは、その定義や使われ方によって微妙に異なります。一般的に、会計で「剰余金」という言葉が使われる場合、それは貸借対照表の純資産の部に計上される、株主から払い込まれた資本金や、事業活動で得られた利益の蓄積といった、より広範な概念を指します。
  • 利益剰余金 :過去の利益のうち、株主への配当などとして分配されずに、社内に蓄積されたもの。
  • 資本剰余金 :株主が会社に出資した金額のうち、資本金に組み入れられなかった部分。

一方、「余剰金」という言葉が使われる場面では、もう少し限定的な意味合いを持つことがあります。例えば、決算の結果、当期純利益が出たものの、まだ株主総会で配当金や役員賞与などが決定されていない段階で、その「残ったお金」を一時的に「余剰金」と呼ぶことがあります。また、特定のプロジェクトのために、あらかじめ一部の利益を「余剰金」として積み立てておく、といった使われ方も考えられます。

4. 法律上の定義から見た「余剰金と剰余金の違い」

法律、特に会社法においても、「剰余金」は重要な概念として定義されています。会社法では、株式会社が株主に対して分配できる利益のことを「分配可能額」と呼び、この分配可能額の範囲内で配当などが実施されます。この分配可能額の計算の元となるのが、「利益剰余金」や「資本剰余金」といった「剰余金」です。

一方、「余剰金」という言葉は、会社法で厳密に定義された用語ではありません。しかし、実務上では、先述したように、決算で発生した利益のうち、まだ配当などの処分が決定されていない部分や、特定の目的のために確保された利益を指す場合が多いです。

  1. 利益の蓄積 :会社は事業活動で利益を蓄積していきます。
  2. 株主への分配 :株主総会で、この蓄積された利益の一部を配当として株主に分配することが決まります。
  3. 未分配の利益 :配当などが決定されなかった部分の利益は、会社内に「利益剰余金」として残ります。
  4. 余剰金という表現 :この「利益剰余金」の一部や、まだ処分方法が決まっていない利益のことを、便宜的に「余剰金」と表現することがあります。

このように、法律上の用語としては「剰余金」が明確に定義されているのに対し、「余剰金」は、より日常的な、あるいは一時的な状態を指す言葉として使われる傾向があります。

5. 決算書における「余剰金と剰余金の違い」

決算書、特に貸借対照表(バランスシート)を見ると、「余剰金」と「剰余金」の違いがより明確になります。貸借対照表の「純資産の部」には、「資本金」や「資本準備金」、「利益準備金」、「その他の資本剰余金」、「その他の利益剰余金」といった項目が並びます。これらの項目全体を総称して「剰余金」と呼ぶことがあります。
決算書上の項目 関連する用語 説明
資本準備金、利益準備金、その他の利益剰余金 利益剰余金 会社が事業活動で得た利益が、社内に蓄積されたもの。
資本準備金、その他の資本剰余金 資本剰余金 株主からの出資金のうち、資本金に組み入れられなかったもの。
(決算時点での)未処分利益 余剰金(広義) まだ株主総会などで配当などが決定されていない利益。

決算書上、例えば「当期純利益」は、その期の利益を表しますが、まだ株主総会で配当などの処分が決まっていない段階では、「未処分利益」として扱われ、これを一時的に「余剰金」と表現することもあります。そして、株主総会で処分が決まった後、その利益は「利益準備金」や「その他の利益剰余金」といった「剰余金」の項目に振り分けられていきます。

6. 経営判断における「余剰金と剰余金の違い」

経営者は、「余剰金」と「剰余金」の違いを理解した上で、会社の資金繰りや将来の戦略を立てる必要があります。 「剰余金」は、会社の財務状況を示す重要な指標であり、株主への還元(配当)や、将来の設備投資、研究開発費などに充てられる可能性のある、会社の「貯蓄」とも言えるものです。
  • 配当の原資 :株主への配当は、この剰余金の中から支払われます。
  • 将来への投資 :事業拡大や技術革新のための投資資金としても重要です。

一方、「余剰金」という言葉が使われる場合、それはしばしば「まだ使い道が決まっていない、あるいは一時的に確保されているお金」を指すことがあります。経営者は、この「余剰金」を、短期的な資金需要に備えるための運転資金に回すのか、それとも将来の大きな投資に備えて温存するのか、あるいは早期に株主への還元に充てるのか、といった判断を下すことになります。

7. 未来への投資と「余剰金と剰余金の違い」

「余剰金」と「剰余金」の違いは、会社の将来への投資という観点からも重要です。 「剰余金」は、過去の利益の積み重ねであり、会社の財務基盤の安定性を示すものです。この安定した剰余金があるからこそ、企業はリスクを取って新しい事業に挑戦したり、将来の成長のために大規模な設備投資を行ったりすることができます。

例えば、ある企業が画期的な新技術を開発したとします。その開発にかかった費用は経費として計上されますが、もしその技術が成功し、大きな利益を生み出せば、その利益は「剰余金」として会社に蓄積されます。そして、この蓄積された「剰余金」の一部を、さらにその技術を応用した新製品の開発や、生産能力の増強といった「未来への投資」に充てることができるのです。

  1. 研究開発 :新しい技術や製品を生み出すための投資。
  2. 設備投資 :生産能力の向上や効率化のための投資。
  3. M&A :事業拡大のための企業買収。

「余剰金」という言葉が、このような「未来への投資」の原資となる一時的な資金を指す場合もあります。経営者は、これらの「剰余金」や、場合によっては「余剰金」を、会社の持続的な成長のために、最も効果的に活用する方法を常に模索しています。

まとめ

「余剰金」と「剰余金」、どちらも会社の財務状況を理解する上で大切な言葉ですが、その発生源や会計上の取り扱い、法律上の定義において違いがあります。剰余金が会社の儲けの蓄積全体を指すことが多いのに対し、余剰金は、その中からまだ処分方法が決まっていない、あるいは特定の目的のために確保されたお金を指す傾向があります。この「余剰金と剰余金の違い」を正しく把握することで、企業の財務状況をより深く理解し、経営判断に活かすことができるでしょう。

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